(5)地域整備・活性化のための各種施策の推進
イ アクションプログラムに基づく総合的・計画的な地域づくりの推進
1) 地方拠点都市地域の整備の推進
地方の活性化の拠点となる地方拠点都市地域において、基本計画を踏まえ、所管事業に係る国及び都道府県の支援策についてアクションプログラムを策定し、総合的・計画的な住宅・社会資本整備を推進している。85の地方拠点都市地域のうち、平成5〜11年度の間に68地域のアクションプログラムを策定した。同アクションプログラムは、主要な公共施設の整備スケジュール、事業実施後の地域の将来像等を内容とし、地方建設局、都道府県等が協議会を設置して策定するものであり、適宜フォローアップを行い、事業のタイムスケジュールの見直しや事業箇所の追加等を行う。
2) 田園地域総合整備の推進
田園地域は、概して、若年層の流出、高齢化の急速な進展といった問題を抱えているが、その一方で、都市地域にはない多様な特性があり、その特性の活用が望まれている。これを踏まえ、地域の主体性と創意工夫を生かした明確な地域経営戦略の下に建設省所管事業の総合的・計画的な実施を図ることとし、平成6年度から田園地域総合整備事業を推進している。平成9年度までに50地域に対し実施地域の指定が行われ、現在32地域の整備計画が作成・公表されている。
3) 21世紀活力圏創造事業の推進
経済のグローバル化の急進展等による産業の空洞化や、商業不振等による都心空洞化などにより、地域経済やコミュニティの疲弊が懸念されている。このようななか、地域の活力と創造性を高めるため、21世紀に向けて活力ある地域経済・社会基盤を形成する必要がある。そこで、工業・商業・業務機能等の集積があり、かつ、地域の一体性が確保される圏域を対象として、地方公共団体が策定する計画に基づき、通商産業省及び建設省所管の各種施策を重点的・計画的に実施するものである。平成7年度に21世紀活力圏創造事業計画推進要綱を両省で共同して定め、同要綱に基づき、これまでに27圏域の基本計画を認定しており、関連公共施設の整備等の支援施策を総合的・計画的に進めている。
ロ 地域の発展を牽引する地方拠点の整備
振興拠点地域の整備
業務機能、中枢管理機能等が過度に集中している地域から機能の分散を図り、地方の振興開発と大都市地域の秩序ある整備を推進し、多極分散型国土の形成を促進するため、地方において特色ある産業、文化等の機能の集積する拠点を整備すること等を目的として、昭和63年、「多極分散型国土形成促進法」を公布、施行した。同法に基づき、平成8年度までに6地域、平成9年度に1地域の振興拠点地域基本構想を承認しており、所管公共施設の計画的整備や税制、融資等の支援措置を講じている。
ハ 産業構造の新たな展開に対応した地域づくり
1) 特定産業集積の活性化の支援
産業空洞化の進展により、我が国の基幹産業を支えてきた「ものづくり」の基盤となる地域の産業集積等の崩壊が懸念されているなかで、地域経済の発展を支えるため、関係省庁が協調して地域の産業集積に係る技術の高度化、新分野への進出等を促進することにより産業集積の活性化を図ることを目的として、平成9年、「特定産業集積の活性化に関する臨時措置法」を公布、施行した。同法に基づき、これまでに25地域の基盤的技術産業集積活性化計画を承認し、特定基盤的技術の高度化等に資する施設の整備等と併せて、物流コストの低減や移動の効率化等に配慮した道路整備等を重点的かつ効率的に進めている。
2) 高度技術産業集積の活性化の支援
活力ある経済社会を構築していくことを目的として、平成11年2月に新事業創出促進法を施行した。同法に基づき、個人による創業及び新たに企業を設立して行う事業を直接支援するとともに、中小企業者の新技術を利用した事業活動を促進するための措置並びに地域の産業資源を有効に活用して地域産業の自立的発展を促す事業環境を整備する措置が講じられることになる。都道府県等において策定する高度技術産業集積活性化計画について、国は、計画の達成に資するために必要な所管公共施設の整備推進等の支援措置を講じていく。
なお、これまでテクノポリス法、頭脳立地法により形成されてきた産業集積を、今後は新事業創出の苗床として積極的に活用すべく、両法は廃止し、新事業創出促進法に発展的に移行した。両法によるテクノポリス開発計画(26地域)及び頭脳立地集積促進計画(26地域)については、平成17年3月31日まで有効とする経過措置を設けており、引き続き所管公共施設の整備推進等の支援を講じる。
