(2)建設産業の国際化の状況

イ 我が国建設産業の海外活動状況
 戦後我が国建設業の海外工事は、戦後賠償の一つとして昭和29年に始められた。昭和30年代になると商業ベースの工事が始まり、昭和40年代以降急増し、昭和58年度に受注額は1兆円を超えた。その後、昭和61〜63年度には円高を背景に、平成4〜5年度にはバブルの崩壊等を背景に低迷したが、平成8年度は過去最高の約1兆6,000億円を記録した。これに対し、平成10年度はアジア経済危機の影響等により、対前年度比24%減の約9,700億円と大幅に落ち込み、4年ぶりに1兆円を下回った((社)海外建設協会調査に基づく)(図3-II-14)。
 特に、アジア地域での受注額が約9,000億円(前年)から約6,400百億円に、29%減と大幅に減少した(図3-II-15)。
 バブル崩壊後、我が国経済が低迷する中で、建設投資も横ばいで推移し、将来的にも大きな伸びが期待できないという厳しい環境の中、今後、建設業にとっての海外活動は、その重要性がますます高まるものと考えられ、以下のような方針に基づきつつ、海外活動を展開していく必要がある。
・国内外での情報収集能力の強化、現地化の促進、契約管理能力の強化、人材養成、価格競争力の強化、下請け企業の育成等を図りながら、国際競争力の強化を図る。
・環境関連、エネルギー、社会開発、情報関連等のプロジェクトについて研究開発により技術力の向上を図りつつ、積極的な取組みを図る。
・国際開発金融機関、外国政府等との関係強化を図る。
・エンジニアリング分野の拡充、強化を行い、EC、CM、PM等への取組みを着実に進めていくとともに、維持・管理も含めたソフト面の取組みの強化を図る。
・地球環境問題、国際規格化(ISO)の推進、情報化の動向を常にフォローし、適切に対応していく。
・建設コンサルタント、商社、プラントメーカー等関係業界との連携を今まで以上に図るとともに、外国企業との連携強化を図る。
 建設産業のうち建設コンサルタントについてみると、昭和30年代から海外活動が再開され、昭和40年代に商業ベースでの海外活動が増加した。昭和50年代後半になると受注は一進一退となり、平成に入ってからはほぼ500億円台で推移していたが、平成6年度に600億円を超え、平成10年度約661億円となった(測量、地質調査業務を含む。(社)国際建設技術協会調査による。)。地域別にはアジア市場からの受注が62%を占めており、続いて中南米の14%となっている(図3-II-16)。また、我が国建設コンサルタントは、海外活動において、その受注額の90%をODA関連予算に依存しており、今後、その大幅な伸びが期待できないことから、海外受注の増大、均衡を図るため、独自に優良案件の発掘、形成や環境保全、新たなニーズに対応する体制作り、海外コンサルタントとの業務提携の推進、技術の高度化、ソフト化等を図ることによって、市場の拡大と情報収集活動等の強化を図る必要がある。
ロ 外国企業の我が国建設市場への参入の状況等について
 建設市場の国際化は世界的に大きな流れとなっており、我が国の建設市場においても、平成12年3月末現在、68社の外国法人及び外資系日本法人(外資50%以上)が建設業の許可を取得し、営業活動を行っている(図3-II-17)。
 我が国の入札・契約制度については、平成6年1月、「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」が閣議了解され、工事における一般競争入札方式の採用、設計・コンサルティング業務における公募型方式の導入、外国企業の適正な評価等の措置を実施することとされ、国際化に対応したものとなった。
 また、平成8年1月には、WTO政府調達協定が発効し、国、政府関係機関だけでなく、都道府県及び政令指定都市の行う基準額以上の物品の調達や建設工事、設計・コンサルティング業務等を含むサービスの調達に、内外無差別の原則、透明で客観的かつ競争的な手続きが求められることとなった。
 さらに、平成8年6月の「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」運用指針の策定等により、上述の手続きは着実に運用されている。
 我が国建設市場における外国企業による受注は、近年増加傾向にあり、建設市場の国際化は着実に進んでいる。
ハ 外国人労働者問題
 建設産業に従事する外国人単純労働者の受け入れについては、低賃金等の低い労働条件の固定化につながるなど、建設業の雇用改善を阻害する恐れが大きいため、国内の雇用や産業全般等への様々な影響を総合的に勘案するとともに、国民のコンセンサスを踏まえつつ十分慎重に対処する必要がある。なお、出入国管理及び難民認定法に違反して平成11年中に退去強制手続きを受けた不法就労者46,258人のうち、「建設作業員」として就労していた者は8,638人で全体の18.7%を占めている(法務省調査)。このような状況の下、建設業における外国人の不法就労の防止を徹底するよう、関係業界団体等に対し指導を行っているところである。
ニ 外国人研修生・技能実習生の受入れ
 国際協力の観点から、外国人研修生・技能実習生の受け入れについては積極的に推進しており、平成11年度は、(財)建設産業教育センターを通じて215名の研修生を受け入れている。

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