「『交通空白』解消へ!地域交通DXに向けたスタートアップピッチ - テック×モビリティビジネス in Fukuoka」レポート
不便な未来はなくせるか。エモい移動体験から習い事送迎まで地方の"移動の足"問題を解決するスタートアップたちの挑戦

2025年7月29日、福岡市天神のGarraway Fにて、「『交通空白』解消へ!地域交通DXに向けたスタートアップピッチ - テック×モビリティビジネス in Fukuoka」が開催された。同イベントは、国土交通省が2025年度に開始した「COMmmmONS(コモンズ)」プロジェクトの一環であり、地域交通のDX推進と「交通空白」の解消を趣旨としている。COMmmmONSでは地域のモビリティ資源を社会基盤と捉え、サービス、データ、マネジメント、ビジネスプロセスのDXを通じ、地域交通の課題解決を図るベストプラクティス創出とその標準化を目指している。従来のMaaSでは不十分だった、公共交通の利便性向上や持続可能性確保、スタートアップ参入障壁の解消などが目的だ。
開催場所のGarraway Fは、トヨタが運営するモビリティ関連の社会課題解決を目指すコワーキングスペース。国土交通省主催のもと、同イベントは現地とオンラインのハイブリッド形式で開催された。プログラムは、スタートアップなど6社によるピッチと講評の後、登壇者・講評者によるクロストークで構成。地域交通分野への多様な人材の参入を促す試みとなった。
ピッチ講評者は、呉工業高等専門学校 環境都市工学分野 教授 神田佑亮氏、株式会社アドライト 代表取締役 木村忠昭氏、福岡県 企画・地域振興部 交通政策課長 窪西駿介氏、国土交通省 総合政策局 モビリティサービス推進課 総括課長補佐 内山裕弥氏の4名が務めた。MCはトヨタ自動車株式会社/トヨタ自動車九州株式会社/Garraway F 主幹/ビジネスプロデューサーの植野直亮氏が担当し、イベントが進められた。

株式会社アドライト 代表取締役 木村 忠昭氏(右)

国土交通省 総合政策局 モビリティサービス推進課 総括課長補佐 内山 裕弥氏(右)

旅行先での“エモい”移動体験を演出
身近な移動を、より豊かに(eMoBi)

株式会社eMoBiは、観光客向けの3人乗り小型EVレンタルサービス「Emobi(エモビ)」を提供している。同社代表取締役CEOの石川氏は「利用者の8割は20代女性。1時間あたり1,500~2,000円と高額ながら、『エモい』体験が売り」とアピール。「Emobi」は3輪電動バイクで、見た目はさながら「電動トゥクトゥク」。石川氏は「自動車より小型で運転が簡単。開放的な車両で視界が広く、その土地の景色や匂いを体感しながら楽しく移動できる」と、特徴を説明する。従来はZ世代の国内観光客向けに提供してきたが、現在は訪日外国人観光客の取り込みも積極的に実施中。直近では石垣市と連携協定を結び、石垣島と台湾の定期フェリー就航に合わせ、石垣港離島ターミナルでサービスを展開したという。
交通空白の観点では、JR東日本との連携を通じ、館山(千葉県)や奥多摩(東京都)など駅を降りてからの移動手段が少ない地域における、観光地ならではの二次交通としての導入事例を紹介した。使用する車両は、価格が100万円程度で補助金活用も可能であり、観光利用での収益を上げつつ地域住民の移動の足としての活用も視野に入れていると述べた。

ピッチ後の講評で神田氏は、Emobiの事業を「非常におもしろく、多様な掛け合わせで収益を上げる可能性がある」とコメント。特に、観光でしっかり稼ぎ、その収益を地域の足の原資にしようとするモデルを評価した。
また、車両価格について質問がなされ、石川氏は小売価格で100万円程度であると回答し、地域によっては20~30万円の補助金が適用される可能性もあると説明した。鎌倉における実例として、地元の人に車両を販売し、駅前に駐車可能な場所を提供することで、持ち主が電車で東京などへ行っている間に観光客が車両を利用できる仕組みを整えているという。石川氏は「車両の販売だけではなく、車両レンタルも組み合わせることでしっかりと利益を上げられるビジネスモデルを構築し、全国展開しようとしている」と話した。
道なき海で最速で現場に駆けつける助け合い海難救助
SOSが近くの船に1分で届く(よびもり)

