第3節 経済への影響
人口の動きは我が国の経済のあり方にも大きな影響を及ぼす。経済成長を生み出す要因として(1)労働力、(2)資本、(3)技術進歩(生産性向上)の三つの側面から考えてみる。
まず、生産年齢人口が減少を続ける中で、今後の高齢者や女性の就業率の高まりを考慮しても将来的に労働力人口は減少していくと考えられる。ただ労働力の減少の影響の大きさについては議論があるところである。また、労働力の質的な面の変化として労働力の高齢化が見込まれる。ただし高齢者は一般的に動作性能力は衰えるものの言語性能力(知的能力)はあまり衰えないとの指摘もある。今後高齢化する労働力は高い教育水準を持ち、円熟した智恵を蓄積してきていると考えると、将来の生産のあり方が多様性を重視するものに変化していく中でその価値を高めていく可能性もある。
次に、投資に影響を与える貯蓄の動きである。今後、我が国では急速な高齢化の進行により、社会全体の貯蓄率は低下し、投資余力の面から資本形成は制約を受ける可能性があるが、貯蓄率は近年下げ止まりの傾向を見せ、確定的なことは言えない。ただ、量的な側面からの貯蓄率を考えることも重要であるが、同時に重要であるのは、投資により形成される資本の質であり、貯蓄がいかに生産性の高い資本投資に効率的に配分されるかということである。
次に技術進歩である。我が国の労働生産性の向上の度合いが低下してきている中、今後の経済を支えていくために技術進歩が重要性を増してくる。社会資本は、例えば道路や港湾が物流を円滑にしたり上下水道や都市交通体系が都市的な生産活動を可能にしたりするように、生産活動に貢献している(社会資本の生産力効果を通じた全要素生産性の向上)。既存のストック機能の充実や新たな機能の付加により生産力効果の高い社会資本を整備していけば、労働力も民間資本も伸びない中でも経済成長に貢献するものと考えられる。
また、人口が減少局面に入る中で、これまでのようなピラミッド型の人口構造を前提とした年功序列型の組織は維持が困難になり、雇用形態は多様化し、会社組織に閉ざされていた智恵や技能が開放され、情報通信技術と結びついて創造的な活動がNPO活動やボランティア活動の中で行われるようになる可能性もある。こうした活動は、通常のGDPの数字には現れてこないものの、豊かさを生むという観点から考えれば、経済成長にとらわれない新たな経済の可能性としての意義も持つと考えられる。
