職員インタビュー

現場職員インタビュー - 国土交通省
東京航空交通管制部

現場職員インタビュー

空の安全を支える、航空管制

中野 裕行のプロフィール写真

※所属・役職等は、取材時(2026年1月)のものです。

中野 裕行

部長 / 東京航空交通管制部
  • 安全
  • 管制
  • 支える

主な略歴

01 東京航空交通管制部について

空の地図を整え、操る。航空管制は空のナビゲーター
航空交通管制部の役割について教えてください。
 世界の空は、航空機が安全で効率的に運航できるよう、飛行情報区(FIR)1と呼ばれる空域に指定されており、日本の航空当局が担当する空域(福岡FIR)2は、国土の上空のほか太平洋の一部も含まれます。航空交通管制部の担当は、空港周辺を除く航空機が飛行するほぼ全ての範囲の管制となります。 その範囲を計器飛行方式(IFR)3で飛んでいる航空機については、日本の旅客機に限らず、外国籍の飛行機や軍用機、上空通過機も、私たち航空交通管制部がコントロールしています。
飛行情報区(FIR)
飛行方式
国内管制部空域イメージ図

国内には、東京、神戸及び福岡に航空交通管制部があり、福岡FIRを3機関で分割して担当しています。東京航空交通管制部は、中部地域から北海道までの上空、高度およそ10kmまでのエリアを担当しています。国内の空域では、各地に設置している航空路用レーダー等を使用して管制を行っていますが、レーダーの電波が届かない洋上では、主に衛星を使用して管制を行っています。

管制業務について

空港周辺でも、航空機に対し飛行の方法、離着陸の順序等を指示するため、空港用のレーダーを使った管制が行われますが、それと航空交通管制部が行っているレーダー管制は特徴が異なります。我々が担当する空域を飛行する航空機は、目的がみな異なります。国際線、上空通過機、首都圏空港に降りる国内線など様々な飛行機が交錯します。
 イメージ的には、規模の大きな鉄道駅のコンコースに似ています。行き先や目的が異なる多くの人々が行き交う感じ。もちろん、そこまで高密度ではありませんが(笑)、コンコースは2次元であるのに対し、空は3次元。また、人間は周囲の動きを見ながら自らが安全間隔を確保できますが、高速で飛行する航空機は自らが他の航空機との間に十分に安全な間隔を保つことができませんので、その役目を私たちが担っているとご理解いただければと思います。

脚注
  1. ICAO(国際民間航空機関)により設定され、航空機の航行に必要な各種情報の提供又は捜索救難活動が行われる空域。領空及び公海上空を含んだ空域であり、領空主権よりも航空交通の円滑で安全な流れを考慮して設定。
  2. FIRの名称には、担当する管制センター又は飛行情報センターの名称がつけられることになっていることから、日本では、航空交通を管理する航空交通管理センター(ATMC)が福岡にあるため「福岡FIR」と登録。
  3. パイロットが目視のみでなく航空機に搭載された計器を使用し飛行計画に従うとともに常に管制機関の指示に従って飛行する方式。
中野部長は、現在、どのような業務に取り組まれているでしょうか。
 航空交通管制部は、まさに「現場官署」ですので、将来計画を立てる、政策を企画立案するなどの本省業務とは大きく性格が異なります。航空交通管制部の業務は、非常に広範囲に及びます。その長として、航空管制官、航空管制技術官、施設運用管理官、航空灯火・電気技術官がモチベーションを保ちつつ、業務に専心できる環境をしっかりと保っていくことこそが私の最大のミッションです。航空に対する社会のニーズは、何より安全確保、そして、気象の変化等にも影響を受けずに事業を継続することと捉えています。こうしたニーズを実現するため、愚直にそれを突き詰めていくことが私の役割です。
航空交通管制部は、どのような発展を遂げてきましたか。
 従来、航空交通管制部は、札幌、東京、神戸(那覇)、福岡の4部体制で、それぞれが低い高度(低高度)から非常に高い高度(高高度)までの範囲を一元的に担当し、言わば担当空域は航空交通管制部間で横並びでした。一方で、旺盛な航空需要に的確に対応するため、効率性向上と業務負荷軽減を図りつつ管制処理能力の向上が求められました。こうした状況を受け、空域全体を「上下分離」する空域再編が行われました。
具体的には、「高高度」を担当する航空交通管制部(福岡)と、東日本エリアの「低高度」を担当する航空交通管制部(東京)、西日本エリアの「低高度」を担当する航空交通管制部(神戸)に再編しました。これにより、災害などにより航空交通管制部の機能に重大な障害が発生した場合でも、福岡と神戸、福岡と東京が上下で補完し合い、業務継続が可能となるなど危機管理能力の強化にもつながりました。
これまでの空域図
これまでの空域
再編後の空域図
再編後の空域
R7.3に完了した管制空域の再編についても、その内容を教えてください。
 新型コロナ前の需要予測ではありますが、「高高度」を飛行する、アジア大陸から北米に向かう飛行機の交通量が顕著に増加するという見込みがありました。これに伴う国内線の遅延が生じないよう、「高高度」での管制を切り離し、福岡航空交通管制部が一元的にコントロールすることにしました。これにより、例えば、中国から北米に向かう飛行機がどんなに増えても、「低高度」を飛行する近距離便などはほとんど影響を受けない、といったメリットがあります。
再編完了から間もなく1年となりますが、運用面で感じた課題があれば教えてください。
 この再編を検討した当初は、上空通過機又は国際線は「高高度」を、国内線は「低高度」を、それぞれ運航する前提でした。その後、大きな社会変革が2つありました。1つは新型コロナです。飛行機は、高い高度を運航する方がエンジン効率等の観点から経済的であるため、本来、航空会社は「高高度」での運航を希望します。コロナ禍では、交通量が大きく減ったため、本来は「低高度」を運航すると想定していた飛行機が「高高度」での運航を希望し、実際にそのように運用しました。コロナ禍が過ぎ、交通量が急回復した現状において、改めて、「高高度」、「低高度」の飛行区分を整理する必要があります。もう一つは、脱炭素社会の実現に向けた動きです。環境負荷の観点だけを考えれば、「高高度」での運航が優先されるべきですが、交通量の増加に伴う定時性確保に支障(遅延など)が生ずるとも考えられるため、このあたりのバランスを確保していくことが必要です。
ほかにも、近年続々と新たな技術・施策(マルチレーダーによる航空機監視・管制データリンク・航空機動態情報(DAPs)の活用)を導入されています。航空交通の安全・安心の確保に資すると思いますが、現場ではどのように捉えていますか。
 確かに、技術の進展は、航空交通の安全・安心の確保に大いに役立つものと期待しています。 マルチレーダーは、従来から使用されてきたレーダーの他、WAM(ワイドエリアマルチラテレーション)、ADS-Bという異なる監視センサーを加え、それらから得た航空機位置情報を統合処理するもので、監視機能の高精度化が期待されています。

