(建設省所管公共施設にかかる将来の維持・更新投資の推計)
将来生じる社会資本ストックの維持・更新の需要をみるため、ここでは建設省所管公共投資総額が一定の伸びで将来にわたり推移するとした仮定をおいて、新規投資額、維持投資額、更新投資額及び災害復旧投資額の割合がどのように変化していくのか、一定のモデル(
脚注参照)による推計を試みた(図表1-4-22)。
〈推計モデルの説明〉
・1995年までは、事業費や投資額は実績額であり、経済企画庁「日本の社会資本」(平成7年)による。以下、「過去のストック額」とは1995年までの実績額をいう。また、推計モデルは1996年(平成8年)以降を対象とする。
・各投資額については、事業費から用地・補償費を除き、建設工事費デフレータで実質化する(1990年度(平成2年度)基準)。以下、事業費や投資額は実質額を示す。
・モデルの対象とした事業は以下のとおりである。

・建設省所管公共投資総額は、対前年伸び率をケース1:-1%、ケース2:0%、ケース3:1%と設定し、将来にわたり一定の値で推移するものとする。
・維持投資額は、それぞれの事業部門ごとに、過去のストック額と維持投資額との回帰分析により推計式を出し、その推計式に基づいてストック額に応じた維持投資額を推計した。なお、ストック額は前年度までのストック額に当該年度の新規投資額を加えて算出する。
・更新投資額は部門別に以下のとおりの仮定に基づく。

・災害復旧投資額は、それぞれの社会資本の部門ごとに、過去のストック額と災害復旧投資額との回帰分析により推計式を出し、その推計式に基づいてストック額に応じた災害復旧投資額を推計した。また、災害によるストックの損壊は、災害復旧により原型復旧される。
・新規投資額は、当該年度の総投資額から維持費・更新費・災害復旧費を控除した分とする。

・ケース1 総投資額が毎年-1%の伸びで推移する場合
総投資額が対前年度比-1%で推移する場合は、過去のストックに対する維持・更新投資額・災害復旧投資額の増大により、総投資額に占めるこれら投資額の割合が増加する。2025年における維持投資額の割合は37%、更新費の割合は14%となる(合計51%)。
・ケース2 総投資額が毎年0%の伸びで推移する場合
総投資額が対前年度と同等で推移する場合もケース1と同様に、過去のストックに対する維持投資額・更新投資額・災害復旧投資額の増大により、総投資額に占めるこれら投資額の割合が増加する。2025年における維持投資額の割合は31%、更新投資額の割合は11%となる(合計42%)。
・ケース3 総投資額が毎年1%の伸びで推移する場合
総投資額が対前年度比1%で推移する場合も、過去のストックに対する維持投資額・更新投資額・災害復旧投資額の増大により、総投資額に占めるこれら投資額の割合が増加する。2025年における維持費の割合は26%、更新費の割合は8%となる(合計34%)。
この推計モデルによると、ケース1、2、3のいずれの場合においても、将来の公共投資の内容としては、構築してきたストック量の増大に併せて維持・更新工事がこれまでになく大きな部分を占めることが分かる。1995年時点で、総投資額に占める維持投資額・更新投資額の割合は、それぞれ15%、2%の計17%であったことと比較すると、その拡大が著しいことが分かる。
このため、公共事業の内容としては、新規投資を中心に新たな社会資本を提供する視点ではなく、既に築いた社会資本ストックを長期間にわたって使用する視点からの維持・更新による社会資本整備が中心となることに留意しなければならない。