ニ 余暇活動の増大及び健康の増進に対応した地域づくり
1) 総合保養地域の整備
ゆとりある国民生活の実現と地域の振興を図ることを目的として、昭和62年、「総合保養地域整備法」を公布、施行した。同法に基づき、これまでに42地域の基本構想を承認し、所管公共事業の重点的実施や税制等の支援措置を講じている。
2) コースタル・コミュニティ・ゾーンの整備
多様な機能を備えた海浜空間の整備に対する要請が高まってきたことを受け、昭和62年度から、地域の特性を十分活かしつつ所管公共施設の整備を総合的・計画的に行うことにより、地域住民が海と親しみ、集い憩える場を創出するため、コースタル・コミュニティ・ゾーンの整備を推進しており、これまでに41海岸の計画を認定した。
3) 海と緑の健康地域づくり(健康海岸)の推進
厚生省が指定する健康文化都市と連携して、高齢者や障害者でも海岸利用が容易にできる緩傾斜護岸や遊歩道の整備、砂浜の保全・復元等を図ることにより、海辺の自然を活用した健康増進のために利用しやすい海岸づくりを推進している。平成11年度までに11ヶ所を指定した。
ホ 自然・歴史・文化を活かした地域づくり
文化財を活かしたモデル地域づくりの推進
文化財は我が国の歴史・文化を正しく理解する上で欠かせない国民共有の財産であると同時に、それぞれの地域の歴史・文化を今日に伝える貴重な地域資源の一つであることから、文化庁と建設省は連携・協力し、文化財を活かした地域づくりをモデル的に実施することにより、個性的で魅力ある地域づくりを推進している。これまでに10地域をモデル地域として共同選定した。
ヘ 地域整備・活性化のためのソフト支援施策
1) 手づくり郷土賞
昭和61年度から、地域の個性、魅力を創出している各種の良質な住宅・社会資本を広く紹介することにより、個性的な地域づくりの一助とする「手づくり郷土賞」を実施している。平成11年度は32件を選定した。
2) REPIS(地域整備情報システム)
地域づくりに必要な地域整備プロジェクト、地域の各種統計データ、地域整備に関する施策などの情報を収集し、パソコンシステム、書籍等の情報メディアを活用して総合的・効率的に提供するシステム─REPIS─を開発し、地域整備の取組みに対する支援を行っており、さらにその充実を図る。
ト 特定地域の開発整備
1) 大阪湾臨海地域の開発整備
大阪湾臨海地域について、世界都市にふさわしい機能と住民の良好な居住環境等を備えた地域として整備等を促進することにより、地域における活力の向上を図り、もって東京圏への諸機能の一極集中の是正並びに世界及び我が国の経済、文化等の発展に寄与することを目的として、平成4年12月大阪湾臨海地域開発整備法が公布、施行された。同法に基づき、平成9年度までに12地域、平成10年度には1地域の整備計画を承認した。建設省では、平成9年度末に設置された促進協議会等を通じ関係機関と連携を図りつつ、整備計画を達成するために必要な公共施設の整備を推進している。
2) 関西文化学術研究都市の建設
関西文化学術研究都市は、近畿圏における豊かな文化・学術・研究の蓄積をいかし、21世紀に向け創造的かつ国際的、学際的、業際的な新たな展開の拠点形成を目指す総合的なプロジェクトである。昭和62年に制定された「関西文化学術研究都市建設促進法」に基づき定められた建設計画を踏まえ、地元関係府県等と調整を図りながら、関連する所管事業の重点的実施に努めている。
チ 新しい観光を実現する地域づくり
建設省では、従来より、地域間交流の増進とそれによる地域の振興を目的として、コースタル・コミュニティ・ゾーンの整備など観光・文化等の地域資源を活かした地域づくりを関連公共施設の重点的な整備を行うことにより支援している。しかしながら、依然として、観光都市等において、交通渋滞、街並み整備の遅れ等の課題が指摘されており、例えば、観光交通のスムーズな処理を行うための道路・駐車場等の整備のあり方、河川や海岸の環境整備事業と地域の観光資源との連携方策、地域住民と観光客の双方にとって快適性の向上に繋がる街並みの整備のあり方など、改めて公共施設の整備をいかに観光振興に活かしていくか検討を進めていくこととしている。