(コスト競争力・生産性向上の源泉となる人材 〜現場の基幹技能者の育成〜)
技能者の中でも、施工現場での要として中核的な役割が期待されるのが「基幹技能者」であり、施工現場において、長年の経験を基に習熟した技能を発揮するばかりではなく、「仕事の段取り、とりまとめ」をはじめ技能者集団の作業管理・関連業種との調整・元請等への最適な施工方法の提案などの役割を担う、生産性向上のための中心的役割を担う層(専門工事における現代の棟梁)の確保・育成が不可欠である。
建設業法上は、工事現場の技術上の管理については、元請や下請に置かれるべき必置資格である監理技術者や主任技術者の資格要件(主に施工管理技士等の国家資格、学歴、実務経験年数等)だけを要求している。
しかし、建設省としては、下請工事が専門化し、多様な業種・職種に細分化している現実から、民間による業種・職種ごとの職長クラスを対象にした施工管理に関する専門的な民間資格の創設や研修を支援してきた。
これは、深刻な人手不足の中で、下請工事が細分化・専門化するとともにその責任ある施工が求められたところ、現場の専門的な施工管理を行う人材に対する直接の評価制度がなく、また、施工管理技士のように業種大括りの国家資格だけでは、下請の専門的な業種・職種の技能者を取りまとめる職長クラスの施工管理能力を評価あるいは向上させることが難しくなったからである(例えば建築工事をとっても、現在制度化されている国家資格は「建築施工管理技士」のみであるのに対し、建築系の業種・職種は大工、鳶、基礎、鉄筋、瓦、左官、塗装、防水、天井、床など多岐にわたっている。)。
このため、建設省としては、専門工事の各業界に、業種によって職長・班長などと業種によって様々に呼ばれている施工管理の担当者の組織的な育成に自主的に取り組んでもらうことが不可欠と考え、特に労働者本人の資質向上と職業倫理への動機付け(モチベーション)が働くキャリア開発の根幹システムとして支援してきた。現在、業界団体ごとに作成した基幹技能者育成のための「技能開発計画」を基に基幹技能者に係る民間資格が整備され、基幹技能者が誕生してきている。建設産業の現場の品質確保と労働生産性の向上の基本はこうした「ひとづくり」である(図表2-3-9)。