 管制データリンクは、音声通信に代わり、文字情報により管制官・パイロット間のやり取りを行うものです。情報の文字化によるミスの低減とワークロードの軽減、音声通信の低減による周波数資源の有効活用に寄与すると期待されています。 航空機動態情報(DAPs)は、機体姿勢、高度設定等の航空機の有する「航空機動態情報」を、地上からの要求に応答させることにより取得する技術で、管制機能の高度化等への活用が期待されています。 いずれの技術も積極的に活用することで、より安全性、効率性が向上した管制業務が提供できればと考えています。
新しい技術への取組図

・CARATS(Collaborative Actions for Renovation of Air Traffic Systems:将来の航空交通システムに関する長期ビジョン)
・SSR(Secondary Surveillance Radar:二次監視レーダー)
・WAM (Wide Area Multilateration:広域マルチラテレーション)
・ADS-B (Automatic Dependent Surveillance-Broadcast:自動位置情報伝送・監視機能)
・HARP(Hybrid Air-route suRveillance sensor Processing equipment:複合型航空路監視センサー処理装置)
・GNSS (Global Navigation Satellite System:全地球的航法衛星システム)

航空交通管制部は24時間稼働しており、他の国土交通省職員とは異なる勤務体系の職員も多くいらっしゃると思いますが、その点はどう感じていますか。
 実は、夜間も、日本の上空を多数の航空機が飛行しています。これらの航空機の安全を守るため、航空交通管制部は24時間稼働しており、職員は、シフト制を敷いて交替で勤務しています。24時間365日、空の安全を維持するために必要なこととして、皆、高い職業倫理のもとしっかり働いてくれていますが、正直、夜間に緊張感を切らすことなく働くというのはとても大変なことです。職員に改めて感謝申し上げるとともに、敬意を表します。
勤務体系図
https://www.mlit.go.jp/koku/atc/work.html (国土交通省HPより)

02 これまでのキャリアについて

管制部体制を抜本的に見直した立役者。誇りとやりがいを感じる瞬間とは
中野部長がお話している写真
これまでに特に印象に残っている業務があれば教えてください。
 航空保安大学校管制科を修了した後、最初の配属先が東京航空交通管制部で、訓練期間を含め約16年間を航空管制官として管制業務に従事しました。その後、本省航空局に異動し、管制業務全体を統括する立場で仕事を進めました。 当時の最も大きなイベントは、垂直間隔の短縮(RVSM)です。巡航する航空機に割り当てられる高度は、東行きと西行きで決まっていますが、当時、「高高度」の空域では、高度同士の間隔が「2,000フィート」としていたものを、航空機側で高度を正確に維持できるようになったことを踏まえ、国際基準を満たしたものを対象に「1,000フィート」間隔を適用することとなりました。これにより、割り当てられる(使用可能な)高度が2倍近くに増えますので、交通量の拡大が期待されました。
とても大きな運用変更でしたので、管制側も運航者側も入念な事前訓練が必要となったほか、隣国の管制とも歩調を合わせる必要があったため、現場官署を含め、導入準備から実現まで大変でした。
次の勤務地は成田空港事務所です。生まれて初めて、飛行機を実際に自分の目で見て行う管制と滑走路を基点とする緻密さが求められるレーダー管制を経験し、管制と一口に言っても中身は大きく違うものと痛感しました。
その後、再び本省に異動し、国内空域全体を抜本的に再編成し、管制処理容量の拡大に関する計画の企画立案に携わりました。この計画の一環として、従来の4航空交通管制部体制(札幌・東京・神戸・福岡)を3航空交通管制部体制(東京・神戸・福岡)に変更することとなり、私は、最後の札幌航空交通管制部長として官署を閉じ、令和6年10月1日付けで札幌航空交通管制部の管制機能と共に東京航空交通管制部に異動し、現在に至ります。
仕事を通じて、どのようなときにやりがいを感じますか。
航空交通管制部の業務は次のとおりで、すべて「空の安全確保」を目標としている点で共通しています。いわば「ワンチーム」で業務に取り組んでいます。
① パイロットと交信し、指示を発出する【航空管制官】
② 航空管制官が使用するシステム・機器を適切に維持管理する【航空管制技術官】
③-1 システム・機器の正常動作を支える空調管理や、業務上必要な電源を確保する【航空灯火・電気技術官、施設運用管理官】
③-2 庁舎の保全など職員の勤務環境を整え、予算の管理を行う【総務課、会計課】

