(求められる国際的な魅力)

 次に、このような物流・交通機能の効率化により海外からの受け入れ体制が改善されていくとしても、本来的には我が国が海外の人や企業を誘引する競争優位なコンテンツ(内容)を有することが重要であるという観点から、活力ある国土を形成するための「海外からの交流人口の拡大」策について考えたい。
 平成11年に我が国を訪れた外国人旅行者は約444万人となっており、長期的に見ると増加傾向にあるが、我が国の海外旅行者数の約4分の1にすぎず(図表2-1-11(a))、また、世界各国の外国人旅行者受入者数と比較すると我が国は世界で32位となっており、国際的に見て依然として低水準である(図表2-1-11(b))。こうした統計データは、現在いかに我が国の「魅力」及びそれをアピールする努力が不足しているかを示すものといえよう。しかし、逆に言えば、この分野の成長による我が国の活力・競争力の増大に対する期待は大きいものであり、今後官民一体となった取組みが求められている。
 我が国を訪れる目的は観光やビジネスなど様々であるが、観光に関しては、従来の有名な名所や史跡を見るだけでなく、芸術文化、アミューズメント施設、買い物、グルメ、居住者との交流など、多様な都市の魅力を楽しむ「都市観光」による交流の拡大の可能性がある。例えば、東京商工会議所が外国人を対象に「東京の魅力」の所在を尋ねた調査によれば、「テーマパーク」「イベント・行事」「最新スポット」や「西洋建築」などについて魅力を感じている人は少ない一方で、「伝統文化」「新旧の混在」「古い街並み」「皇居とお濠」、さらには「人情(ホスピタリティ、正直さ・親切さ)」といった日本や東京の個性・文化・景観に魅力を感じている人は多くなっており、必ずしも新奇性のある施設や名所、イベント等のみが観光資源になるものではないと言えよう(図表2-1-12)。つまり、日本の大都市圏の国際的魅力として、外国人が見たい、体験したいものと、日本人の望む利便・サービスとにミスマッチの存在している可能性もある。したがって、このような1)「日本の個性や歴史・文化的視点を意識したまちづくりや景観づくり」、さらには2)「おもてなしの心(ホスピタリティ)に溢れた接客精神の醸成」を各都市・地域が行うことが観光資源を掘り起こすことになり、併せて3)「交流・観光手段である道路や交通機関の利便性を高める」ことが、交流・観光対象としての我が国の潜在的「魅力」を引き出し、向上させる基本的な条件であると考えられる。このことは、都市、非都市を問わず共通の課題である。
 このような「観光」以外にも、大規模な国際会議や展示会などの開催による交流拡大も有効な手段となり得る。都市別国際会議開催件数を見ると、我が国では最も多い東京でさえ26位という状況であり、先進国では複数の都市が上位に入っていることや同じアジアのシンガポールに大きく離されていることから見て、今後、国際会議等の誘致に向けた一層の努力が求められる(図表2-1-13)。このシンガポールでは、政府観光局の主導の下、大規模な国際会議、見本市、展示会などを誘致する「MICE(ミーティング、インセンティブ、コンベンション、イベント)」と呼ばれる新たな産業が推進されており、政府は大型イベント会場の建設を進める一方で、ホテルなど関連企業の協賛組織をつくりMICE関連客に対するサービスの向上を図っている。
 こうした国際交流を戦略的に推進し国際競争力を確保しようという動きが我が国においても見られないわけではない。
 地理的、歴史的にアジアとの関係が深い九州では、経済的にもアジアとの一体化が進んでおり、アジアとの交流を拡大することが九州経済の活性化にとって不可欠となっている(図表2-1-14(a))。このような認識の下、九州各地域の国際観光客の誘致努力が見られるほか、九州経済の拠点である福岡市では、1990年代以降国際コンベンションの誘致やその受け皿となるホテル等の整備により国際交流拠点としての機能を急速に充実させてきている(図表2-1-14(b))。また、アジアや本州と九州の結節点である北九州市では、国際的な物流拠点都市の形成を目指し、港湾、空港、道路などの物流基盤の整備が行われているほか、学術・研究都市構想に基づく海外の研究所の誘致や、工場跡地を活用しリサイクル施設の集積を進めるエコタウン事業を推進している。
 また、九州が「テーマパーク・アイランド」をアピールすることによってアジアからの集客に成功した一方で、北海道は「ヨーロッパ風リゾート」というイメージを打ち出すことによって集客を図った結果、現在では、アジアにはあまり見られない山岳リゾート滞在型観光地として人気を博している(図表2-1-15)。

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