(2)国土情報インフラの整備
イ 測地基準点体系の整備と地震調査の推進
1) 世界測地系による高精度な測地基準点成果
現在、我が国で使用されている日本測地系は、明治時代に決められた我が国独自のものであり、世界的な人工衛星観測に基づいた世界測地系とは異なったものである。このため、急速に普及しているGPSやGISに用いられる位置の基準として、より高精度で世界共通に使うことができる世界測地系への移行と測地基準点成果の提供を推進する。
2) 測地基準点体系の整備
全国に配置した電子基準点とVLBI観測点を骨格とし、主要な三角点、水準点で構成した測地基準点体系の維持・管理を行うとともに、電子基準点を用いたリアルタイム測位システムの構築を推進し、位置決定が必要な様々な分野への要求に応える。
3) 観測強化地域等における地殻変動観測
測地学審議会が建議した、地震予知のための新たな観測研究計画及び第6次火山噴火予知計画の主旨に沿い、観測強化地域等における地殻変動観測・調査及び火山変動測量を実施している。
観測強化地域等における地殻変動観測として、電子基準点によるリアルタイムな監視を実施するとともに、精密測地網測量を高密度・短周期に実施する。
さらに、GPS連続観測データ等の総合解析技術の開発を推進し、地殻活動の予測分析等、地震防災対策に資する。
ロ 国土に関する基本情報の調査と地形図等の整備・提供の推進
1) 基本情報の調査
基本情報の調査では、国土の利用及び保全に関する各種計画及び事業実施のための基礎資料として、国土の現況を正確に把握する基礎的な情報源である空中写真を周期的・体系的に整備している。空中写真撮影は、平野部及びその周辺の主要な地域を対象に3万分の1空中写真を撮影し、2万5千分の1地形図の更新に必要な地域については、4万分の1空中写真を撮影する。さらに、大規模災害時には、最新の空中写真の撮影及び地形図の作成を行い、迅速な情報提供を行う。
また、地方公共団体と連携して道路、河川、地名、行政界等の国土に関する最新情報の調査・収集を行うとともに、多様な利用にも迅速な対応が可能となるための、規格・精度を統一したデータベースの作成・更新を行う。
さらに、地方公共団体、一般から募集したマップモニター等からもきめ細かな地理情報の収集を行う。
2) 地形図及び数値情報の整備と提供
国土の最新で正確な現況情報に対するニーズに応えるため、2万5千分の1地形図をはじめとする各種基本図を早期に修正する。併せて、基本図の数値地図を計画的に整備・更新を行う。
2万5千分の1地形図は、我が国全域を覆う最大縮尺の基本図である。このため2万5千分の1地形図を土地利用等の変化に応じて更新・刊行し、広範な利用に供する。5万分の1地形図、20万分の1地勢図についても同様に整備する。
1万分の1地形図は、主要な都市地域について、都市の実態を詳細に表現した都市基本図として整備を行う。
3) GISの普及及び基盤情報の整備
高度情報通信社会が進展する中、GISは、今後、行政施策の策定における活用を始め、社会経済活動の広範な分野で極めて大きな役割を果たすものと期待されている。このGISの普及に不可欠な国土の基礎的な地理情報のデータ整備として、都市計画区域を対象とする2,500レベル空間データ基盤の整備を平成12年度中に完了させる。
また、経済新生特別枠を活用して、都市計画区域以外の全国を対象とする25,000レベルGIS基盤情報の整備に着手し、早期に全国整備を完了させる。
併せて、地方公共団体や民間などが円滑にGISの利用、導入を行えるようセミナー等を全国で開催するほか、「アジア太平洋GIS基盤常置委員会及び理事会」「ISO/TC211総会」等の国際会議に出席し、GISの普及促進及び国際標準化を推進する。
さらに、インターネットを通じて国内外の各種地理情報の所在情報(メタデータ)を検索するための、クリアリングハウスシステムを構築する。
ハ 地理調査の推進
国土資源を有効に活用し、国民生活の充実を図っていくためには、歴史・文化と調和し、自然・生態系に配慮した社会資本整備を進めるなど、地理的特性を活かした国土の開発・利用・保全を推進することが重要である。このため、国土が持つ自然、社会、人文に関する地理的特性を把握する各種の地理調査を実施している。
防災関連の地理調査では、地震・洪水等の防災対策や、地域の開発、保全等の計画立案に必要な土地の基礎情報を提供するため、地形分類を中心とした土地条件調査を実施するとともに、全国の活動的な火山を対象として、火山噴火など火山活動の予測及び防災対策等に資するため火山土地条件調査を実施する。また、活断層の詳細な位置や活動の性質を明らかにするため都市圏活断層調査を実施する。
環境関連の地理調査では、国土環境モニタリングシステムにより国土環境の監視等を行うとともに、三大都市圏において土地利用の変化を明らかにし宅地需要への的確な対応に資するための宅地利用動向調査を実施する。また、湖沼やその周辺の湿原及び沿岸域の総合的な管理、利用、保全等の計画策定に必要な基礎資料を提供するため、湖沼湿原調査及び沿岸海域基礎調査を実施する。
さらに、防災や環境等の社会生活に密接に関わる地理調査の成果についても、GIS、ネットワーク通信等での利用を考慮に入れた地理情報としての整備を推進する。
ニ 測量地図作成技術に係る研究の推進
測量・地図作成事業を効率的・効果的に推進するため、「国土地理院研究開発五箇年計画」に基づき、測量行政と一体的で測量行政を支援する研究、国際社会への貢献を果たすグローバルな課題の研究、我が国の測量技術の進展に寄与する基礎的・先端的研究を推進する。