ダム活ポータルサイト

波形 波形

ファンづくり

SDGs

栃木県下都賀郡壬生町&長野県伊那市

森林所有者が森林活用してもらいたくなるようなコンテンツ提案。

■実施主体:株式会社フォレストーリー

◆活用されていない森林をサバゲ―フィールドに

2021年4月に始動した「BE FORESTER」は、林業の復興と森林保全、地方創生を目的に、森林の利活用で森林整備や造林の一翼を担うための事業で、林野庁の「令和元年度森林づくりへの異分野技術導入・実証事業」の委託事業者に認定されている。その主な事業内容は、栃木県下都賀郡壬生町の18ヘクタールの広大な森林を山主から借り上げて、主に銃を模したエアガンを使って撃ち合いをする遊び「サバイバルゲーム(以下サバゲ―)」のフィールドの提供だ。フィールド作りにおいては、枯損木や劣性木を伐倒し、枝葉を用いてバリケードを作り、窪地やブッシュを活かすなど、自然を最大限に活かしており、過去の参加者からは、「懐かしい」「ここでしかできないゲーム内容」「自然を五感で感じた」「森林の為になる」等、好評を博している。また、サバゲーフィールドでは初めての保険加入(三井住友海上、国内旅行傷害保険)を必ず行っており、ケガ等のリスクがあるサバゲ―参加者に、最低限の安心を提供している。

また、サバゲー参加者の多くは、服装や装備にそれぞれの拘りがある。その姿を写真に収めたいというサバゲー参加者は多くいるものの、トイガンとはいえ、公共の場で銃を身に着けて撮影することは困難である。そこで「BE FORESTER」では、宇都宮市のまちぴあ登録団体『Ms more』と提携して、カメラマンを招きイベントに撮影会を盛り込んだ。サバゲー参加者は、人工物の無い広大な森林フィールドを背景に、こだわりの服装・装備を撮影できる。

借りている森林は、山主に活用されていないものだったが、サバゲ―参加料3,000円の内1割を山主に還元し、山林管理費に充当している。実際には現金だけではなく、チャップス、防護ズボン、ヘルメット、防振手袋といった林業の作業に使用するアイテムを現物で送ったり、年1回のチェンソー講習を開催したり、木を伐採したりといった形だったりと、森林所有者の実情に合わせて、臨機応変に対応している。このように、地域資源を活用して新たな収益源を生み出し、適切な山林管理を行うことができる仕組みの構築を図っている。

自然を最大限に活かした「BE FORESTER」のサバゲ―フィールドと参加者
自然を最大限に活かした「BE FORESTER」のサバゲ―フィールドと参加者

◆森林への固定概念を崩し、所有者の負担を軽減

「BE FORESTER」を運営する株式会社フォレストーリー(代表取締役 渡部真之助氏)は、林野庁主催の林業人材とICT等の異分野人材のオープンイノベーションによる課題解決型事業共創プログラム”Sustainable Forest Action 2020(SFA)” にて最優秀賞を獲得したことがきっかけで同年12月に設立した会社だ。林野庁の「令和元年度森林づくりへの異分野技術導入・実証事業」の委託事業者として「BE FORESTER」に取り組んでいる。

「BE FORESTER」は、「森林に来てもらう」とか「森林で何かをやる」ことを発信することで、森林への関心を高め、少しでも人々の意識を山に向けてもらえれば、林業や森林整備保全につながっていくのではないか、というところからスタートした事業だ。

森林をサバゲーフィールドにするというアイデアは、「自由に使える山があったら、何したいですか?」というアンケートを200名から取ったところ、「1位キャンプ、2位サバイバルゲーム」という結果が出たことが発端だ。渡部氏自身はサバゲー未経験であったが、この結果からサバゲーについて調べたところ、放置されさまざまな植物が雑多に生えた森林と、サバゲーで活用できるような森林が近しいことが分かった。また、自然の森林を活かしたサバゲーフィールドに需要があることも分かった。20年ほど前までのサバゲーは、森林を自分たちで開拓してフィールドを作って行うのが一般的だった。しかし、その後サバゲーブームが到来し、企業などの参入などで人工の有料フィールドが次々にオープンしたことから、昔のように森林を簡単に使うことができなくなり、自然の中でのサバゲーの機会は極端に減っているのが現状だったのだ。

