長良川河口堰建設差止請求控訴事件判決(H10.12.17)



第五 本件堰ゲート扉の閉鎖禁止請求(第三次請求)の当否
 一 はじめに   1 第三次請求が許容されるための一般的要件     第三次請求も本件堰の運用を不可能にする内容の請求であるが、上記第四    の一と同様の理由で、その実体判断をすべきである。     そして、第三次請求は、将来人格権侵害が生じることを理由に、しかも侵    害者の故意過失を問題とせずに、金銭賠償ではなく、積極的に、運用中の本    件堰の運用差止を求めるものであるということになるから、上記請求が認容    される要件としては、本件堰ゲート扉の閉鎖により、控訴人らの個人個人の    人格権が受忍限度を越えて侵害される具体的な危険があることが必要である    と解される。   2 立証責任     本件堰ゲート扉の閉鎖による人格権侵害の具体的危険の存在に関する立証    責任は、民事訴訟の一般原則に従い、控訴人らに帰属するものと解すべきで    ある。     ただ、本件で一部争点となっている災害時の危険に関しては、控訴人らに    おいて、本件堰の安全性に合理的疑いがあること及びそれにより控訴人らの    人格権侵害の結果が生じることを立証する必要があり、上記の合理的疑いの    立証に対しては、本件堰を建設、運用する被控訴人において、科学的、専門    技術的な調査に基づき、具体的根拠を示して安全性に欠ける点がないことを    立証する必要があると解される。   3 判断すべき争点の範囲     控訴人らは、本件堰につき、地震、洪水、高潮、津波の際に危険であるこ    と、地盤漏水、河床浚渫、板取ダム建設、環境破壊などの間題があることを    主張する。これらの主張は、本件堰による控訴人ら個人個人の人格権侵害の    危険に係わるので、以下に判断を加える。