建設産業・不動産業

入札及び契約に係る情報公表マニュアル

 公共工事の入札及び契約の適正化を目的として、平成13年度から施行されている「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成12年法律第127号。以下、「入札契約適正化法」という。)においては、透明性の確保、競争性の向上、不正行為の排除の徹底、適正な施工の確保をそれぞれ推進することとされている。
 このうち、入札及び契約に係る透明性の確保に当たっては、入札契約適正化法により義務付けられているように、情報の公表を適切に行うことがその基本となるものと考えられる。
 法律で義務付けられた公表事項については、決定した指名業者名や金額等をそのまま公表するものが多いが、他方、何らかの措置・決定を行った理由を示すといった事項については、どのような記述様式等を取ることが適当であるかという点について、これまで公表を行ってこなかった地方公共団体の担当者にとっては必ずしも判断が容易でないという実務上の問題が指摘されている。このような観点から、これらの公表資料の作成にあたっての一般的な留意事項を示すとともに、各地方公共団体において実際に公表されている資料を収集し、記述例集としてとりまとめ、本マニュアルを作成するものである。

1.はじめに

(1)入札及び契約に係る情報公表の意義

 公共工事は、国民の税金を原資とすることから、その入札及び契約に関し、いやしくも不正行為があってはならないものである。
 入札契約適正化法では、発注者に対し、受注者の決定等に至る行政内部の事務執行や判断過程を公表することを義務付け、国民に対する説明責任の履行を確保するとともに、不正行為の未然防止を図ることとしている。
 また、あわせて、これらの情報を公表することは、情報の入手を目的として行われる不正行為を排除するという意義も有するものである。

(2)入札契約適正化法による入札及び契約に係る情報公表制度の概要

①公表する内容
 入札契約適正化法による情報公表においては、適正化指針に規定し努力義務として公表することとした事項と、法律に基づきその公表を各発注者に義務付けた事項があり、地方公共団体が公表を義務付けられている事項としては、次のとおりとなっている(入札契約適正化法第8条及び同法施行令第7条参照)。
 
ⅰ)事前に公表する事項
 ・一般競争参加資格、有資格者名簿 
 ・指名競争参加資格、有資格者名簿
 ・指名基準 
ⅱ)個別工事の契約後に公表する事項
 ・制限付一般競争入札に際し、必要な資格を更に定めた場合の当該資格
 ・一般競争入札参加申請業者名、参加させなかった業者名及びその理由
 ・指名業者名、指名理由
 ・入札者名、入札金額
 ・落札者名、落札金額
 ・低入札価格調査等により次順位者を落札者とした場合における理由
 ・最低制限価格未満の入札者名
 ・総合評価方式を行った理由、その場合の落札理由
 ・契約の内容(契約の相手方、工事の概要、工期、契約金額)
 ・随意契約の理由 
ⅲ)契約変更後に公表する事項
 ・契約金額の変更を伴う契約変更した場合の変更内容、その変更理由
 
②公表の方法
 ・上記①ⅰ)の事項については、これらを定めたときに遅滞なく公表し、また、変更したときも同様に公表することとされている。
 ・上記①ⅱ)及びⅲ)の事項については、個別契約の締結後又はその内容の変更後に遅滞なく、少なくとも1年間公表することとされている。なお、契約内容や随意契約理由を除き、各団体の判断により契約締結前に公表することも妨げられない。
 ・上記①ⅲ)については、個別契約の内容に関し契約後に変更が生じた場合には、入札・契約の透明性向上の必要性と事務負担による行政コストの増大を比較考量し、契約金額の変更が伴う場合のみ公表を行うこととされている。 
 ・上記①ⅱ)及びⅲ)の事項については、予定価格が250万円以下の工事、又は公共の安全と秩序維持に密接に関連する場合で秘密にする必要がある工事については、公表を要しない。
 ・公表は、公衆の見やすい場所への掲示、閲覧所又はインターネットによる閲覧の方法により行うこととされている。

2. 公表資料作成に当たってのその他の留意事項

 法令により定められた公表内容及び公表方法については上記1.(2)のとおりであるが、これらの公表事項のうち、決定した指名業者名や金額等をそのまま公表するのではなく、何らかの措置・決定を行った理由を示した事項を公表するに当たっては、以下のような留意点を踏まえて実施することが望ましい。
 
①何らかの措置・決定を行った理由の公表を行う場合には、行政の判断の根拠を、可能な限り具体的かつ客観的に記述することが望ましい。この観点からも、可能な場合には、予めその判断基準を策定、公表し、その基準への適合性を審査した結果を公表するものとすることが望ましい。
②国民への分かりやすさを確保する観点から、簡潔かつ平易な記述とすることが望ましい。
③入札及び契約に関係した企業の権利を不当に侵害するものでなく、また第三者であっても理解が容易な内容であるなど、公表資料としても適切であると判断できる場合には、行政内部における意思決定過程の透明化を図る観点からも、申請者への通知書や起案文書などをそのまま使用することも差し支えない。
④事務負担軽減の観点からも、予め記入様式等を定めることが望ましい。

3.記述例

 以下の事項について、実際に公表されている事例を別添資料として添付するので、各団体における公表資料作成に当たっては、これらを参考として、実施することとする。
 このほか、参考資料として、14年度末時点での各項目に関する公表状況を添付する。
 
①一般競争入札において入札に参加させなかった者があった場合の参加させなかった理由
②指名競争入札における指名理由
③低入札価格調査により排除した場合の排除理由
④総合評価方式を行った理由
⑤総合評価方式により落札者を決定した場合の落札理由
⑥随意契約における相手方を決定した理由
 ・少額随契の場合(地方自治法施行令第167条の2第1項第1号)
 ・緊急の必要により競争入札に付すことができない場合(地方自治法施行令第167条の2第1項第3号)
 ・競争入札に付することが不利と認められる場合(地方自治法施行令第167条の2第1項第4号)
 ・時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みの場合(地方自治法施行令第167条の2第1項第5号)
 ・競争入札に付し入札者がない場合、又は再度の入札に付し落札者がない場合(地方自治法施行令第167条の2第1項第6号)
⑦金額変更を伴う契約変更をした場合の変更理由
 
 

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