株式会社よびもりは、海難事故の発生時に、最寄りの船が迅速に救助に駆けつける助け合い海難救助サービス「よびもり」を提供している。同社代表取締役の千葉氏は、「海に出た船が事故に遭ったときに、他者がその事故に気づき、海上保安庁の救助船が現場に駆けつけるまでに、状況によっては最大12時間もの時間がかかってしまうことがある」と海難救助の課題を説明。時間が経つほど救助は困難になるため、「初動を早めることが非常に重要になる」と指摘した。
同社の「よびもり」では、船の位置情報を知らせる小型端末とSOSを受け取るアプリを使い、地元の船同士で連携することで、迅速な救助を可能にしている。北海道の知床(羅臼町、斜里町)では地元の自治体や漁協、観光船協議会などと連携協定を締結。斜里町での実証訓練では事故発生から11分で救助が完了したという。ビジネスとしては、漁業関係者や観光船運航事業者だけでなく、洋上風力発電事業者など海上で作業を行う事業者も顧客であると説明した。

講評において窪西氏は、地域の人々が連携して素早く現場に駆けつける『よびもり』は「交通空白を広く捉えたローカルな課題解決策であり、高齢者の見守りサービスにも発想が通じるところがある」と述べ、「海に行くときに持っていくものや身に着けるものに端末を埋め込むなど、さらなるサービス展開の可能性は?」と質問。千葉氏は、「ライフジャケットへの搭載は検討しているが、漂流している間に脱げてしまうこともある。そのため、腕時計など日常生活から人にひもづいているものへの搭載を検討し、より現場に合わせた形を取っていきたい」と話した。
また、内山氏からの「船はLTEの電波が届く範囲にいるものなのか?」との問いには、「衛星回線も利用するほうが広範囲を扱えるが、漁船の事故が置きやすい場所のほとんどはLTEのエリアでカバーできる」と千葉氏は回答。漁業においては漁場の特定につながる情報はセンシティブな側面もあるが、「旅客や物流の分野でこうしたサービスを活用できたら」と内山氏は述べた。
Reinventing Cities(都市の再発明)
地域交通のターゲット・マーケティングによる交通需要マッチング(scheme verge)

scheme verge株式会社は、「都市づくりとイノベーションの融合 『都市の再発明(Reinventing Cities)』を目指し、テクノロジーと現場力の“両刀使い”として取り組んでいる」と、代表取締役の嶂南氏は説明。具体的には、データ連携プラットフォーム「Hoorai」の提供を通じ、不動産デベロッパーや交通事業者、自治体などの領域横断的な課題解決を支援している。
同社では、人流・交通流や来店履歴、位置情報など多様なデータを連携・分析したうえで、具体的な施策を展開し、地域や建物の人流マネジメントの最適化を図っている。例として、演劇祭のチケットとバスの一日乗車券のセット販売や水上交通のデジタル化支援、デジタル化と連携した地域イベントのプロデュースなど、さまざまな取り組み事例を紹介。モビリティ単体でのマネタイズの難しさを指摘し、不動産など他の分野との連携の重要性を強調した。

