(7)21世紀の世界の水ビジョン
イ 世界の水ビジョン
21世紀は、人口増加や土地利用の変化に水不足、洪水、水質汚染等、世界的に様々な水についての問題が深刻化すると言われている。これらの水問題を解決するために、WWC(World Water Council)が設立された。
このWWCでは、21世紀に向けた世界水委員会を発足させ、21世紀における世界水ビジョンの策定が進められてきた。このビジョンは、2000年3月にオランダ・ハーグで開催された第2回世界水フォーラムで発表され、また、閣僚級会議では閣僚宣言が採択された。採択された宣言文では、地球上の多様な要求や状況を踏まえ、共通の目標として21世紀における水のセキュリティが掲げられ、その実現のために統合的な水マネジメントが提唱された。国連や世界銀行など国際金融機関に対しても政策や融資を水の安全保障の観点から見直すように求めている。
ビジョンによると、世界で60億人のうち5人に1人が安全で生活に必要な水を確保できず、毎年300万から400万人が水が原因の病気で死亡し、穀物の需要が2025年までに2000年よりも30〜40%増えると予想されている。このため2025年までに水不足に陥っている人の割合の半減や農業生産性の引き上げなどに加え、国際河川・湖沼での各国の協力体制をつくり、水資源を各国で協力して管理する協定をつくるなどの目標を示している(図2-VIII-12)。
ロ 水に関する国際的取組み
現在、韓国、中国、フランスとの間で科学技術協力協定に基づく二国間会議を開催しており、両国間の河川やダム等に関する技術交流、意見交換等を行い、両国の河川やダム技術の向上に資している。さらに今年度からは新たに米国との間に二国間会議を開始し、第1回目を日本で開催する予定である。
また、インドネシア、マレイシア、フィリピン等の東南アジア諸国及びイラン、中国、ヴェネズエラ等に河川計画、水資源開発を目的とした専門家の派遣を行っている。フィリピンについては、国際協力事業団を通じて平成2年に土石流発生監視システムの設置等の技術協力を行った。平成11年度からは治水・砂防分野の技術者の育成、技術力の向上を図ることを目的とした技術協力を開始した。
中国については、平成5年度から効率的な洪水予測自動化システムの確立と洪水予報官の養成を目的とする技術協力を行っており、平成12年1月には本システムの運用が開始された。また平成12年7月からは河川行政に関する人材育成のための指導員を研修する機関を設立するための新たなプロジェクトが開始された。
