- 1) 危機管理対策の確立
- 治水施設の整備による安全度の向上に加え、被害の最小化を図ることを治水事業の本来の使命と位置づけ、施策を推進していく必要がある。
- 2) 災害に強い土地利用への誘導等
- 河川だけでなく、都市、道路、住宅等の幅広い関係部局が連携して災害に強い土地利用への誘導等を含め、災害に強いまちづくりを進めることが重要である。
- 3) 河川情報伝達による減災
- 浸水等に関する過去の被災区域や避難地等についての情報を住民に周知し、洪水や土砂災害時の警戒、避難等が迅速に行えるよう河川情報基盤の整備を行うとともに、洪水時の水防活動の拠点等の整備や水防体制の強化を図るといった対策が課題となっている。マスメディアと連携をとるなど、より一層、わかりやすく、役に立つ災害情報の提供を行う必要がある。
- 4) 壊滅的被害の防止
- 大洪水でも破堤しないスーパー堤防や耐震性向上対策等のハード整備を推進し、壊滅的被害を防止する。
- 5) 抜本的な再度災害防止対策
- 激甚な災害に対し、上下流一体となった治水対策を推進するため、上流部における災害復旧等に伴う流量増に対し、下流部において河川災害復旧等関連緊急事業などを活用し、抜本的な再度災害防止対策を集中的かつ機動的に実施していく。
- 6) 災害弱者関連施設に係わる総合的な土砂災害対策等
- 平成10年は全国46都道府県で1,629件の土砂災害が発生したが、福島県西郷村の救護施設の入所者5名が土石流により死亡するなど高齢者、障害者等の多くの災害弱者が被災しており、災害弱者関連施設に係わる総合的な土砂災害対策が強く求められている。土砂災害を受けるおそれのある災害弱者関連施設の立地条件に関する緊急点検調査を実施した結果、全国の災害弱者関連施設のうち、約14%が危険箇所等に該当することが判明した。
建設省では、災害弱者関連施設を保全対象に含む土砂災害危険箇所を重点的に整備するとともに、災害弱者関連施設の施設管理者に対する緊急点検調査結果の通知、土砂災害危険区域図の作成・公表等を実施することとしている。
(3)渇水ポテンシャルの増大と総合的渇水対策
[1] 水資源の現状
首都圏をはじめ依然水需要は充足されていない。核家族化の進展、水利用機器の普及等を反映し、生活用水の使用量は増加傾向にある上、環境保全など新たな需要も発生している。こうした状況下、水需要のひっ迫している地域を中心に渇水が頻発している。
[2] 渇水に強い社会を構築するための総合的渇水対策
渇水に強い社会の構築のため、水の再利用の推進、節水の促進等水資源を最大限効率的に活用するシステムを社会に組み込むとともに、必要に応じダム建設等の水資源の確保等及び既存水源の効率的運用を積極的に推進することも重要である。
[3] これから社会・経済の展望と水資源開発
今後、総人口の増加の頭打ち等により、これまでのような広域的で急激な水需要の増加は考えにくい状況にある一方で、高齢化の進行や水の健康への影響についての関心の高まりもあり、安全で安定した水に対する要望を一層高めると考えられる。水資源開発については、質の向上に対しても重視する方向に転換することが必要となってきている。
(4)河川環境の保全と創出
[1] 多様性を考慮した河川環境への取り組み
河川の役割は単に治水・利水の機能だけでなく、自然環境や水辺空間が求められるようになっている。こうしたニーズの高まりを踏まえ、水辺環境を整備・保全するとともに、人と自然がふれあえる河川や渓流の整備を促進するため、自然をいかした川を目指した整備等を実施している。
[2] 生物の多様性を考慮した河川環境への取り組み
生物の多様性を考慮した河川環境への取り組みとしては、以下の3点について進めていく。
1) 貴重な動植物種の絶滅を防止するための取り組み
2) 河川水辺の国勢調査の充実
3) 生態系保全環境対策
[3] 水環境の改善への取り組み
安全でおいしい水を確保するため、「水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律」(平成6年3月)に基づき、水道事業者が水道水質基準に適合した水を常時供給できるよう都道府県、河川管理者等による水道原水の水質保全のための事業を実施する。
