平成11年度 建設業構造基本調査の調査結果について


                                   平成12年12月
T.建設業構造基本調査について
 

1.目  的
建設業は、現地屋外生産、単品受注生産、労働集約生産が中心で、その生産システムも総合的管理監督機能を担う総合建設業と直接施工機能を担う専門工事業の分業関係で成り立っており、多岐にわたる業種や下請の重層化、複雑な取引関係、多様な雇用形態に見られるように、その産業構造は非常に複雑なものとなっている。
そこで、建設業の基本的な産業構造を明らかにするとともに、その中長期的変化を把握し、建設産業政策の展開に資する基礎資料を得ることを目的として、昭和50年度より3年に1回の周期で本調査を総務庁承認統計調査として実施しており、今回はその9回目として実施した。
 

2.調査対象企業及びその抽出方法
(1)調査対象企業
建設業法第3条の規定により建設業の許可を受けている企業(60万社)から、所定の方法により抽出した18,000社の個人及び法人。

(2)調査対象企業の抽出方法
(イ)調査対象とする母集団の組成
建設省が実施した「平成9年度建設工事施工統計調査(以下「施工統計調査」)の結果を用いて、以下の2つの条件を満たす企業(推定約25万社)を調査の対象とな母集団とした。
・施工統計調査の回答企業で現実に建設工事施工実績のある企業
・総売上高のうち完成工事高が80%以上を占める企業(以下「専業企業」)
(ロ)調査対象企業の抽出
上記(イ)で組成した母集団について業種、資本金階層別の分類を行った後、各階層毎に母集団の企業数の比率を考慮の上無作為に18,000社の抽出を行い、調査対象企業を決定した。

3.調査基準日
平成11年10月31日

4.調査票の回収状況
(1)有効回収数 11,441社(専業企業 10,776社、兼業企業 665社)
(2)回 収 率  59.9%(有効回収数(専業企業)/標本総数)
 

5.集計の方法
(1)建設業専業企業10,776社を集計対象とし、有効回収11,441社のうち兼業比率が20%を超える665社については集計の対象外とした。
(2)集計企業を業種別及び経営組織・資本金階層(以下「資本金階層」)別に分類。
業種分類については従前どおり30業種区分(建設業許可の28業種区分に「一般土木建築」と「木造建築」を加えた)及び6区分(下記のとおり)とし、1企業において複数の業種に完工高が計上されている場合には、その割合が一番高いものをその企業の業種とし分類した。

6業種区分の方法:原則として日本標準産業分類にしたがって「総合工事業」「設備工事業」「職別工事業」の3種類に大別し、さらに「総合工事業」については、土木工事が完成工事高の8割以上を占めるものを「土木工事業」、土木工事が2割未満のもので建築工事が木造建築工事よりも多いものを「建築工事業」、土木工事が2割未満のもので木造建築工事が建築工事よりも多いものを「木造建築工事業」、これらのいずれでもないものを「一般土木建築工事業」とした。
なお、「土木工事業」「設備工事業」「職別工事業」に含まれる業種は下記のとおり。


(3)施工統計調査から求めた建設業専業企業数(推定約25万社)を母集団として復元計算を行い、当該復元値を集計値とした。

6.調査項目
前回調査との継続性について留意し、一方でその時々の建設業をめぐる諸状況等を考慮しながら建設業の基本的構造の的確な把握、分析を行うため、次の7分野について調査を実施した。

7.その他
経営組織・資本金階層別、30業種別、下請比率・次数別の詳細な集計結果等、本調査の全集計 結果は、平成13年1月頃に「建設業の構造分析-第9回建設業構造基本調査結果-」として取 りまとめる予定である。
また、ホームページでも全集計結果を公表する予定である。
 

(問合せ先)
建設省建設経済局建設振興課
金融専門官  佐竹 洋一
建設振興第一係長 小島 新太郎
電話:代表 03-3580-4311(内)2817/夜間直通 03-5251-1843


U.調査結果のポイント

    ○建設業者全体の24.5%が経常損失を計上。企業規模が小さいほど収益環境が厳しい。
    ○1社あたり保有建設業許可数は3.4件であり、若干の増加傾向。
    ○営業地域広域化の傾向。
    ○平均下請比率は48.2%。
    ○下請業者の特定元請業者への専属比率は高まる傾向。
    ○公共工事の完工高に占める割合(公共工事受注比率)は45.6%であり、増加傾向。
    ○外注費の完工高に占める割合(外注費比率)は41.8%であり、増加傾向。
    ○原価割れ工事件数が増加傾向。
    ○工事代金の受取時期は、企業規模が小さいほど工事施工前の比率が低く、工事施工後の比率が高い。
    ○下請工事について、書面による契約の比率が上昇。
    ○パソコン等のコンピューターを導入している企業は64.8%。導入率が大幅上昇。
    ○社団法人への加入率は38.9%。
    ○事業協同組合への加入率は45.0%。

