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2.海外における道路工事縮減に対する取組事例

道路工事の縮減に対する取組みは海外でも実施されており、その内容は大きく4つに分類される。まず、工事期間を短縮することを目的として、(1)道路管理者と工事実施者との契約に関する取組みと、(2)施工技術に関する取組みが行われている。次に道路工事に伴う交通への影響を軽減することを目的として、(3)車線数の確保などの交通工学的技術に関する取組みと(4)道路利用者に工事実施状況を伝え、迂回等を促す情報技術に関する取組みが行われている。以下に4つの取組みに関する海外での事例を紹介する。

(1)契約に関する取組み
英国では、補修工事と企業工事に対してインセンティブ/チャージを与える「レーンレンタル」制度が導入されている。

大規模改修等の補修工事に対しては、その工事発注時の契約内容として、契約工事期間より短縮した場合にはボーナス支給、超過した場合には課金するという制度が1984 年に導入された。導入後5 年間に100 件の契約があり、全体で17%のコスト削減効果があったと推計されている。

また、電気・ガス・水道といった企業工事に対しては、工事期間中のレンタル料を道路管理者に支払うことを義務付ける制度が2001 年に制定された。現在ロンドンの2区で試行されており、企業は、対象道路の混雑状況、工事規模等によって規定された料金を支払う。

【英国のレーンレンタル制度の概要】

(1)道路建設・改修に伴う工事期間縮減策
概要 通行量の多い道路においてできるだけ早くメインテナンスを完了させるために、1984 年にDOT(Department Of Transportation) が導入。
大規模な道路建設・改修工事等に適用され、契約上の完了日よりも早く作業が完了すればボーナスが支払われ、遅れると罰金を支払う契約。
特徴 ◇契約の体系
コントラクター(請負業者)が価格と完了日について入札。
契約上の完了日より工事が早く完了すればボーナスを受け取り、遅れれば罰金を支払う。
◇罰金の支払額
遅れの日数に応じて支払額が増加
効果 1984 年から89 年の間に100 件の契約が有り、平均17%のコスト削減効果


(2)占用事業者工事の縮減策
概要 1991 年の新道路工事法を受け、ライフライン関連企業の道路工事縮減を促進するため、2001 年より試行がロンドン市内2区で開始されている。
企業の掘削を伴う工事については、1日あたりのレンタル料を課金する契約。
特徴 ◇契約の体系は以下のとおり。
工事を実施する企業は、工事開始から完了までレンタル料を道路管理者に支払う。
◇レンタル料の支払額
対象道路の通行量、工事の規模等に応じて決められた日額による支払い。
完了時には検査を受け、改善指摘がある場合は、割増料金による是正工事が義務づけられ、工事の質を確保。
効果 ◇試行は2002年〜2004年であり、効果については、路線バスの遅れ時間などを基に測定中。
資料:「道路整備・維持管理の政策・制度改善に向けての課題」(国際協力銀行開発金融研究所:2001/2)より作成


(2)施工技術に関する取組み
オランダでは、舗装工事の迅速化・効率化にむけて、舗装のプレハブ化技術開発が進められている。

The Roll-Out R oad(超低騒音ロール舗装)は、ロール状の表層材の透水性、騒音低減性能の高い2層の表層を1つのロールとしており、これを支持構造に接着させる工法であり、従来よりも迅速に舗装補修を行うことを目的として開発されている。

The Adhesive Road (接着性ロール舗装)もThe Roll-Out Road 同様、ロール上のアスファルト・マットであり、支持構造の上に敷き、マイクロウエーブによって接着する。迅速な施工・撤去が可能となっている。

ModieSlab (多機能パネル舗装)は弾性を有する支持構造にプレキャストのコンクリートスラブを設置する工法であり、現場での施工期間を短縮することを目的としている。層厚が大きいため2車線道路等にも適用可能である。


The Roll-Out Road:(超低騒音ロール舗装)


The Adhesive Road (接着性ロール舗装)


ModieSlab:(多機能パネル舗装)

(3)交通工学的技術に関する取組み
欧州では、道路工事の実施に併せて、交通容量を確保するためのソフト的取組みが行われている。

Contra-Flow システムは6車線の高速道路などにおける大規模な道路工事で多く行われる交通管理方法であり、イギリス、ドイツなどで用いられている。片側2車線以上の道路で工事を行う場合、例えば、対向車線1車線を反対方向の車線として使用する。あるいは、中央分離帯の片側で、3車線を両方向2車線づつの交通を処理するなどが行われている。この際には、縮小車線、路肩利用などを採用し、交通処理量を高めている。


ドイツ・アウトバーンでのContra-Flow の例(速度規制、車線誘導の標示)


ハンガリーにおける路側帯を利用した車線数確保の例

(4)情報技術に関する取組み
欧米では、道路工事実施状況を道路利用者に提供することで、工事渋滞を軽減する取組みが行われている。

米国のニューヨーク市では、1週間分の道路工事情報をホームページで提供しており、車線制限の状況も知らせている。また、主要道路上にカメラを置き、道路映像がリアルタイムで見られるようになっており、その中で工事・事故等の状況もわかるようにしている。さらに、道路工事に関する苦情・意見の記入サイトを設けている。

シアトル市では、年間の道路工事計画(道路建設・補修、インフラ工事)を発表し、期間、場所と連絡先を掲載している。

フランス・パリ首都圏では、市街地の渋滞・事故・工事等のリアルタイム情報を地図上にプロットし、インタ−ネットで提供している。さらに、フランスでは、2000 年まで毎年、道路に関する利用者満足度調査(アンケート)を続け、その中の要素として工事による混雑や案内状況に対する意見も聴取していた。


パリ首都圏リアルタイム道路情報システムの画面


ニューヨーク市道路映像情報システムの画面


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