3 循環型社会の構築と交流の維持拡大
 
(1)循環型社会の構築
 
 人口減少が予測されている我が国においてもそれが直ちに環境負荷の軽減に結び付くわけではなく、環境問題に対応するための技術や社会システムを構築することが急務である。ここでは住宅・社会資本が循環型社会への転換にどのように関わることができるかについて考える。
 住宅・社会資本は時々の社会経済的な需要に出来るだけ的確に対応する形で整備されてきた。その中で住宅・社会資本はそれを利用する人々の行動形式を無意識のうちに規定してきた。例えば、下水道の普及により自らの雑排水や排泄物を迅速かつ跡形もなく遠ざけ衛生や清潔感を満足にさせる一方で自らが環境負荷の原因者であるという認識を遠ざけたりというようなことである。今後はこのような住宅・社会資本の持つ行動規定性を適確に活用し、個々の活動が持続可能なものとなるよう、循環型社会構築のインセンティブ(誘因)を高めていく必要がある。
 また、高い生活水準を維持しつつ循環型社会を構築するためには、都市のコンパクトな集積を大事にしていく必要がある。今後も予想される郊外への人口集積のシフトは、都市全体としての環境負荷をさらに増大させる方向に向かう。コンパクトなまちづくりを通じて日常の交通需要を抑えることにより自動車に過度に依存した生活を回避したり、ゴミ消却熱や下水熱の利用を行うことにより日常生活のエネルギー効率を上げることができると考えられる。国土全体にわたり市街化が相当進んだわが国においても、既成市街地の集積をこれ以上分散させないようにした上で、コンパクトな都市構造と新たなエネルギーや資源の循環軸を基本とした集積の構造を構築する必要がある。
 また、住宅・社会資本をつくる過程においても循環型社会構築への貢献が期待できる。技術的には廃棄物を再生資材として加工できても、需要が小さいため再利用されにくい結果になっているものが相当ある。こうした場合、公共事業の現場でリサイクル材を大量に利用できれば、住宅・社会資本の形成にも役立ち、社会全体のリサイクルの促進にもつながる。こうした取組は、従来のように公共事業の現場から出る廃棄物をなるべく少なくしようという考え方を越えて、社会全体の循環型システムづくりのために公共事業が積極的な役割を果たしていこうとするものである。