国土交通省防災情報
河川局防災課災害対策室
平成17年4月1日
海外の自然災害
◆海外の自然災害の状況
 風水害、地震、干ばつ、火山噴火、津波などの自然災害により、世界各地で多くの人命や財産が失われている。
 ベルギー・ルーバン・カトリック大学疫学研究所(CRED)の統計によると、1995年から2004年までの10年間に発生した自然災害により、全世界で約90万人もの生命が奪われ、死者のうち78%はアジアで発生している。
 特に発展途上国では、都市化が進む一方で、遅れた基盤整備や不適切な土地利用などの原因により災害への脆弱性を高めている。多くの発展途上国において自然災害が各国の経済成長の障害となっており、持続可能な開発の観点からも、その被害の軽減と自然災害再発防止への対策が国際社会の大きな課題である。


◆近年における海外の自然災害の概要

 近年に海外で発生した自然災害の中から、大規模な人的被害が発生した災害や我が国でも大きく報じられた災害について、国連や各国政府機関および報道機関等による情報を基に概要を述べる。


2005年   2004年   2003年   2002年   2001年

2005年
●2月 パキスタンの大雪・豪雨
 2005年2月上旬から中旬にかけて、パキスタンでは低気圧の停滞により各地で雨や雪が断続的に降り続いた。この影響で同国北部では約30年ぶりの大雪となり、北西辺境州では大雪による雪崩や家屋倒壊などの被害が発生した。一方、南西部は豪雨に見舞われ、バルチスタン州の町パスニとその周辺で2月10日、大型のダムが決壊したのに続いて、その下流にある農業用水用の小型のダムや堤防が相次いで決壊し、濁流に巻き込まれるなどして87人が死亡した。また、少なくとも3万人が住宅を失うなどの被害を受け、パキスタン軍が食料の配給などの救援活動を行った。パキスタン内閣府の調べによると、この北部の大雪と南部の豪雨による死者数は544人に上ったという。

●2月 イランの地震
 2005年2月22日現地時間午前5時55分頃、イラン南東部にあるケルマン州の北部のザランド市周辺で、M6.4の地震が発生した。ザランド市近郊では日干しレンガを積み上げて建てた家や壁が大きく壊れ、家屋の25〜90%が全半壊し、住民が下敷きになるなど死者612人、負傷者1,400人、被災者9万3,000人という甚大な被害が発生した。イランでは2003年12月、同じケルマン州のバムでM6.7の地震があり、3万人以上が死亡している。バム地震後、この地域は「地震の巣」との認識が広がり、住民も危機感を抱いてはいたが、地震対策を実行していた人は少なかったという。

●2月 インドの大雪・雪崩
 2005年2月末、カシミール地方のインド側支配地域では山間部で積雪4メートルを超える40年ぶりの豪雪に見舞われた。各地で雪崩によって住宅など千棟以上が押しつぶされる被害が発生し、278人が死亡したほか、262人が行方不明になった。インドとパキスタンが領有権をめぐって争うカシミール地方のインド側支配地域には数十万の軍が配備され、軍が中心となって行方不明者の捜索や負傷者の救助などを行うとともに、道路の除雪作業などにあたった。軍は山間部の住民に対し、新たな雪崩が発生する恐れから、当面安全な場所に避難するよう呼びかけを行った。

●3月 アフガニスタンの洪水
 2005年、アフガニスタンでは数年振りの厳冬・豪雪の後、3月に中部および西部の広い範囲で豪雨・融雪による洪水が発生した。中部ウルズガン州では家屋数千棟が破壊され、115人が死亡、多数が行方不明となった。同州デ・ラウド地区ではヘルマンド川が氾濫、米軍がヘリコプターを出動させて約250人を救出した。また、西部ファラー州では69人が死亡したほか、ゴール、ファリヤーブ、ヘラートの各州でも大きな被害が発生した。さらに、3月末以降には北部などでも豪雨による洪水が拡大し、あわせて死者200名以上、被災2,500世帯以上という被害となった。広範囲の地域において被災者は不自由な避難生活を強いられ、同国政府は対策センターを設置して救援活動を行うとともに、国際社会に対して緊急援助を要請した。

●3月 インドネシアの地震
 前年(2004年)12月の地震・津波で甚大な被害を受けたインドネシア・スマトラ島北西部が、2005年3月28日現地時間23時09分、再び大きな地震に見舞われた。震源はスマトラ島のアチェ州南東約90キロのインド洋で、規模はM8.7と推定されている。この地震では前年のような大規模津波の発生はなかったが、小規模な津波がインド洋沿岸で観測された。地震による被害はスマトラ島北部の西方に位置するニアス島に集中し、家屋の倒壊などによる死者は同島で685人、スマトラ島等もあわせると死者は915人、重軽傷者は6万人に達し、家屋8万棟以上に被害が生じた。地震の揺れはスマトラ島の広い範囲で観測され、同島北部アチェ州の州都バンダ・アチェなどでは、余震や津波の発生を恐れて避難する住民で深夜の市内は一時騒然となった。
 インドネシア政府は、前年末の地震・津波から3ヶ月を迎えた3月26日で緊急援助の期間を終え、防災や復興の計画草案をまとめて復興期に入るとしていたが、今回の地震はその矢先の発生であり、政府は道路や住宅の修復費用の増額など、大幅な復興計画の見直しを迫られた。

