資料5−1

 

産業構造の転換に対応した都市政策のあり方に関する主な論点

(第4回懇談会での議論より)


※以下は、前回懇談会の資料4−3(論点整理案/枠線内は資料からの抜粋)に対する各委員の意見(当日欠席の委員からの追加意見*を含む)の骨子を整理したもの(文責:事務局)。

 

1.都市政策の基本的な方向について

論点1:産業構造の転換・社会経済情勢の変化に対応した新しい都市のあり方はどのようなものか。また、その具体化に向けて都市政策はどうあるべきか。

仮説:産業構造等の転換に対応し、今後は、都市内の遊休地等を活用しながら既成市街地の再編を進め、職住近接のコンパクトな都市を形成していくことが必要であるが、個別の地区における将来の土地利用を即地的に全て計画することは困難であるため、現実に具体化されるプロジェクトに対して、適切かつ柔軟に対応していくことが重要ではないか。 

<都市政策の基本的な位置づけについて>

○地方分権とは別の国家戦略としての都市政策が必要ではないか。

○世帯構成の変化による都心居住志向など国民の潜在的願望に応えることが必要ではないか。

○都市のあり方を考えるとき、都市の文化論がないと一般市民の理解を得られないのではないか。

○都市政策と産業政策、福祉政策、文化政策等との統合化・一体化を図る必要があるが、その場合に都市政策はどのような理念を持てるか。

○都市政策と住宅政策とは建設省の中で一体化して考えるべきではないか。

○都市政策は観光と結びつかないといけないのではないか。

○都市政策と観光とか通信とかのリンケージを考えることが必要ではないか。

 

<産業構造の転換と都市構造との関係について>

○量的には部分でしかない土地利用転換が、長期的に都市全体にどのような影響を及ぼすかもっと検討すべき。

○産業の変わるスピードは速いが都市は急には変われないので、産業活動とその入れ物としての土地・建物とを分離し、組み替えがしやすい都市はできないか。

 

<都市政策の実施主体について>

○低未利用地の発生によって大都市の構造自体が変わるとすれば、地方自治体の都市政策だけで対応できず、より大きな意味での調整又は計画が必要であり、また、国が方向を示す必要があるのではないか。

○「個別プロジェクトへの適切かつ柔軟な対応」ということに行政が馴染んでいないため、実際にうまく対応できるか。

○個別プロジェクトに関して、地方自治体は建設省の大きな政策の方向にスムーズに対応できるのか。

○地方自治体に決定権がいくと、産業活動に支障が出る可能性も出てくるのではないか。

*都道府県及び市町村において既成市街地の再編・再構築に関して検討を行う場を設け、産業の再興だけでなく防災・環境・市街地整備の観点から多角的に検討すべき。

*都市計画の見直しを4年程度で行うとか、市町村長よりも知事の判断を優先するなどで都市計画を柔軟化してほしい。

 

論点2:産業構造の転換に対して、都市政策はどのような役割を果たすことができるか。

仮説1:都市型の新産業等(注2)の発展のための環境整備などを通じて産業構造の転換に寄与することができるのではないか。その際、産業構造の転換に伴って発生する工場跡地等遊休地の適切な活用が必要となる場合があるのではないか。 

○構造転換に苦しんでいる産業に対し、都市政策のほうからバックアップできないか。

○新産業を生み出すための「新産業誘導地域」といった新たな枠組みがつくれないか。

○これからの工業地域のあり方を模索している臨海部の大企業への対応と、SOHOとも関連するデジタル産業等への対応という二極を秩序づけて議論できないか。

*新たに都市型産業を誘致していくためには、用途・容積・インフラ整備のほかに、融資・税の減免などの産業政策を同時に導入することが必要ではないか。

*ベンチャー企業が入居しやすいオフィスや工場、情報基盤、福利研修施設等を地方公共財のような概念で公共セクターが整備できないか。

 

