1) 代替案(選択肢)の検討・作成

 Q6−1 施策や事業を選択するために、どのような検討が必要か。

 「(4)地域交通の現状の把握、分析による課題の整理・具体化」を参照のこと。


 Q6−2 代替案 (選択肢) は、何故複数必要なのか。また、いくつ用意すればいいのか。


事例等を表面的に模倣した取組や特定の交通モードありきの取組は、うまくいかないことがある。
代替案(選択肢)の設定は選択するためのプロセスの明確化(見える化)につながる。
現状案も含め3〜4案程度設定することが考えられる。


 先進事例等を表面的に模倣した取組や特定の交通モードありきの取組は、うまくいかないことが指摘されている。また、地域住民等に対する説明責任を果たす上でも、代替案(選択肢)を設定することは、取組を選択するためのプロセスの明確化(見える化)につながる。
 代替案(選択肢)の数に関しては、特に決まりはないが、比較しやすさの観点からは2〜3案程度が考えられる。この際、「現状のまま何も対策をしない」という案(現状案)も含める。また、現状案を示すことで、代替案を際立たせることもできる。





 Q6−3 代替案(選択肢)となる施策や事業の特徴を教えて欲しい。


需要:量的、時間的、地理的状況によって選択肢(交通モード、ルート、ダイヤ 等)が異なる。
利用者:利用者が不特定多数か、特定されるかによって選択肢が異なる。
運行主体:運行の必要性(動機)や受益者等によって様々な主体が考えられる。


■交通モードの選択
 特定の交通モード(例えばコミュニティバス等)を前提とすることなく、交通ニーズに対応できる適切な交通手段を選択することが重要である。また、交通モード間の連続性確保・シームレス化により、体系的・階層的な地域交通網の構築を図ることも重要である。
 交通手段の選択の視点としては、第一に需要があり、量的、時間的、地理的状況を踏まえた適切な輸送計画(交通モード、ルート、ダイヤ 等)が重要になる。例えば、需要が分散している場合はデマンド型が有利となる。
 第二は利用者であり、利用者が不特定多数か、特定されるかによって選択肢も異なってくる。例えば、需要が小さくかつ利用者が特定される場合はSTS等が考えられる。
 第三は運行主体であり、運行の必要性(動機)や受益者等によって、NPO、住民団体(自治会等)、地元企業等、様々な主体が考えられる。(こちらを参照のこと)




■交通モードの選択
 本調査で実施したアンケート結果から、どのような取組が選択されているのかを見ると、「多くの人に公共交通の利用を働きかけるためのポスター、チラシ等の作成」が最も多く、次いで「利用者の属性に合わせた運行時間帯の設定・見直し」、「均一料金の導入」、「他の路線や他の交通モードとの接続を考慮したダイヤ設定・見直し」、「きめ細かな停留所配置」等の順となっている。





2) 代替案(選択肢)の選択

 Q6−4 選択するための比較・評価に当たって、どのような観点が必要か。

「モビリティの向上」、「採算性」、「その他社会的効果」といった切り口のほか、個々の評価項目を総合的に評価するための統合指標(費用便益比など)が考えられる。

すべてを網羅する必要はなく、地域づくり・まちづくりの方針に合わせて指標を選択し、総合的に評価することが考えられる。


 代替案(選択肢)選択の視点としては、「モビリティの向上」、「採算性」、「その他社会的効果」といった切り口のほか、個々の評価項目を総合的に評価するための統合指標も考えられる。
評価の指標としては、下記のようなものが挙げられるが、すべてを網羅するという趣旨ではなく、地域づくり・まちづくりの方針に合わせて指標を選択するとともに、地域住民の参加プロセスなども経ながら重み付けをして総合的に評価することが考えられる。
 なお、指標の算出、比較にあたっては、それが集計評価であるか、個人や地域単位に焦点を当てた評価であるか、十分な注意が必要である。どちらを重視するかにより選択の結果が異なることも十分あり得る。このため、ひとつの指標で最適な評価が得られたとしても、個々の利用者の立場での評価(公平性の観点など)も考慮して判断することが重要である。



  まちづくりの面で様々な波及効果を評価した方針を設定

・京都府京丹後市では、公共交通の活性化で重要なことは、運行収支でその価値を判断するのではなく、まちづくりの面で様々な波及効果をもつことであると考えている。
・このようなことから、公共交通の施策「かきくけこ」として、次のような方針を掲げている。
○か:観光・環境保全・過疎対策
○き:協働体制の確立(地方自治体・市民・地元企業・運行事業者のそれぞれが、広域ネットワークでつながり、手を取り合う活動を進める)
   客観的評価主義の確立(運行収支のみで良し悪しを判断しない)
○く:車社会からの脱却(モビリティ・マネジメントの推進)
○け:経済基盤整備・健康増進対策
○こ:高齢者福祉・子育て支援・交通安全対策(子供からお年寄りまで、誰にも、やさしい公共交通の整備を進める)
交流人口の増加対策、国際化(外国人観光客の誘客)


 Q6−5 施策や事業を選択するために留意すべきことは何か。

施策や事業の実施の段階では、多様な主体が関わることから、関係者の合意形成を図りながら選択することが重要。
財源の制約も考慮して、持続可能な施策や事業を選択することが重要。ただし、予算ありきで考えてはうまくいかないことに注意。
交通分野において、実行可能な代替案が見出せない場合は、他の分野の施策との分担の見直しを含めて検討することが重要。


 施策や事業を選択にあたっては、「モビリティの向上」、「採算性」、「その他社会的効果」などの観点から総合的に評価することが重要である。
また、施策や事業の実施にあたっては、交通担当部署以外の関連部署(例えば道路管理者)や交通事業者、許認可権者等の多様な主体が関わることから、関係者の合意形成を図りながら選択することも重要である。
 さらに、財源の制約も考慮して、持続可能な施策や事業を選択することも重要である。国の支援制度を活用する場合でも、支援期間が終了したあとの継続性を確保することが重要である。このため、財政部署との協議・調整も必要である。
 なお、財源の制約を考慮するとはいっても、予算ありきでサービス水準等を決めてはならない。予算ありきで選択した取組は、利用者のニーズを満たすことができず、かえって無駄になる恐れがある。
 一方、交通分野において、実行可能な代替案が見出せない場合も考えられる。この場合は、他の施策との分担の見直しを含めて検討することが重要であり、「(1)動機・背景」にフィードバックして、改めて交通施策で対応すべきかどうかの判断の見直しをする必要がある。


  予算ありきの検討は落とし穴がある

・石川県野々市町では、バスの運行ルートを増設することとなったが、予算が増えなかったことから、車両を増やすことができず、既存のルートの便数を間引くことで対応してしまった。
・そうしたところ、サービス水準が中途半端になり、結局、全体として利用者数が減少してしまった。