●4〜6月 エチオピアの洪水
 2005年4月下旬、アフリカ東北部は数日間の大雨に見舞われ、エチオピアやソマリアで洪水が発生した。エチオピアでは24日から48時間降り続いた大雨によりWabe Shabelle川が氾濫し、村全体が洪水で流失するなど35の村々が浸水した。被害はエチオピア南東部に集中しており、死者は同国で170人に達し、地域住民26万人が家屋を失ったほか、落橋や停電被害等が生じた。エチオピアでは長期にわたり干ばつ被害が続いていたが、乾ききった河床が大雨を受け止めきれずに氾濫し、地域一帯を飲み込んだとみられている。この洪水による被害は国境の接するソマリア南西部やケニア北東部でも発生し、ソマリアでは少なくとも40人が死亡、ケニアでは住民2万5,000人が緊急避難した。

●5〜6月 中国の豪雨・洪水
 2005年5月〜6月、中国の各地で豪雨による洪水や土石流などの災害が相次いだ。内陸部では5月末から6月初めにかけて湖南、四川、貴州の各省が豪雨に見舞われ、洪水などであわせて160人が死亡した。また、6月10日、黒龍江省寧安市沙蘭郷で洪水と土石流が発生、この土石流は低地にある長安小学校を襲い、校内にいた児童ら117人が犠牲になった。また、6月中旬以降、同国南部の広西チワン族自治区、広東省、福建省など6省・自治区で豪雨が続き、各地で堤防などが決壊、死者は164人、行方不明者は68人、被災者は2,147万4,000人に達した。この5月末からの大雨によって水害を受けた省・自治区・直轄市は全国で22に及び、536人が死亡し、137人が行方不明、被災者数は4,438万人に達し、経済的損失は約229億9,000万元(1元≒約13円)に上ると見られている。

●7月 インド西部の洪水
 2005年7月下旬、インド西部マハラシュトラ州がモンスーンに伴う記録的な豪雨に見舞われ、洪水、土砂崩れなどが発生し、969人が死亡した。同州の雨量は26日朝からの24時間で944ミリに達し、インド観測史上最大を記録した。インド最大の都市ムンバイでは道路が冠水し、動けなくなった自動車の中で水死する被害が発生した。また、ムンバイの南約150キロにあるジュイ村で27日、土砂崩れが発生して約100人が死亡したほか、ムンバイとその周辺では水を介する感染症により125人が死亡したと伝えられた。

●8月 米国南部のハリケーン
 2005年8月26日、米国フロリダ州にハリケーン・カトリーナ(Katrina)が上陸、フロリダ半島を横断した後メキシコ湾を北上し、29日に同湾沿岸のルイジアナ州に再上陸した。この大型ハリケーンの通過により同国南部で暴風、洪水による被害が発生し、ルイジアナ、ミシシッピ州など南部5州で少なくとも1,300人が死亡した。中でも最大の被災地となったルイジアナ州ニューオーリンズ市では、堤防が決壊して市街地の80%が浸水し、市民は避難所や周辺地域での避難生活を余儀なくされる事となった。連邦政府による災害宣言の対象地域は、日本の本州に匹敵する9万平方マイル(約23万平方キロ)に上った。

●9月 中国の台風13号
 2005年9月1日から中国東部や中部を台風13号(タリム)が襲い、浙江省、安徽省、福建省など5省で洪水や地すべりが発生し、129人が死亡、30人が行方不明となり、被災者は1,962万人に及んだ。死者の多くは、倒壊した建物の下敷きになったとみられている。最も被害が大きい安徽省では1日から3日にかけて暴風雨に見舞われ、いくつかの貯水池では600o以上の雨量があったほか、3,000箇所で土石流や土砂崩れが発生し、同省だけで76人が死亡、12人が行方不明となった。

●10月 グアテマラの土砂崩れ
 2005年10月初旬、一時ハリケーンに発達した熱帯低気圧・スタン(Stan)がメキシコ湾上に停滞し、中米各国では約1週間にわたり大雨が降り続いた。この影響でグアテマラやエルサルバドル、メキシコ南部等で洪水や土砂崩れが発生し、死者・行方不明者合わせて1,600人以上と報告された。最も多くの犠牲者を出したグアテマラでは、5日の早朝、西部パナバフ村で大規模な土砂崩れが発生し、就寝中だった住民約1,400人が生き埋めとなった。地元当局は救助活動を行ったが、堆積した土砂は一部深さ12メートルに達しており、10日に遺体の回収作業は打ち切られ、669人が死亡、844人が行方不明となった。

●10月 パキスタンの地震
 2005年10月8日現地時間午前8時50分、パキスタン北東部カシミール地方・インド国境近くでM7.6の強い地震が発生した。この地震により、パキスタン、インドなど周辺で家屋倒壊や地すべりによる被害が広がり、死者はパキスタンで7万3,331人、インドで1,309人となり、死者計7万4千人超という大災害となった。最大の被害が生じたパキスタンのアザド・カシミール特別州では、ほぼ半分の地域が被害を受け、州都ムザファラバード付近では建物の8〜9割が倒壊した。山間部の被災地では道路寸断等により十分な支援が行き届かず、約250万人とされる家を失った被災者は極めて過酷な状況に置かれた。震源地のパキスタン北部は、3つのプレートがぶつかる地域でこれまで度々大地震が発生しており、近年では2001年にインド西部でM7.9の大規模な地震が発生した。



2005年   2004年   2003年   2002年   2001年

防災情報Home 国土交通省Home