仮説2:これからの都市づくり(都市の再構築)そのものが、「都市づくり産業」とも呼ぶべき新たな産業クラスターを成長させる可能性も考慮すべきではないか。

○観光、ファッション、モバイル、エレクトロニクス、自動車産業を含めた形での「都市づくり産業」を議論して欲しい。

 

2.工場跡地等の取扱いについて

論点1:工場跡地等の遊休地の利用の方向はどうあるべきか。

仮説1:工場跡地等の遊休地は立地条件や規模などに応じて、利用可能性が異なるのではないか。 

 

○土地の条件に応じた需要の検討、製造業(支援)のための土地利用転換の促進、積極的な需要創造など、需要と供給のマッチングの議論をもっとすべき。

○土地利用転換について誰がどの程度の自由度をもって判断すべきか。

○都市計画が分離型の土地利用を想定している中で、工場用地が遊休化したからといって簡単に変えてよいか。

○今需要があるのは、住宅、観光ぐらいで、あとは暫定利用等しかないのではないか。

*新たな土地利用に際しては、その交通インパクトを事前にアセスする必要があり、インフラの存在しない地区では、自動車の利用を極力抑制した土地利用を考えるべき

*都市型の新産業には既成市街地の再開発で対応し、工場跡地には中小企業団地を誘導してほしい。また、臨海部は環境、リサイクル、バイオの産業を誘致してほしい。

 

仮説2:既成市街地内の工場跡地等には、都市の防災性の向上や良好な都市環境の形成等の視点から公共的な利用をまず検討すべきものがあるのではないか。 

*工場跡地を新たな工場などにより埋めるのではなく、まずはオープンスペース、防災拠点、公共事業の代替地など公共公益施設、次に都市の活力の向上と周辺の改善に寄与する産業の誘致などとしての利用を優先すべき。

*公園、緑地の拡大を最優先してほしい。

 

仮説3:民間による土地利用が進められる遊休地についても、都市政策の側から一定の関与が必要な場合もあるのではないか。 

○千ha規模の大規模な土地利用転換は、従来のコントロール型では対応できないのではないか。

○工場跡地等の利用に関して、基本的には民間の役割であるが、少なくとも全体の方向を示し、必要があれば規制・誘導するなど官が関わって行く部分はあるだろう。

○公共関与には規制的部分と競争的部分(規制緩和)があって、どのようにバランスを取っていくかについて国がマニュアルや指針を示す必要があるのではないか。

 

論点2:既成市街地内など利用可能性の高い土地について、適切かつ円滑な土地利用転換を進めるためには何が必要か。

仮説1:公共部門で確保すべき土地については、地元自治体による土地の取得が困難な場合にも、土地所有者の負担を軽減する措置を講じる等により、土地の確保を図るべきではないか。また、こうした取組みに対して国も積極的な支援を行うべきではないか。

*公共セクターのみが計画するのではなく、企業や個人のコンペを行ったり、BOT方式などPFI手法を様々な形で導入できないか。

 

仮説2:民間による土地利用転換が進められる土地については、具体のプロジェクトに応じ、土地利用制限の変更や関連公共施設の整備等に関してより柔軟に対応すべきではないか。また、都市政策上戦略的に開発を進めるべき場合には、公団の参画等公共部門の支援を適切に行うべきではないか。 

 (特になし)

 

論点3:当面土地利用転換が見込めない遊休地については、どのように取り扱うべきか。

仮説1:当面土地利用転換が見込めない遊休地については、暫定的な土地利用を柔軟に許容すべきではないか。 

*暫定的利用に関する都市計画制度(工場跡地に限らず大地震後の避難地やがれき置き場の整備にも活用可能)を提案する。

 

仮説2:暫定的な土地利用が見込まれない場合にも、遊休地の管理については適切に行われるような措置を講ずるべきではないか。 

*まずは公共緑地として、行政が自由に用途を変更し、自由に利用を制限できるスペースとすべきではないか。

*当面利用目的のない土地を開発熟度があがるまで温存するためには、固定資産税の物納を認めてもらうのがよい。


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