講評で神田氏は駐車場に着目し、「例えば、地域で開催される花火大会のようなイベントで、scheme vergeの技術を生かして、従来収益が見込めなかった駐車場を収益源に変えられないだろうか。それができれば、イベントや地域交通の原資にもなり得る」とコメントした。嶂南氏は「その重要性を認識しており、九州のある自治体と同様の議論を進めている」と回答。「幹線道路の混雑情報を取得できるようになり分析可能なデータがそろってきた一方で、駐車場の配置と交通施策の連携は都市政策としての総合的な議論が必要になる。都市部で議論され始めているが、交通空白地帯ではまだこれからになるだろう」と話した。
木村氏は「各地で多様な取り組みを行う中で、“横軸”となる考え方があれば教えてほしい」と質問。嶂南氏は「交通事業単体でのマネタイズの難しさ」をあらためて指摘するとともに、「各地で企業ごと個別にプロジェクトを行ったりDXを推進したりしがちだが、その地域の『都市戦略』と連携して取り組んでいくことが大事だと考えている」と答えた。
内山氏からは、データ分析の強みについて、「scheme vergeならではの『バリュー』を聞きたい」と質問。嶂南氏は、「データ分析と施策設定との連携が重要」と回答し、「『Hoorai』を使って、『データ分析による効果検証』から『デジタルでの施策設定や提案』へ、またはその逆で進める戦略、どちらも可能なことが強み。データ分析と施策実行の互換性をさらに高め、分析結果を素早くデジタルチケットに反映する仕組みを構築していきたい」と話した。
子育て世代の負担軽減を目指す
習い事送迎サービスの実証実験(大英産業)

大英産業株式会社は北九州市に本社を置く不動産会社。同社新規事業開発部部長の森氏は、ジャンボタクシーの乗り合いで子どもの習い事の送迎を行う「習い事送迎サービス」の取り組みを紹介した。
森氏は「子育て世代の親にとって、家事の中でも子どもの送迎は負担が大きい」と捉え、子育て世代が住みやすい街の実現を目指して、同サービスに挑戦したという。事業としては北九州市と北九西鉄タクシー(北九西鉄交通株式会社)、scheme verge株式会社と組み、4社の共同事業として2024年12月初旬から2025年1月末まで実証実験を行った。結果として16回の乗車があり、リピーターもいたという。しかし、メディア露出によって注目はされたものの、タクシー会社の人手不足や運賃だけでは収益化が難しいという課題が判明。今後改めて実施するなら、午前中はシニアの送迎、午後は子どもの送迎などと時間帯で顧客を分け、一日中稼働できるように取り組みたいと語った。

講評において、内山氏が「公営の乗合タクシーは運賃だけでペイするのは難しい。その前提で事業を開始したのではないのか」と質問したところ、 森氏は収益化できなかったためと回答。内山氏は「赤字前提の地域交通サービスだが、都市の付加価値向上と企業のCSRの観点からやっていくしかないのでは」と現状の課題を述べた。また、電力会社がデマンドバスの運行を担う事例を紹介し、電力会社やデベロッパーなど都市の価値や魅力を向上させる事業者が今後主役になり得ると、期待を示した。
また、神田氏は「デベロッパーとして地域の習い事そのものをプロデュースし、習い事の場所を集約して送迎の効率化を図る案もあるのではないか」とアイデアを提示した。
シェアサイクルが公共交通を補完
“まちの移動の、つぎの習慣をつくる”(チャリチャリ)

1分単位の料金設定が特徴のシェアサイクルサービス「チャリチャリ」を提供するチャリチャリ株式会社。「現在9都市で展開し、累計のご利用登録者数は130万人以上。福岡市内では4,700台が稼働している」と同社公共政策部部長の小柴氏は説明。「1分単位の料金設定で細かな移動に適しているのが特徴。また、原則として公費に頼らず事業を成立させることを各地域で徹底している」と語った。
利用状況データの活用については、名古屋市で建設コンサルティング会社と共同で自転車専用レーンの整備効果を検証した事例のほか、福岡市で地元大学との共同研究を紹介。同研究では、福岡市の都心部でありながら駅からは離れ、路線バスの接続も悪い地区において、シェアサイクルが公共交通を補完する役割を果たしていることが示されたという。最後に小柴氏は、「地域課題を地域のプレーヤーと一緒に考えること、地域の交通事業者と連携すること。そして、都心部と観光地など地域特性に応じていかに採算を取っていくか。これらに向き合い、事業に臨んでいきたい」と述べた。

