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長野県信濃町

BtoBのビジネスモデルで、提携企業・団体のお客さんがコンスタントに来訪する「癒しの森®」

■実施主体:信濃町産業観光課、 しなの町Woods-Life Community

◆水源が育んだ癒しの森事業

信濃町は長野県と新潟県の県境にある人口約7,700人の町。小林一茶の出身地と知られ、中でも雄大な黒姫高原は四季折々の景色を楽しむことができる長野県有数の名所だ。

信濃町では、町独自で「森林メディカルトレーナー®」と「癒しの森の宿®」の育成 ・認定等を行い、地域の民間ガイドと宿泊施設を主体的に運用している。

初動期には地域住民向けの健康講座を通じて体験プログラムの上質化・ガイドのスキルアップを図り、企業との協定締結を促進することで社員研修 ・福利厚生等で年間 4,000 泊(令和2年度時点)を超える需要を創出した。令和5年度現在では39の企業等と提携という成果を挙げている。

御鹿池は気軽に歩き川のせせらぎも楽しめる人気コースの一つだ御鹿池は気軽に歩き川のせせらぎも楽しめる人気コースの一つだ

◆民間の働きかけからスタートした官民協働の森林活用

もともとは「信濃産業町観光課」が町おこしとして癒しの森事業をスタートしている。

市町村合併の多かった当時、信濃町も合併するかどうかの岐路に立たされていたが、自立した信濃町を担うまちづくり事業の柱として上原巌氏(現・東京農業大学教授)の提唱する「森林療法」に注目。当時8人の民間の有志グループが町に森林活用の働きかけを行った。奇しくも、同時期にC.W.ニコル氏の進言をきっかけに、エコメディカル・ヒーリング・ビレッジ構想を長野県林務課が提唱し、構想には森林環境を使った癒し、森林療法が含まれていた。それが後押しとなって予算化が実現。2002年に準備段階を経て、2003年から町の事業としてスタートした。2016年には、事業をさらに発展させるために「しなの町Woods-Life Community」が組織され、窓口や受け入れ業務などを信濃町と連携して行っています。

◆「森の力」を熟知する、信濃町の森林メディカルトレーナー

彼らが発足当初に目指したのは宿を支えるための人材を育成する「人づくり」だ。手探りではじまった2003年の第一回講座から、森林メディカルトレーナーはこれまでの受講者は延べ350名を超えている。お客様の前に立つ登録トレーナーは毎年20名ほどいて、コースの整備など裏方を支えるトレーナーがいるといった具合だ。

森林メディカルトレーナーの役割は、森林セラピーを用いた森の案内を行うが、それだけではない。森についてのガイド以外にも、アロマテラピーやノルディックウォーキング、おもてなしに関するスキルといった幅広い知識と経験が必要となる。

トレーナー養成用プログラムは、アロマテラピストから産業カウンセラーまで多種多様な有識者を交え、常に新しい情報とエビデンスを確立しながら、森林メディカルトレーナーを育成できるように組み上げられている。

そのため、森林メディカルトレーナーはガイドのレベルが非常に高いと好評だ。

森林メディカルトレーナーは年齢も業界も様々。多様な人材が癒しの森事業を作っている森林メディカルトレーナーは年齢も業界も様々。
多様な人材が癒しの森事業を作っている
医学的研究の確かな結果を元に、より実践的な学習をおこなう医学的研究の確かな結果を元に、より実践的な学習をおこなう

◆福利厚生として企業が利用するビジネスモデルへ

癒しの森事業の存在はビジネスモデルとしてはBtoCだけでなくBtoBとしても魅力的だ。

例えば、提携企業のひとつであるトッパングループ健康保険組合は、癒しの森の宿に泊まることで会社から社員に対して補助が出ており、福利厚生として森林セラピーに取り組んでいる。TDKラムダ株式会社では、癒しの森での体験をきっかけに、自社の森を使って社員に向けた研修や森林セラピーを実施した。結果、3年離職率が12%から1%を切ったという効果があったそうだ。

コロナ化で落ち込みはあったものの、企業のコンスタントな利用が癒しの森の運営を支えている。また、お客様の存在が森林メディカルトレーナーの活力にもつながっているため、町、Woods-Life Community、企業団体の三者が相乗効果を生み出していることは間違いない。

森林浴という言葉は日本発祥であることもあり、海外から研修や視察目的での来訪が増えている。今後の癒しの森事業の発展にも期待が持てそうだ。

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