また、近年、ヒトを含む生物の生殖機能等内分泌系に影響を与える可能性が指摘されている内分泌攪乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)等の新たな水環境問題が顕在化してきている。今後とも、関係省庁の実施する内分泌攪乱化学物質に係わる調査研究の結果も踏まえつつ、環境庁等とも連携して調査を推進する。
(5)地域と河川の関係の再構築
[1] 遠ざかる河川の存在感
近年、貴重な水と緑の空間として人々にうるおいを与えるという河川の役割が過密化した都市を中心に再評価され、河川と地域の関係を取り戻そうとする機運が高まりつつあり、河川と地域の密接な関係を再構築していくことが必要である。
[2] 求められる地域の個性を生かした川づくり
地域の川への関心が再び高まりつつあり、地域の個性を生かした独自性のある川づくりが求められ、地域の意向を反映した川づくり、流域における交流・連携活動の強化、人と川のふれあいの確保、良好な水辺景観の形成、都市における河川の役割の重要性の増大と河川を生かした都市の再構築、すべての人が安心して暮らせる地域的基盤づくりを進めていく。
(6)21世紀の社会と河川
[1] 21世紀に向けた河川行政の取り組み 〜 河川審議会における検討
1) 新たな水循環・国土管理に向けた総合行政の展開〜総合政策委員会
河川審議会は、平成9年6月5日に、建設大臣から「新たな水循環・国土管理に向けた総合行政のあり方について」諮問された。この諮問に対し、河川審議会は、新たな水循環・国土管理に向けた課題として、5つの課題を設定し、総合的な立場から検討する機関として総合政策委員会を、個別の課題について詳細な検討を行う機関として5つの小委員会を設立し、検討を行い、平成11年3月、河川審議会から以下の内容の答申がなされた。
総合政策委員会では、各小委員会の報告を踏まえ、総合的な立場からの検討がなされ、新たな総合行政の展開に向け、「人間社会と水との健全な関わり」を構築するために、
○ 水に関する基本理念の共有
○ 基本理念に基づく総合的な施策の推進及びその体制の確立
○ これらの実効性を担保すべく新たな法制度を確立する
など水に関する総合的な体系を確立することが必要であること。また、危機管理対応型社会を確立すべく、
○ 災害に強い土地利用の誘導
○ 広域防災機構の創設
など新たな施策を展開する必要があることを旨とする報告がとりまとめられた。
2) 流域の健全な水循環系の構築〜水循環小委員会
水循環小委員会では平成10年7月に中間報告が取りまとめられた。
基本的考え方として、
1)) 国土マネージメントに水循環の概念をとりいれること
2)) 河川・流域・社会が一体となって取り組むこと
3)) 圏域毎の課題を踏まえた取り組みを行うこと
の3点を掲げ、具体的には、環境・防災等の多機能な水面の確保、既存水源施設の有効利用、水循環型社会への転換の促進等の事業の進め方をとりまとめた。
3) 総合的な土砂管理の確立〜総合土砂管理小委員会
総合土砂管理小委員会については、平成10年7月に5回にわたる審議を踏まえた小委員会報告がなされた。報告内容は、森林を含む山地部から海岸までの土砂の運動領域を「流砂系」という新しい概念で捉え、総合的な土砂管理の考え方、具体施策をとりまとめている。当面の施策として、土砂管理上問題が顕在化している流砂系において土砂の量及び質に関するモニタリングを組織的・体系的に実施する。その結果に基づき、「土砂を流す砂防」「ダムにおける新たな土砂管理システムの確立」、堆積した土砂を侵食傾向にある河道・海岸に活用する「流砂系内土砂再生化システムの構築」等を実施する。
4) 川に学ぶ社会をめざして〜川に学ぶ小委員会
川に学ぶ小委員会は、「「川に学ぶ」社会を目指して」として平成10年7月に中間報告をまとめた。具体的には、「川に学ぶ」社会の実現のため、「人々の関心を高める魅力ある川」、「川に関連した広範な知識と情報の提供」、「「川に学ぶ」機会の提供」、「川に学ぶ社会に向けて必要とされる主体的・継続的活動」の4つの基本方針が重要であることとしている。
5) 河川の多様な機能を活かした都市の再構築〜都市内河川小委員会
