(4)農山漁村の総合的な振興の推進
イ 農山漁村の総合的な振興の必要性
農山漁村では、農家等の人口の減少、混住化が進んでいる。また、農林業を始めとする地域の産業経営の厳しさ、限られた就職先、急速な過疎・高齢化の進展等により、農山漁村の活力が低下している。特に、人口減少が進む地域では、コミュニティの存立自体が危ぶまれている。なお、災害危険箇所を多く抱える山間部などの過疎地域では、全国に比較しインフラ整備が依然として遅れている。
こうした状況を踏まえ、幅広い観点から総合的に農山漁村を振興する必要があり、自然、歴史、文化、景観等の地域資源を活用し、地域の情報を発信するとともに、農山漁村の有する豊かな自然環境との調和を図りつつ、広く国民に開かれた地域づくりの取組みを推進するなど個性的で魅力ある地域づくりを進める必要がある。また、農林水産業の振興はもとより、観光など多様な地域における産業の振興を図る必要がある。併せて、生活環境の向上のため、防災施設、交通・情報通信施設、上下水道、医療福祉施設、教育施設、住宅、商業施設等の生活基盤的施設の整備による生活支持機能の向上を図る必要がある。
その際、少子・高齢化の一層の進展や厳しい財政状況に鑑み、一つの市町村では対応できない諸課題が増加し、すべての施設をフルセットで整備することは困難であり、非効率であることを踏まえ、地域の共通の課題に対し、複数の市町村が交通・情報通信のネットワーク整備を通じて、広域的に連携・機能分担を図りつつ施設整備を行うなど効率的、効果的な地域づくりを進める必要がある。
また、広域交流ネットワークの形成を通して、広域的な観点から農山漁村と都市との連携・交流を促進することにより、より高度な都市的サービスの享受等を容易にするとともに、都市部の人々にとっても魅力ある農山漁村の地域資源の活用等を促進する必要がある。
さらに、農山漁村の自立的な発展を図るためには、地域住民が誇り・意欲を持って自主的な取組みを展開することが重要であり、地域住民、NPO、民間等多様な主体の参加と連携による個性ある地域づくりを行政とのパートナーシップのもと推進することが重要である。
なお、行政の支援施策については、地域の取組状況を鑑み、事業の効果を適正に評価しつつ、重点的、効率的に実施する必要がある。また、関係省庁が連携し総合的に進めていくことが必要であるとともに、国、都道府県、市町村の役割分担を明確にすることが重要である。
ロ 農山漁村の総合的な振興のための施策
1) 計画的土地利用の推進
土地利用の状況等からみて、良好な営農条件及び居住環境の確保を図る必要がある地域においては、従来より農業上の土地利用とその他の土地利用の適正な区分を行い、良好な居住環境の確保を推進してきたところである。今後とも、集落地域整備法に基づく集落地区計画や、市街化調整区域における地区計画等の策定を引き続き推進し、農林漁業との健全な調和を図りつつ、都市的土地利用の整序を図ることにより、適正かつ合理的な土地利用の確保を図る。
2) 多様な産業の振興
農林水産業を始めとした多様な産業の振興に寄与し、地方部の経済・社会を支えるのに不可欠な基盤として、市町村道から国土構造の骨格を形成する高規格幹線道路に至る道路網を計画的に整備する。また、交通条件が極めて悪く、産業の開発が十分に行われていない山間・奥地等の地域において、産業の総合的な基盤となる奥地等産業開発道路の整備を推進する。
3) 生活環境の整備
イ)安全で安心できる地域づくり
地域の社会経済の発展を支え、安全で安心できる生活の確保を図るため、治水対策、土砂災害対策、代替性を考慮した道路等のネットワークの構築、道路防災対策等を推進する。また、除雪等の冬期交通確保対策を推進する。
ロ)地域の存立基盤や生活支持機能の確保に資する地域づくり
地方部では生活環境基盤が確保されず、過疎化・高齢化の進行など地域の活力が減退し、大きな課題となっている。また、生活するのに最低限必要な教育機能、文化機能、医療福祉機能、交通・情報通信機能等の生活支持機能も不足している等の問題があることから、住んでみたいとする人々の意欲を減退させている。このため、地域の選択による地域連携により、複数市町村が公共公益施設の共同整備・共同利用を図り、地域において多様な都市的・文化的サービスの享受を可能とするとともに、定住環境と活力ある自立的圏域を構築するための交通基盤等の整備を推進する。
ハ)地方定住や地域活性化に資する住宅・宅地供給
UJIターン、田園居住等による地方定住の促進を図るため、良好な居住環境を確保し、地域の文化、景観を含む地域資源を活かしながら、魅力と特色を備えた住宅・宅地の供給を着実に促進する。
ニ)快適な暮らしを支える質の高い生活環境の創出
都市的サービスの享受が可能な快適な暮らしを実現するために、道路や下水道等基礎的インフラの整備を図るとともに、地域住民に親しまれ、生活空間の快適性を向上する道路、河川、公園等の公共施設の整備を推進する。
ホ)自然、歴史、文化など地域特性を活かした地域整備
豊かな景観、自然、歴史、文化などの地域固有の資源を活かし、地域の特色、個性を引き出したゆとりや豊かさを実感できる魅力ある地域づくりを支援するため、道路、河川、公園等の基盤整備を推進する。
4) 都市と農山漁村との交流の促進
イ)広域交流ネットワークの整備の推進
広域的交流を支援する循環型ネットワークの構築に重点を置いた整備を進めるため、国土空間の有効利用を図り、地域ブロックの自主的な発展を支える高規格幹線道路や地域高規格道路など規格の高い幹線道路の整備を推進する。
ロ)都市と農山漁村の連携を促進する田園居住の推進
マルチハビテーション、在宅勤務・SOHOなど新しい居住形態への関心の高まりを踏まえ、豊かな自然的環境を有する地域でゆとりある生活を過ごせる田園居住を実現するための住宅・宅地供給を推進する。
ハ)都市部の人々にとっても魅力ある地域づくり
豊かな自然環境・文化・歴史等を有する農山漁村は、国民にとって安らぎの場や学習・体験の場であり、地域固有の資源を活かした個性ある地域づくりにより、都市部の人々を魅了するポテンシャルがある。このような魅力を高める地域づくりを行い、都市住民との交流を増大させるための道路、河川、公園等の整備を推進する。