2.21世紀型国土交通行政に求められる方向性

 国土交通行政を取り巻く社会経済環境が大きく変化しつつある中、これら多数の課題に的確に対応していくためには、これまでの行政の進め方にとらわれることなく、以下のような視点に立って、新たな取り組みを進めていかなければならない。

(1)効果、効率を重視した政策展開
 成熟社会を迎え、財政状況も厳しさを増す中で、多くの課題に対応するためには、できるだけ低いコストでより大きな効果をもたらす取組みを、よりスピーディーに進めていくことが強く求められる。
 そのためには、
 1) 旧4省庁統合のメリットを活かし、総合力を発揮することにより、効果的・効率的に施策を展開する
 2) 施策の効果を的確に評価し、施策の重点化を図る
 3) 施策の実施に伴う手続きの合理化、簡素化を進める
 4) 民間で可能な分野については民間活力を積極的に活用する
 5) 特に社会資本整備の分野では、既存ストックの有効活用やライフサイクルコストも含めた総合的なコスト縮減に取り組む。また、交通分野では、安全や環境等を重視した事後チェック型行政を着実に実施していく
ことが必要である。
(2)国民の視点に立った政策展開
 20世紀のわが国の経済は、世界にも類を見ない高度成長を達成した。しかし、その反面、経済力に見合った豊かさを国民が十分に実感できないということが大きな政策課題として残った。
 90年代以降、経済の低迷が長引く現在、我が国は21世紀にふさわしい経済社会の構築を目指している。この努力が実り、新たな発展軌道を歩み始めたときには、発展の成果を国民が十分に実感し、享受できるような仕組みを構築しなければならない。そのためにも、国民の視点に立った政策展開が不可欠である。
 具体的には、
 1) 政策評価に関する事項など、情報の公開を積極的に進める
 2) PI(パブリックインボルブメント)、社会実験など政策実施の早い段階からの住民参加を進める
 3) 地域住民やNPOが積極的に参加できる仕組み作りを進める
などにより国民に開かれた行政を展開することが必要である。
(3)幅広い視野に立った政策展開
 近年、国内では、国と地方の役割分担を見直し、地方分権を進めることが大きな課題となっている。一方、国外に目を転じると、あらゆる分野での国際交流が活発化し、「グローバル化」が急速に進展している。今後の国土交通行政にとっても、こうした国の内外での環境変化への対応が欠かせない。
 このため、
 1) 地方の自主性と創意工夫を尊重した政策展開を進める
 2) 国際社会に対して、日本発の提案を積極的に行うなど主体性の発揮に努める
など、幅広い視野に立脚して、課題に取り組んでいくことが必要である。


 

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