加えて、現在の森林所有者にとって、所有する森林が手に余る負担でしかないケースが非常に多い。とくに森林を相続した所有者は、森林環境についての知識もあまり無いため、固定観念で「森はきれいにしておかなければいけない」と思っている。それがさらに負担を増加させており、「メガソーラーにしてもいいから売りたい」と考えている人は一定数いる。「BE FORESTER」は、こうした固定観念を少しでも崩して、森林所有者の負担を減らすことのできる森づくりのために考案された事業である。

森林空間の利活用事業についての「BE FORESTER」の資料
森林空間の利活用事業についての「BE FORESTER」の資料

◆サバゲーを通じて地域が活性化

「BE FORESTER」で行われるサバゲ―のボランティアスタッフは、現在10名ほどいる。彼らは自主的に看板の作成や、草刈り、グッズの作成などを、楽しみながらやってくれている。これは彼らが「BE FORESTER」のビジョンに共感しているためと捉え、運営もある程度自由を認めるやり方で、うまく回っているそうだ。

「BE FORESTER」でイベントを開催することで、都会から人を呼び込み、飲食店や宿泊施設などの利用により地域活性化にも繋がっている。現在の森林フィールドがある壬生町では、観光地が少なく観光客の往来の試案を繰り返した経緯があるため、広報や回覧板でイベント周知を行うなど、町を挙げた協力体制を取ってくれている。加えて、これまでのイベントで提供した昼食には地域の飲食店を率先して利用しており、地元割烹料理屋製の弁当は参加者にもおいしいと好評だ。

サバゲー参加者と地域住民との関わりもできつつある。サバゲーというと一般的なイメージはあまり良くないが、「BE FORESTER」は林野庁のビジネスモデルということに加え、サバゲー参加者がごみ拾いをしたり、運営が夏の除草をしたりすることで、森林所有者からは感謝されている。また、地域の住民が畑で収穫した野菜を持ってきてくれたり、手づくりの七味をおすそ分けしてくれたりすることもあるそうだ。2022年12月に宇都宮共和大学の学生と一緒に開催した「壬生音楽祭withフォレスト―リー」では、感謝祭として地域住民を招待したところ、大いに盛り上がったという。この成功を受け、同社は収益に関係なく今後も年に1回は地域住民を招待するイベントの開催を考えているという。

「BE FORESTER」は、「R3年度INACOMEビジネスコンテスト」(農山漁村発イノベーション関係)、「2021年度とちぎんビジネスプランコンテスト」特別賞(とちぎんリーシング賞)などの評価を受けている。今後も同社では、林業体験、森林学習、木育、ブッシュクラフトなど、森林を活用したアドベチャーツーリズムを企画し、地域資源を活用して新たな収益源を生み出し、適切な山林管理を行うことができる仕組みの構築を図っていく。

株式会社フォレストーリー代表取締役の渡部真之助氏
株式会社フォレストーリー代表取締役の渡部真之助氏

◆そのほかの取り組みのポイント

・同社では、「BE FORESTER」のノウハウを活かし、「シューティングかくれんぼの森」という子供向けのプログラムも運営している。サバゲ―によって、チームビルディングやコミュニケーションスキルなどが養われるゲームになっており、引っ込み思案だった子供たちでも活発に声出し合って、帰りにはまたここで会おうよ、という良い流れができている。

・また、子ども向けのレーザータグ(安全な赤外線銃サバゲー)イベントでは、森林での「森の学習」と組み合わせたイベントとして開催することで、遊びと学びを同時に森で行うことができる。これにより、次世代を担う子どもたちに森林に親しみをもってもらい、「森林の生態系サービスや生物多様性」の大切さを学んでもらうことができる。

「シューティングかくれんぼの森」の告知
「シューティングかくれんぼの森」の告知
「シューティングかくれんぼの森」の告知

・同社はサバゲー事業者ではなく、本質は森林保全や整備のコンサルタントである。ビジネスモデルを作る際のメンターだったビジネスのプロのアドバイスもあり、ビジネス的に考えたときに「BE FORESTER」のサイトは、サバゲープレーヤーファーストで作った。

「BE FORESTER」のサイトには、情報ページやコミュニティページもある 「BE FORESTER」のサイトには、情報ページやコミュニティページもある