講評で窪西氏は「新しいモビリティを導入するとき、どれくらい継続すればユーザーに浸透するのか。地域で利用に差はあるのか」と質問。小柴氏は「自治体との連携事業では5年計画が多い。公費に頼らない前提だと、3年目からの黒字転換を見据えて計画をたてる。3年継続できれば事業の認知度は高まり、利用も進む。5年を経ると、より収益を生み出す段階に移っていく」と回答。地域差については「日常用途中心で展開しているため地域で大きな違いはない。どの都市でも朝夕の通勤と昼間の利用の需要が重要」と答えた。
木村氏からは、海外のeスクーターなど多様なモビリティがある中で、「チャリチャリ」の強みについて質問があった。小柴氏は「1分単位の料金設定なので必要なぶんだけ利用できる点を、ユーザーは魅力に感じてくれているのではないか」と答えた。また、自転車の製造からグループ内ですべて完結させることで外部委託を減らし、コストを大幅に削減している点を強みとして挙げていた。
モビリティとエンタメを組み合わせた活動で企業価値向上と地域貢献を目指す(トヨタカローラ大分)

トヨタカローラ大分株式会社では、「人口減少が進む大分県において若者の定着を図るため、モビリティとエンターテインメントを組み合わせた活動を通じ、企業価値向上と地域貢献を目指している」と、未来戦略部部長の幸野氏が説明。
地域の足となるデマンドタクシーやライドシェアの取り組みのほか、自治体や学生と組んで地域課題解決に向けた勉強会や中心市街地活性化イベントなどを実施したほか、店舗を地域の人々の接点となる拠点として、店舗でカラオケやeスポーツ、ドローンサッカーなどのイベントも開催していることを紹介した。車両の販売にとどまらず、「社員、顧客、地域のみなさまを笑顔にしていくことを目指して『make you smile』をキャッチフレーズに取り組んでいる」と幸野氏は述べた。

また、MCの植野氏が、株式会社モビリティデザインラボ Founder/最高挑戦責任者として同時に登壇。トヨタカローラ大分と一緒に取り組む「生活の足を支えるモビリティサービス 住宅団地のエレベーター」について紹介した。この取り組みでは、住宅団地の中を自由に動けるエレベーターのようなモビリティを作っていこうとしている。
全国に約5,000あるという住宅団地では、住民の高齢化が進んでいる。高齢者の主な外出目的は買い物や通院だが、高齢の居住者にとっては車がないと出かけるのも不便で、生活しにくい環境になっているそうだ。そこで植野氏らは2年前に大分市で団地内の移動に特化したサービスの実証を実施。オンデマンド定路線型と予約制自由経路型で行ったところ、オンデマンド定路線型の利用が圧倒的に多かったという。
この結果を受け、“呼んだらすぐ来る近距離の定路線型オンデマンドサービス”の開発に現在は取り組んでいる。トヨタカローラ大分をハブとして、試乗車を団地内送迎車として使ったり、営業スタッフがドライバーを務めるなど、本業と両立させる事業モデルの構築にチャレンジしていると紹介した。

講評では木村氏から、「最終的なビジネスへの落とし込みとして、来店を増やして車両を販売するというモデルなのか、車両の販売以外のマネタイズのポイントを増やすことを目指しているのか」との質問があった。幸野氏は「直接的なマネタイズとは考えておらず、地域貢献を通じて企業としてのPRやリクルートにもつながるため、長期的な視野での企業価値向上として考えている。最終的に車両の販売につながればいい」と回答した。
神田氏は「平日のディーラーでは販売スタッフはどんな業務をしているのか」と質問。幸野氏は「平日は来店が少ないため、顧客への提案資料や申請書類などの作成業務を行っているが、最近では申請書類作成専門や洗車専門のスタッフを設けたり、DXを推進したりするなどして、余力を作る取り組みをしている」と回答。そのうえで、前述のような多様な取り組みを実施できる体制づくりを行っていると説明した。
協調により基盤を整えたうえで競争力を高め、
交通をいかに地域の財産として築いていくか
イベント後半の講評者によるクロストークでは、改めて「交通空白」をどう捉えるかという点に話が及んだ。