 
1.1社あたり平均完工高
1社あたり平均完工高は410百万円であり、前回(平成8年。以下同じ)に比べ14.7%増加した。個人を中心とした小規模・零細企業数が減少したため、1社あたり平均の完工高が増加したものと推測される。
資本金2000万円未満の小規模企業の平均完工高は減少しており、業種別では木造建築工事業(前回比▲16.4%)、一般土木建築(前回比▲14.8%)と大きく減少している。
(表1 1社あたり平均完工高)

2.1社あたり平均経常利益及び経常損失会社数
1社あたり平均経常利益額は12.5百万円。業種別では職別の躯体関係(0.2百万円)の経営環境の厳しさがうかがわれる。
また、経常損失となっている企業は全体の24.5%。職別の中の躯体関係が39.1%と最も比率が高く、逆に土木が14.3%で最も低い。企業規模が小さくなるほど赤字企業の比率が概ね増える傾向にある。 (表2−2 1社あたり平均経常利益額) (表2−2 経常損失会社数及び回答母数に占める割合)

3.1社あたり平均保有建設業許可数
1社あたり平均保有建設業許可数は3.4件。前回から0.4件増加しており、複数の工事工程を1社で請け負う傾向がうかがわれる。
業種別では、一般土木建築(6.8件)、土木(5.2件)の保有許可数が多く、逆に木造建築(2.2件)、職別(2.2件)が少ない。
企業規模で見た場合、規模が大きいほど保有許可数が多い傾向にある。 (表3 1社あたり平均保有建設業許可数)

4.営業地域
1つの都道府県内で営業する社数が76.8%(前回比▲5.0%)、2から3の都道府県内が17.2%(前回比+3.2%)となっており、営業地域広域化の傾向がうかがえる。
2つ以上の都道府県で営業している社数割合を業種別に見ると、設備(33.5%)、職別(36.6%)の営業地域が広く、土木(15.3%)、建築(14.9%)が狭い。
  (表4−1 営業地域(資本金規模別) (表4−2 営業地域(業種別)


5.下請比率、下請次数別の企業分布状況
下請比率(国内完工高のうち下請完工高の占める割合)が0%の企業数は、建設産業全体の19.4 %(前回比+0.6%)、0〜50%の企業数は31.0%(同+2.3%)、50〜100%の企業数は49.7%(同▲2.9%)となっており、下請比率の高い企業は全体に減少する傾向にある。 (表5 下請比率、下請次数別の企業分布状況)

6.平均下請比率
下請比率は48.2%。資本金1億円未満の企業では概ね前回に比べ低下しているが、資本金10億円以上では前回比6.6%上昇している。
業種別では職別(77.6%)、設備(62.4%) の平均下請率が高く、逆に木造建築(13.9%)、建築(24.8%)が低い。 (表6 平均下請比率)
 

7.下請業者の特定元請業者への専属状況(下請完工高のある企業のみ対象)
特定元請業者1社からの完工高が50%以上の下請業者数は全体の30.1%(前回比+2.2%)となっており、専属比率は高まっている。
業種別では建築の専属比率が高く、一般土木建築が低い傾向が見受けられる。資本金別では、企業規模が大きいほど専属比率が低くなる傾向がある。
(表7ー1 特定業者への専属状況(資本金規模別)(表7−2 特定業者への専属状況(業種別))

8.公共工事受注比率
完工高のうち公共工事の占める割合(公共工事受注比率)は45.6%(前回比+11.8%)と大幅に上昇している。
業種別では土木(69.4%)が最も高く、建築(23.7%)が最も低い。企業規模別では資本金5,000万円前後が50%を越えており、比較的高くなっている。 (表8 公共工事受注比率)
 

9.外注費比率
完工高のうち外注費の占める割合(外注費比率)は41.8%となっており、前回に比べ概ね上昇している。
業種別では建築(54.9%)が最も高く、土木(32.3%)が最も低い。企業規模別で見た場合、規模が大きい企業の比率が高い傾向にある。 (表9 外注費比率)

