1 住宅・社会資本の機能の再編成
人口減少社会の中で人々の活動を量的にも質的にも充実させていくために、住宅・社会資本が支えている様々な活動ができるだけ効率的に行われるように支援することが求められる。
そのため、住宅・社会資本としては利用者サイドに立って活動の支援機能を徹底的に効率化することが必要となる。住宅・社会資本の機能は人々の実質的な諸活動を後方で支え必要な時に必要なだけ必要なサービスを提供する機能(ロジスティクス機能)であるが、今後変化する需要に対して本来のロジスティクス機能を発揮するためには、機能の再編成を図る必要がある。もちろん、ロジスティクス機能の効率化以前に安全性を確保する機能が災害に対して柔軟かつ効率的に働くことが求められる。
このような観点からの住宅・社会資本の機能の効率化について、「範囲の経済」や「連携の経済」を生かした民間企業における効率化の動きを参考にして考えてみる。
「範囲の経済」とは複数の生産物を生み出す際に、それらの間に共通の生産要素を複数の生産過程に汎用させ、総体としての費用を低減させることをいう。住宅・社会資本に関する「範囲の経済」を考える場合、それぞれの社会資本の持つ能力や資源の汎用性を追求し、既存の社会資本に新たな社会的機能を付加することにより社会経済全体の効率化を図ることが可能である。例えば、河川は治水上、利水上重要な社会的機能を果たしてきたが、近年ではこれらに加えて、都市内大河川における河川舟運による物流機能が注目されている。
「連携の経済」とは、広くはネットワークを利用することによって生まれる経済性一般をいう。社会資本が提供するサービスも一連の供給過程の連鎖として考える必要がある。例えば、場所を移動する場合の鉄道と道路といった社会資本の連携や、物流サービスなど社会資本と民間の活動の連携が考えられる。このように一つの結果を形成するためには、供給の連鎖の間の機能の連携が重要であり、社会資本の生み出すサービスに関しても、一連の供給過程の中で関係者と情報を共有して「連携の経済」を追求していくことは今後の社会資本を考える上で重要な視点である。
また、人口減少社会においては、住宅・社会資本が既に整備されたところで人口が徐々に減少するため、利用者と施設のミスマッチが生まれてくる可能性がある。今後の人口減少社会においては、既にある住宅・社会資本を所期の目的と新たな需要対応との調整の中でいかに再構築していくのかも大きな課題となる。
現在、民間企業においても生産要素や組織を再編成し、効率化に向けて質的な転換が行われつつある。住宅・社会資本においても同様に、真に必要とされるものを誰がどのように供給するのが最も合理的かを考えて効率化に向けた質的な転換を図ることが必要である。国・地方公共団体など公共事業の主体も自らの行うべきコアとなる領域を考えて、PFIなどによる民間との連携や公的部門内部での役割分担の見直しなどが必要である。また、民間が収益を生まない生産設備を廃棄するように社会資本においても利用者がなくなり管理コストだけがかかるものは、社会資本の多様性を考慮しつつもその機能の廃止を検討する必要もある。
建設省では、これらの点も踏まえて公共事業における直轄事業の範囲の見直しや公共事業の事後評価システムの確立を行っている。直轄事業の見直しについては、全国的な見地から必要とされる基礎的又は広域的な事業に限定し、それ以外は地方公共団体に委ねることとしている。また、完了後の事業の事後評価システムに関しては、平成11年度中に導入することとしており、施設の利活用状況など事業の必要性や効果の確認、環境への影響の確認等を行うこととしている。