このうち最も知名度が高い業務は①です。②、③となるに伴い、残念ながら知名度は低くなり、業務自体も地味になりますが、航空交通管制部の機能を維持するうえでの重要度は、実は③→②→①の順かもしれません。これら業務を担当する職員は、マニュアルに沿った対応は当然のこと、これまでの経験やデータをフルに活用して、日々、「何もなくて当たり前」の世界を作り上げています。
結果、例えば、相当な悪天候下でも、運航の安全を確保することができ、飛行機を利用するお客さまの笑顔も保たれる。このとき、私はとても誇らしくやりがいを感じるとともに、部下職員を大声で自慢したくなります。

航空交通管制部の業務は、国民の生活にどのような形で役立っていると感じますか。
 国交省には様々な現場があり、その全てが国民・社会を支え、そして、国民生活の安全を守っています。当航空交通管制部も、空の分野での国民の暮らしと安全を守る第一線の職場です。現場の使命は、国民・社会の「求め」と「期待」に応え切ることです。それは、現在(いま)の「空の安全」と「航空交通システムの強靱さ」を保つことです。
 この時代、時の経過は早く、未来はあっという間に現在(いま)になります。国民の足下が不安定にならないよう、国民の「求め」を適確に把握・予測し必要な施策を講ずるのが本省の役割だとすれば、我々の役割は、現在(いま)の国民の足下の安全を確実に守り切ることです。今後とも、国民・社会の「求め」と「期待」をしっかり見極め、愚直に空の安全確保に全力を尽くしていければと考えています。

03 今後の航空管制について

「空は安全。事故はなくて当たり前」を守り切る。更なる高み「定時性」の確保を求めて
研修風景
研修風景
航空管制の今後の発展に向けて重要なポイントは何ですか。
 安全確保に向け関係者が努力を重ねてきた結果、世の中から、「空は安全。事故はなくて当たり前」と感じられるようになったと思います。これはとても大きな進歩です。引き続き、この期待を決して裏切ることなく、航空をご利用いただける環境を追求したいと考えています。
ただ、定時性の確保については、改善の余地があると思います。遅延原因を徹底的に分析し、航空業界全体で対処していくべき課題です。それぞれがそれぞれの利益を追求していく姿勢ではうまくいかないと思いますので、今一度、定時性確保に向け、各々が果たすべき役割を認識し、それを実行していく必要があると考えています。

04 国民に向けて

皆様に安心して笑顔で飛行機に乗っていただくことを思い描いてー裏で支える努力と情熱ー
航空機
航空機
航空交通管制部で働く魅力は何ですか。
 我々は、国民・社会を「支える」完全に裏方です。決してキラキラした仕事ではありません。私自身、「支える」ということは、そういうことと捉えています。航空の世界は、運航する側、それをサポートする側、多くの関係者の連携のもと、非常に高いレベルでの安全が確保されています。
 日頃、航空交通管制部職員は相当な努力を重ねています。今や、安全であること、航空交通システムが堅牢であることが「普通」になり、「事故がなくて当たり前」になっていますので、お褒めの言葉を頂戴することは、あまりありません(笑)。でも私は、それこそが最高の「高評価」であると捉え、心から満足していますし、大きなやりがいを感じています。「空」が好きな方、そして「支える」ことに尊さと価値を見出せる方には、とてもやりがいのある職場だと思います。
国民の皆様へのメッセージをお願いします。
 私たちは、国民の皆様が、安心して笑顔で飛行機に乗ってくださることを思い描いて、日頃、仕事に取り組んでいます。これからも、皆さまの笑顔が続くよう努めていきますので、飛行機に乗る際には、我々の存在を思い出していただけると嬉しいです。
集合写真
中野部長と各職種の若手職員
(左から、事務官1名、施設運用管理官1名、航空管制技術官2名、航空管制官2名、事務官1名)

航空保安業務の詳細はこちら↓

ページの先頭に戻る