2 都市の集積による活力の維持と都市の魅力
個人の活動の量的・質的拡大の可能性を考えるに当たって都市の集積は改めて重要な意味を持ってくる。
今後大都市に集中する高齢者がNPO活動等の新たな経済社会活動や深化する交流の主役として活躍していく「場」として都市の集積の意味を再確認することが人口減少社会の活力を生み出すための重要なヒントになるものと考えられる。
将来においても相対的に都市化が進展するが、都市圏の人口自体の絶対数は減少していき、都市人口の持っていた従来の集積密度は小さくなる可能性がある。また、今後の人口減少局面においては、既に居住する人々が点々と減少していくと考えられ、これまでの都市の集積の魅力が徐々に様々な形で減退するおそれがある。
このようにこれからの人口減少社会においては、これまでのような魅力によって現在の都市の集積を維持することは困難になると考えられる。しかしながら、将来においても都市集積の重要性は変わらず、むしろ人口減少とそれに伴う経済社会の変化の中で新しい意味づけを得るようになると考えられる。そのことを、以下の3点から考えてみる。
- (1)重層的なネットワークの母体としての都市の集積
- 会社組織の存在意義が大きく揺らぎ、会社組織から退いた年齢層が支配的になる中で、目的や考え方を共有する人々による様々な小さな集団が創られるようになりつつある。このような協力の関係が社会全体の活力となるためには、諸々の関係の量的質的な密度が高く保たれるとともに活力のポテンシャルを向上させる実践や実験の機会が多い都市という舞台が重要な役割を果たすと考えられる。
- (2)起業の孵卵装置としての都市の集積
- 我が国で都市化が進行する中で、雇用においても生産額においても第3次産業の重要性が増してきた。第3次産業は物ではなく専らサービスを提供するものである。
今後、経済のサービス化が進展していけば、都市の集積の持つ意味はさらに大きくなっていくと思われる。都市の集積が起業の孵卵装置として機能するためには、連携できる多様な業態の集積とそれを支える顧客の集積が必要である。
- (3)国際的活力の受け皿としての都市の集積
- 現在の国際化の流れの中で企業や人の活動範囲も徐々にグローバルなものになってきており、十分にその能力を生かして活躍できる場所が必要である。また、今後の人口減少により我が国の活力が低下すれば、我が国の重要な資本である高い能力を持つ人材が海外へ流出する可能性もある。これを防ぐためには我が国の都市を国際的な活動の基盤としても魅力ある都市にしていく必要がある。
以上、3点から今後の都市の集積の重要性を見てきた。今後都市の集積を維持するためにはこれからの都市の集積の位置付けの変化に対応して、個人の活動の量的・質的拡大の可能性が最大限保証され、知的・文化的なサービスを介して個々人が相互に高めあう関係が構築されるような新たな魅力を創出することが必要になる。