都市内河川小委員会は、今後の都市と河川のあり方、都市内の河川の整備方策等について、平成10年9月に「河川を活かした都市の再構築」として中間報告をまとめた。具体的には、河川と沿川地域を一体的に整備・利用するため、河川を”都市の重要な構成要素”ととらえ、
○ 都市圏のマスタープランである「整備・開発・保全の方針」や「市町村のマスタープラン」等に河川の構想や計画を位置付けること
○ 治水機能に加えて防災機能、空間機能、環境機能を併せ持った都市施設として河川を積極的に都市計画決定すること
○ まちづくりに資する河川の整備を積極的に推進すること
といった施策を推進することとした。
6) 災害発生後の対策も視野に入れた危機管理対策の確立〜危機管理小委員会
危機管理小委員会では、大規模な災害が発生しても、被害を最小限にくい止める危機管理施策が重要であるとの報告をまとめた。具体的には、危機管理施策においては、「責任・役割の明確化」、「あらゆるレベルでの連携の強化」、「情報の開示と共有」、「日常に根ざした危機管理」の4つの基本的視点に基づき危機管理体制の整備、災害に強いまちづくり等具体的な施策を展開していくことが必要であるとした。今後、危機管理対応型社会の確立のため、
○ 災害に強い土地利用への誘導
○ 広域防災機構の創設
○ 地下鉄・地下街等の地下空間における水災害等の新しいタイプの災害への対応
の各課題について引き続き検討するとともに、施策を展開していくことが必要であるとされた。
7) 経済・社会の変化に対応した河川管理体系のあり方〜管理部会
平成10年9月11日に、河川審議会に対し「経済・社会の変化に対応した河川管理体系のあり方について」を諮問し、これを受けて管理部会において、
○ 経済・社会の変化による河川管理上の課題
○ 河川管理における国、都道府県等の役割分担
の観点から検討を進めている。
8) 河川行政における情報化〜河川情報小委員会
平成10年3月31日に、建設大臣は河川審議会に「河川における今後の情報化に向けた施策はいかにあるべきか」について諮問した。これを受け、河川審議会では管理部会に河川情報小委員会を設けて検討し、平成11年3月に小委員会報告をとりまとめた。その概要は、「被害の最小化に向けた情報提供」を進めるために、
1)) 河川に関するデータの一元的管理及び提供体制の確立
2)) 情報の網羅性の確保・わかりやすさの向上・情報提供ルートの多様化
3)) 平常時からの災害情報提供の充実
4)) 防災計画における河川情報の収集・提供に関する内容の充実
等を促進すること。また、「地域と河川の関係を再構築するための情報提供」を進めるため、
1)) 環境、歴史・文化に関する情報の充実
2)) 画像情報や体験型の情報提供による河川に対する住民の関心の喚起
3)) 地域の住民が主体的に河川に関わるための支援
等を進めるべきとされている。
9) 川における伝統技術の活用〜河川伝統技術小委員会
平成10年6月2日に、河川審議会に「川における伝統技術の活用はいかにあるべきか」について諮問し、これを受け平成10年10月28日の管理部会において、総合的な立場から検討する機関として河川伝統技術小委員会が設置され検討を進めている。
10) 今後の水利行政のあり方〜水利調整部会
水利調整部会において、我が国の水利使用の変遷を踏まえつつ、今後の水利行政のあり方に係る基本的な考え方を提言するため、検討の視点及び当面実施すべき施策について検討を行った。その結果、水系単位で河川管理者や利水者等からなる「流域水利用協議会」を設置して、河川関係者間に水系全体の観点に基づいた共通の問題意識を醸成し、各河川や地域の特性等を水利使用のルールに反映させていくこと及び水利使用許可手続きの迅速化等を内容とする提言を部会報告として取りまとめた。平成11年3月25日に、この部会報告を「今後の水利行政のあり方について」として建設大臣に対し提言を行った。
11) 河川敷地の占用許可制度の見直し〜管理部会
平成9年の河川法改正に対応した河川敷地の占用許可制度の見直しについて、平成10年3月31日に河川審議会に諮問した。河川審議会では管理部会において検討し、平成11年3月25日に答申された。従来の占用許可準則からの主な改正点は、
○ 占用許可申請について、地元市町村等の意見を聴くこととしたこと
