(9)建設生産技術対策

 21世紀の本格的な高齢化社会の到来を目前に控えて、社会資本整備を効率的に進めるためには、建設生産の効率性の向上を図ることが重要な課題となっている。
 建設生産は、一般製造業に比べ製品や生産条件が個々の現場で大きく異なるという特性がある。このため、生産方式の細分化、専門化が進み、それぞれの専門作業における技術的向上を図ることにより、生産の効率性を向上してきた。しかし、各々の技術は既に成熟化した状況にあり、従来のような効率性の向上への取組みでは、その効果は極めて小さい。今後、建設生産全体の効率性の向上を図るためには、建設生産の革新のための技術が必要である。そこで、建設産業の技術の現状と今後の建設需要に応えるための課題について検討を重ね、これからの建設施工のあるべき姿とその実現のための方策を示した「メカテクノビジョン(建設生産革新のための技術を目指して)」を策定した。このビジョンに基づき、以下のような施策を展開している。
イ 情報化施工の推進
 近年、他産業で著しい進歩がみられる電子情報技術を活用した生産性の向上を参考とし、電子情報技術と建設生産との融合を図ることにより、次世代の施工の中核となる情報化施工の促進に努めている。
ロ 施工技術評価手法の確立
 優れた民間技術の活用を促進し、公共工事のコスト縮減を効率的に推進するため、民間提案技術の公正・迅速な評価を支援する施工技術評価手法を確立する。
ハ CE手法を用いた施工環境の改善
 作業の問題点を定量的に評価・改善するためのシステマティックな手法及び手続きとして開発したCE手法(Constructive Engineering:製造業の分野で導入され、生産性向上に大きく寄与したIE(Industrial Engineering)を建設分野に応用したもの)を従来の歩掛調査に採り入れることで、技術活用による施工現場の生産性改善事例や、生産性向上を阻害している規格・基準等の制約要因を把握・抽出し、生産性改善手法の普及促進や施工制約の適正化を図る。
二 生産性向上のための技術開発の推進
 様々な業種における技術に対する有識者から構成される「異分野技術研究会」を設置し、医療機器産業、航空機産業等の異分野における先端技術の動向を把握し、これらの技術を建設機械分野の技術開発へ導入すべく検討が行われ、平成10年度に「異分野技術研究会成果報告書」が策定された。さらに同報告書等で提言された機械技術の開発理念を実現し、機械技術研究開発の基本的方向を設定するため、平成11年4月に「新機械技術五箇年計画」が策定された。これらに基づき、建設施工分野における生産性向上等を図るべく技術開発を進めている。
ホ 建設ICカードによる施工情報システムの推進
 施工管理の合理化という観点から、建設現場の生産性の向上、福利厚生の向上、現場事務管理費等のコスト縮減を目的とし、建設現場の共通データキャリアにICカードを利用した建設ICカードによる情報収集・活用の円滑化を推進している。現在では、直轄現場における試験フィールド工事の結果を受けて、建設ICカードを使用した現場管理システムを導入する企業が増えてきている。
ヘ 税制
 建設業における施工の機械化・省力化による生産効率の向上、労働条件の改善、省エネルギー等を図るため、中小建設業者等が建設作業用ロボット等の設備を導入する際の税制上の特例措置(エネルギー需給構造改革推進投資促進税制(エネ革税制)、中小企業新技術体化投資促進税制(メカトロ税制))を整備している。
ト 環境にやさしい建設施工技術の開発、普及
 地球規模での環境問題が深刻化している状況の中、建設生産においてもその環境対策を図ることが喫緊の課題となっている。低騒音・低振動、低NOX排出の建設機械の開発については、建設機械メーカー等においても様々な努力が行われている。建設省としては、騒音・振動基準値及び排出ガス基準値を定め、これらの基準値を満足する建設機械について、「低騒音型建設機械」「低振動型建設機械」及び「排出ガス対策型建設機械」として型式指定を行い公表している。さらに、その普及を促進するため、平成11年度より、これら環境対策型の建設機械を取得した場合に適用される融資制度として、中小企業金融公庫及び国民生活金融公庫において建設機械施工環境整備関連融資制度を整備している。
 また、地球温暖化対策の観点からも、平成11年度に学識経験者等による「建設施工の地球温暖化対策検討分科会」を設置し、建設機械及び建設施工技術に関して二酸化炭素排出量の抑制に向けた検討を実施しているところである。