II 建設産業の動向と施策

1 建設産業の現状と課題

(1)建設産業の現状

イ 建設産業を取り巻く環境
 我が国の建設産業は、国内総生産の約15%に相当する約70兆円の建設投資を担うとともに、全産業就業人口の約10%を占める650万人の就業者を擁する我が国の基幹産業である。
 また、国民生活に直結する住宅・社会資本の整備の直接の担い手として経済社会において重要な役割を果たすとともに、建設関連業界、資材業界などを含め極めて裾野の広い産業であり、また、幅広い産業への生産誘発効果などにより景気回復のための牽引車としての役割も期待されている。
ロ 経営の現況
 建設投資の低迷など建設市場の大きな構造変化の中で、受注の減少、利益率の低下等により、建設業は厳しい経営環境に直面している。建設業者の経営状況については、売上高経常利益率を見ると、平成2年度は、3.4%であったが、平成3年度以降は、厳しい経済状況を反映し低下傾向にあり、平成10年度は1.6%にまで低下している。
 また、資本金階層別に見ると、規模が小さいほど利益率の水準が低く、かつ、変動が大きくなっており、安定した企業経営の確保が難しいことがうかがえる(図3-II-1)。
ハ 建設業許可業者数
 建設業許可業者数については、平成11年3月現在で約58万6,000業者である。昭和61年3月末から平成2年3月末まで漸減傾向にあったが、平成3年3月末以降増加に転じ、平成11年3月末は過去最高となっている(図3-II-2)。
 資本金階層別に見ると、個人及び1億円未満の業者が約99%を占めている(図3-II-3)。
ニ 倒産の現況
 平成11年における建設業者の倒産は、4,384件(対前年比19.4%減)、負債総額12,348億円(対前年比41.6%減)とともに前年を下回ったものの、月別に見ると、8月以降は400件前後で推移している(図3-II-4)。
ホ 建設労働の動向
 総務庁「労働力調査」によると、平成11年平均の建設業就業者数は657万人(前年比5万人減)で、2年連続で前年比減少となっている。そのうち雇用者は544万人であり、その内訳は、常雇が491万人(前年比3万人減)、臨時・日雇が52万人(前年比2万人減)であり、雇用者に占める臨時・日雇の比率は9.6%(前年比0.3ポイント減)となった。
 建設省「建設労働需給調査」によると、平成11年平均の調査対象6職種(型枠工(土木・建築)、左官、とび工、鉄筋工(土木・建築))計の不足率は全国で-0.3%(前年比0.1ポイント増)、6職種に電工、配管工を加えた8職種計の不足率は-0.3%(前年比増減なし)と、2年連続で過剰となっている(図3-II-5)。
 建設業の雇用労働条件は、徐々に改善されてきているものの、他産業と比べると未だ立ち遅れた状況にある。労働省「毎月勤労統計調査」によると、平成11年の建設業(事業規模30人以上)の年間総実労働時間(月間労働時間の年換算値)は、2,038時間と、調査産業計の1,842時間に比べ196時間長く、今後一層労働時間の短縮を図る必要がある。
 また、労働省「賃金構造基本統計調査」から建設業男性生産労働者の年間賃金総支給額を試算すると、平成10年では4,312千円と調査産業計男性労働者の約8割程度となっている(図3-II-6)。
 「建設技能者の就労状況等に関する調査(平成10年)」によれば、現場の生産性が「かなり向上している」又は「やや向上している」と回答した企業の割合は併せて23.6%となっており、平成10年度より1.8ポイント上昇している(図3-II-7)。なお、生産性向上のため「作業手順や施工管理の改善」が重要と回答した企業は54.0%であった。また、「工事発注の平準化」の51.7%に次いで、「技能者の多能工化」「基幹技能者の育成・活用」はそれぞれ31.4%、30.9%となっている(図3-II-8)。このように、現場における作業手順の改善や技能者の確保・育成が重要な課題となっており、今後の少子・高齢化の進展を踏まえ、若年者の入職促進、現場施工において中心的役割を担う基幹技能者や多能工といった優秀な技能者の育成などの施策を積極的に進める必要がある。
ヘ 建設資材の動向
 平成11年度の主要建設資材の需要量は、民間建設投資の低迷により、ほぼ横ばいで推移している(表3-II-1)。