国土交通省の内山氏は「『交通空白』という言葉から、電車もバスもタクシーも交通サービスが何もない地帯のことと思われがちだが、実はもう少し広い概念。住民の足、観光客の足を考えたとき、生活や誘客に支障をきたすような交通の課題がある場所のことを意図している。『交通空白』は都心部にも、博多にも東京にもある」と話した。
加えて、「かつては交通サービスへのアクセシビリティを測る観点として、『バス停から何百メートル離れているか』といった定量的な見方もあったが、いまはもう少し柔軟にとらえている。足腰が弱っている方、ケガをしている方には100メートルの移動も大問題。また、今回のピッチにもあったが、自家用車による家族の送迎が可能でも、負担が大きければいつまで続けられるかわからない。さらに言えば、いまは路線バスがあったとしても、今後いつまで持続できるのかはわからないケースもある。まずは広い観点で、交通の課題があるところというイメージで『交通空白』を捉えていただければ」と述べた。
福岡県の窪西氏は、「一義的な定義で『ここが交通空白だ』とは決められない。市町村のみなさんと交通政策を議論する中で、地域にとって解決すべき交通の課題は何なのか、一定以上の住民のニーズを聞きとったうえで、自治体が判断していかなければならない。その際、住民の声やデータをしっかりと捉えることが重要になる。県としては、そうした情報の把握に向けて市町村の伴走支援を行っていく」と述べた。
呉工業高等専門学校の神田氏は、「交通の課題というと、過疎や超高齢社会などの課題と一緒になって話の焦点がどんどん狭まり、『悲観的なシナリオ』で捉えられがちになる。しかし、もっと『稼ぐ方法はないか』という発想につなげられないだろうか」と提言。「今回のピッチでも、観光の足と地域の足の二役を担えそうなモデルがあった。各地にある既存の交通アセットを利用しながら、多様な人たちの新たなアイデアや技術を投入し、『交通空白』を埋めていくモデルを描いていけたらいい」とコメントした。
アドライトの木村氏は、公共交通におけるデジタル化に関して「民間企業でDXに取り組む場合、まず業務の在り方を整理し、そのうえでデジタルツールを適用していく。交通インフラのデジタル化を整備していく際も、地域の現状や今後を踏まえて設計していくべきだろう」と述べた。また、交通領域へのスタートアップ参入に関して、「スタートアップがモビリティサービスのみで収益を上げることの難しさがある。日本では既存の交通事業者と連携したり、交通事業者内部からの社内起業家であったり、自分たちだけでなく他社と連携して、いかに仕組みを作っていくかがポイントになるだろう」と語った。
ディスカッションを進行したMCの植野氏は、「交通事業として議論していると、ついつい売り上げとコストの発想ばかりに縛られてしまう。しかし、プロジェクト名が『COMmmmONS(コモンズ)』というように、交通を地域の『共有財産(=コモンズ)』として考えていくことが大事なポイントになるのだと共感した」とコメントした。
内山氏は「プロジェクト名の『COMmmmONS』には『協調領域』という意味を込めている」と説明。とりわけデジタルやDXの分野では『協調領域』と『競争領域』とを明確に分け、まずは『協調領域』をしっかり整備したうえで、ビジネスの『競争』を進め、生産性や利便性の向上を追求していくという。
「交通分野では従来、こうした見方や議論はあまりされてこなかったかもしれない」としたうえで内山氏は、これからは「例えば、交通事業者同士で標準的な業務モデルは『協調領域』として共通基盤を整備すれば、ビジネスベースの投資余力はもっと上げられるだろう。データ活用においても、出力インタフェースなど多くの人が使う部分は業界標準を定めればコストを下げられるだろう」と語り、まずは業界全体で共有されるべき業務モデルやデータ標準化の必要性を強調した。
本イベントは、地域交通DXにおける多様な視点と課題を浮き彫りにし、官民、そして多様な業界間の連携が不可欠であることを再確認した。国土交通省の「COMmmmONS」プロジェクトは、今後も各地でのピッチイベントやアイデアソンを通じて、地域交通の未来を担う人材と事業の発掘・育成を推進していく予定だ。

Updated: 2025.08.29
文: 中山智(Nakayama Satoru) 編集: 北島幹雄(Kitashima Mikio)/ASCII STARTUP 撮影: 高橋智(Takahashi Satoshi)