○ 占用主体に、市街地開発事業を行う者及び当該事業と一体となって行う関連事業に係る施設の整備を行う者並びに水面利用調整協議会等で認められた船舶係留施設等の整備を行う者を追加したこと
○ 占用施設に、遊歩道、階段等の親水施設、堤防の天端若しくは裏小段又は地下に設置する道路等を追加したこと
○ 地元市町村が占用許可後に河川敷地の具体的利用方法を決定することができる「包括占用許可」の制度を創設したこと
である。
[2] 新たな河川の整備計画制度の推進
河川法改正による河川の整備計画制度(河川整備基本方針と河川整備計画)を推進する。
[3] 河川舟運の再構築
交通渋滞の緩和や環境負荷の軽減、災害時の緊急輸送手段等の観点から、河川舟運の再構築を図るため、舟運が可能となる河川の整備を推進する。平成10年6月には各河川管理者あて事務次官通達を出し、船舶が守るべき通航の方法を定めることとし、河川舟運の促進を図るとともに適正な河川管理を推進することとした。
[4] 技術開発
平成11年1月に「河川技術検討会」を設置し、新たな河川技術開発五箇年計画の策定方針を含め、今後の河川技術開発の方向性を検討している。
(7)水・土砂に関する国際的取組
[1] 水に関する国際的取組
深刻化する世界的な水問題に、新しい枠組みで対処する動きが活発化し、WWC(World Water Council)、GWP(Global Water Partnership)等が組織され、WWCにおいて、21世紀の世界の水の長期ビジョンの策定が進められている。
[2] 土砂災害に関する国際的取組
インドネシア、ネパール、イタリア、フィリピン、中南米(ホンジュラス、ニカラグア等)、イラン等に土砂災害・火山災害対策を目的とした専門家・調査団の派遣を行っている。
2.平成10年度、11年度の主要施策
(1)11年度主要施策の概要
[1] 平成11年度の基本方針
抜本的な再度災害防止対策を集中的・機動的に実施するための制度の創設・拡充を図るとともに、緊急性の高い防災対策を重点的に実施する。
[2] 主要施策
1) 河川災害復旧等関連緊急事業の創設
2) 災害復旧事業の拡充
3) 災害関連緊急砂防事業の拡充
4) 河川激甚災害対策特別緊急事業の拡充
5) 床上浸水対策特別緊急事業の拡充
6) 沖ノ鳥島の直轄管理
[3] 海岸法の改正
「海岸法の一部を改正する法律」が平成11年5月28日公布された。概要は以下のとおり。
1) 「海岸環境の整備と保全」及び「公衆の海岸の適正な利用」の海岸の管理の内容への位置付け
2) 一般公共海岸区域の創設等
3) 海岸管理のための計画制度の見直し
4) 海岸の管理における市町村参画の推進
5) 国による直轄管理制度の導入
6) 海岸保全区域等内における海岸の適正な保全のための措置の創設
7) 海岸保全施設の定義及び技術上の基準の見直し
(2)事業の効率的・効果的実施に向けた取り組み
[1] 事業の効果的実施のために
事業の効率的実施のため、以下の3点などの取組みを引き続き推進する。
1) 事業の重点化・効率化
2) 省庁連携の強化
3) コスト縮減
[2] 事業の透明性の確保
平成9年より建設省所管ダム事業において、来年度の概算要求前に全国のダム事業の必要性、緊急性、地元状況等について総点検を行っており、管理中のダムについてもダムの効果や影響等を適切に把握するため、平成8年度から「ダム等管理フォローアップ制度」を試行してきている。また、「建設省所管公共事業の再評価実施要領」に基づき、各事業ごとに評価項目を設定し、必要に応じて関係者と事前に調整を図り、再評価を実施している。新規事業箇所については、「治水経済調査要綱」等に基づき費用対効果分析等により、事業の緊急性・必要性について、総合的に評価を実施してきたところである。
(3)所管事業長期計画の推進
第9次治水事業七箇年計画、第4次急傾斜地崩壊対策事業五箇年計画、第6次海岸事業七箇年計画を推進する。
また、平成10年度、11年度の主要施策として以下の施策を行っている。
(4)信頼感ある安全で安心できる国土の形成
(5)自然と調和した健康な暮らしと健全な環境を創出する治水事業等
(6)地域との連携による川づくり
(7)個性あふれる活力ある地域社会を形成する治水事業
(8)防災体制の拡充
(9)河川管理等の充実