10.総工事件数に占める原価割れ工事件数の比率
全体の62.8%の企業が原価割れ工事を抱えており、前回比8.2%増加している。
業種別に20%超原価割れの社数割合を見ると、職別(8.3%)、設備(8.0%)が高くなっている。一方、木造建築(2.1%)、建築(2.4%)は割合が低い。
企業規模別では、資本金1000万円前後の企業について20%超原価割れ比率が高くなっており、この規模の企業の収益環境の厳しさがうかがわれる。
(表10−1 総工事件数に占める原価割れ工事件数の比率(資本金規模別))(表10−2 総工事件数に占める原価割れ工事件数の比率(業者別))

11.資金調達方法
全体の資金調達方法は、金融機関を中心とする間接金融が99.6%とその大半を占めており、市場からの調達は0.2%に過ぎない状況。金融機関からの借入の内訳については、地方銀行(42.6%)、信用金庫・信用組合(22.0%)、政府系金融機関(16.5%)となっている。
企業規模に着目して見た場合、規模が大きいほど都市銀行からの調達比率が大きく、逆に規模が小さくなるほど地方銀行、信用金庫等、政府系金融機関からの調達比率が大きくなっている。 (表11 資金調達方法)

12.工事代金の受取時期及び受取条件
工事代金の受け取り時期は、工事施工前7.8%(前回比+3.1%)、工事施工中22.3%(同▲0.1%)、工事施工後69.9%(▲3.1%)となっており、全体的には若干早まる傾向がうかがえる一方で、企業規模の小さな企業ほど依然として工事施工前の比率が低く、工事施工後の比率が高い。
また、現金と手形の割合では現金が81.5%と前回比6.4%増加している。 (表12 工事代金の受取時期及び受取条件)

13.下請工事での契約締結方法
書面を取り交わす契約(工事ごとに契約を締結、基本契約があり注文書と請書を交換、注文書と請書を交換)を行っている企業は全体の75.0%(前回比+7.7%)となっており、書面による契約の比率が高まっている。
業種別では一般土木建築(86.5%)の比率が高く、職別(68.0%)が低い。 (表13 下請工事での契約締結方法)

14.OA機器の導入状況
何らかの形でコンピューターを導入している企業は全体の64.8%(前回比+19.8%)となっており、導入率は大幅に上昇している。
業種別では一般土木建築(79.5%)の導入率が高く、大工、左官、板金などの職別(52.6%)が低い。 (表14 OA機器の導入状況)

15.OA機器の利用目的
OA機器の利用目的としては、見積積算、文書作成、設計製図、経理事務、原価管理の順に利用している企業が多い。
ホームページ作成に利用している企業は9,413社(母集団約24万社の約4%)、他社との電子データ交換は9,410社(同約4%)となっている。 (表15 OA機器の利用目的)

16.各就業者区分での女性比率
女性雇用者の占める比率は全体の14.7%(前回比▲0.4%)となっている。特に事務・営業職員は54.1%と女性の割合が高くなっている。女性の現場労働者は前回の5.7%から6.1%に微増している。造園工事業の女性現場労働者比率が28.6%と際だって高い。 (表16 各就業者区分での女性比率)

17.常雇等の現場労働者(職長を除く)に対する賃金支払形態
日給月給が56.5%(前回比▲2.8%)、月払い一定額が25.6%(同+3.2%)と、一定額の支払いが増加する傾向にある。
業種別では、設備の一定額支払い比率が高くなっている他は、日給月給が最も多い支払形態となっている。 (表17 常雇等の現場労働者に対する賃金支払形態)

18.社団法人への加入状況
社団法人への加入率は38.9%(前回比+5.6%)であり、前回に比べ増加している。
業種別では一般土木建築(65.4%)、土木(48.5%)の加入率が高く、職別(30.7%)が低い。
また、企業規模が大きいほど加入率が高くなる傾向がある。(表18 社団法人への加入状況)

19.事業協同組合への加入状況
事業協同組合への加入率は45.0%(前回比+1.7%)であり、前回に比べて若干増加している。
業種別では電気工事、管工事など設備(58.8%)の加入率が高く、建築(36.0%)が低い
また、資本金5000万円程度を中心として加入率が高くなる傾向がうかがえる。 (表19 事業協同組合への加入状況)

(注)本ホームページの表1から表19は、エクセル5.0/95ブックを使用しております。.


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