 また、平成11年度の主要建設資材の価格は、一部の資材を除きほぼ横ばいで推移している(図3-II-9、東京)。
ト 建設労働災害の動向
 近年の建設工事の施工においては、市街地等の輻輳した条件下での工事の増加、施工技術の高度化などにより施工条件が複雑化するとともに、熟練労働者の不足や労働者の高齢化、下請け工事比率の増大など、建設現場を取り巻く環境は大きく変化している。
 このような状況の中で、建設業全体の就業者数は657万人といわれ、総労働人口の約1割であるのに対し、建設工事における労働災害の死傷者数は、減少傾向にあるものの平成11年において35,310人と、全産業の約3割を占めている。
 なお、建設労働災害死亡者数は、昭和63年以後年間1,000人前後で推移し、漸減傾向になり、平成10年には725人と過去最少を記録したが、平成11年は前年より69人増加して794人となった。しかし、産業別割合では全産業の約4割を占めており、依然としてその割合が高く、建設工事の安全対策のさらなる改善が求められている(図3-II-10)。
チ 建設関連業の現状
1) 測量業
 測量法に基づき登録された測量業者の数は、平成11年度末には14,325業者となり、前年度末に比べて322業者(2.3%)増加した(表3-II-2)。
 また、「建設関連業の経営分析(平成10年分)」では、総売上高経常利益率が前年と比較して1.6ポイント減少の2.5%、職員1人当たり総売上高が前年比4.5%減となるなど収益性及び生産性の低下がみられた。
2) 建設コンサルタント
 建設コンサルタント登録規程に基づき登録された建設コンサルタントの数は、平成11年度末には3,426業者となり、前年度末に比べて149業者(4.5%)増加した。
 また、「建設関連業の経営分析(平成10年分)」では、総売上高経常利益率が前年と比較して1.0ポイント減少の3.7%、職員1人当たり総売上高が前年比3.4%減となるなど収益性及び生産性の低下がみられた。
3) 地質調査業
 地質調査業者登録規程に基づき登録された地質調査業者の数は、平成11年度末には1,238業者となり、前年度末に比べて29業者(2.4%)増加した。
 また、「建設関連業の経営分析(平成10年分)」では、総売上高経常利益率が前年と比較して1.9ポイント減少の4.0%、職員1人当たり総売上高が前年比8.3%減となるなど収益性及び生産性の低下が見られた。
4) 建設機械器具賃貸業
 建設機械器具賃貸業年間売上高は、サービス産業に関する通商産業省の調査によれば、平成10年は9,478億円、前年比3.8%増となった(表3-II-3)。
リ 建設機械の現状
1) 購入台数
 建設機械動向調査によると、我が国における平成10年度の建設機械購入台数は約10万4,000台と前年度比約25%の減少となった。内訳としては、油圧ショベルが約5万8,000台(全体の約56%)と半数以上を占め、車輪式トラクタショベルが約10,000台(同約9%)とこれに続いている。
 一方、業種別の購入動向では、平成元年度以降横ばいを続けていたリース業が近年は増加傾向を示しており、平成8年度に初めて建設業とリース業の比率が逆転した。平成10年度はリース業が全体の約41%(前年度比1ポイント増)、建設業が約31%(1ポイント減)であった(図3-II-11)。
2) 保有台数
 平成10年度末の主要建設機械の推定保有台数は、約105万9,000台となっており、平成5年度以来、100万台を超える水準となっている。内訳は油圧ショベルが約72万8,000台(全体の約69%)と半数以上を占めており、続いて車輪式トラクタショベルが約13万8,000台(同約13%)、ブルドーザが約8万2,000台(同約8%)などとなっている(図3-II-12)。
3) 輸入・輸出
 平成11年の建設機械の輸入額は約384億円(前年比約91%)、輸出額は約5,018億円(前年比約86%)となっており、ともに引き続き減少している。
4) 建設投資と購入台数
 昭和58年度から平成10年度までの建設投資(実質値)と国内の購入台数の推移を図3-II-13に示す。

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