(3)新たな発想、創意工夫に基づく社会資本整備

 先に、新たな公共事業の仕組み・進め方として、(i)住民参加や情報公開への積極的対応、(ii)民間の資金・ノウハウの活用、(iii)各種事業の連携・融合、(iv)既存ストックの有効活用、(v)コストの縮減、等が強く要請されていることをみた。国土交通省としては、社会資本整備の責任官庁として、これらの要請を真摯に受け止め、従来の手法・発想にとらわれず、常に知恵を絞り、新たな発想・創意工夫に基づく社会資本整備を展開している。

1)国民に開かれた透明な公共事業

(ア)早い段階からの住民参加の充実
 公共事業の透明性を高めるため、構想・計画段階から住民参加の充実を図ることが重要である。PI(パブリック・インボルブメント)、事前説明会、公聴会の開催等について、事業特性に配慮しつつ運用面での整合性を確保するためのガイドラインを検討するなど、対話型行政を引き続き推進する。また、事業の本格実施に先立って一定期間の試行を行い、そこでの評価を踏まえて事業実施のあり方を判断していく「社会実験」の実施など、様々な形での住民参加の工夫が広がっている。


<道路計画合意形成研究会の提言>

 道路事業の計画プロセスにおける望ましい合意形成のあり方を検討するため、13年9月に設置された道路計画合意形成研究会は、13年10月31日に提言をまとめた。
提言のポイント:

○構想段階の位置付けの明確化
 計画決定プロセスを構想段階と計画段階に分け、構想段階を「当該計画の必要性を行政と市民等が検討する段階」として位置付け。道路計画における公益性の判断と利害調整とを明確に区別した段階的かつ効率的な進め方を導入。

○構想段階におけるPIプロセスの導入
 構想段階における計画決定手続きの透明性、客観性、公正さを確保するため、計画の早い段階からの情報公開、市民等の意見把握等などを行う。

○構想段階における計画見直し手続きの明確化
 計画の必要性・妥当性については、「道路整備をしない案」も含めた代替案との比較によって検証。「道路整備をしない案」が選択された場合には、事実上、計画は休止。これにより、都市計画手続きの前に、市民の意見を踏まえて計画を休止する手続きを初めて位置付け。



<パークアンドシップライド>

 滋賀県大津市中心部における交通混雑解消と琵琶湖を活用した交通の検討を目的として、船を用いた社会実験が13年11月に初めて実施された。
 草津市郊外の琵琶湖岸及び大津市郊外の瀬田川沿いに駐車場を設け、船により大津港へ行き、大津港から大津市中心部へは連絡バスを運行するとともに無料のレンタサイクルを利用する、という2ルートを設定し、モニターを募って各5日間ずつ実験が実施された。
 今後は、パークアンドライド、市内循環バス等の施策と併せ、総合的な都市交通体系の検討を行う予定である。

図表I-3-10 パークアンドシップライド


<自転車から始まるエコ高松>

 自転車保有率全国5位の香川県高松市では、駅周辺や高松中央商店街アーケードで、放置自転車問題や自転車と買物客との錯綜による安全問題等が課題となっている。このためアーケードへの自転車通行帯設置や、複数箇所で貸出・返却が可能なレンタルサイクル、道路空間の再構築による自転車通行部分確保を組み合わせて、住民参加の下、12年11月に実験を行い、安全性向上や自動車削減効果の検証等を行った。実験結果を生かして、レンタルサイクルシステム及び自転車走行部分の確保については13年度より本格実施されており、市の中心部における自転車走行空間のネットワーク化の協議も続けられている。

図表I-3-11 自転車から始まるエコ高松(香川県高松市)

(イ)公共事業の評価システムの確立
 平成13年に政策評価を全省的に導入するに当たって、個別の公共事業の評価については、一層の充実を図りつつ引き続き実施することとされているが、国土交通省発足後しばらくの間は、旧北海道開発庁、旧運輸省及び旧建設省がそれぞれ策定した事業評価実施要領に基づいて運用されてきた。同年7月にこれらを一本化し、国土交通省所管公共事業に共通の事業評価実施要領が策定された。本要領は、統一的に個別事業の評価システムを確立することにより、効率性・透明性の一層の向上に資するものである。

<事業評価実施要領の主なポイント>
<新規事業採択時の評価対象事業>
1)事業費を予算化しようとする事業
2)事業採択前の準備・計画段階で個別箇所が明確になる事業のうち、準備・計画に要する費用を予算化しようとする事業
<公共事業評価システム検討委員会>
 省内の事業評価全般に係る検討を行う体制として、公共事業評価システム検討委員会等を設置
 同委員会は、事業評価の実施要領の改定等、事業評価に係る重要事項を検討及び決定
<再評価時の再評価対象事業>
1)事業採択後5年経過して未着工の事業
2)事業採択後10年経過して継続中の事業
3)着工準備費又は実施計画調査費の予算化後5年経過した事業
4)再評価実施後5年経過した事業
5)社会経済情勢の急激な変化、技術革新等により再評価の実施の必要性が生じた事業
<再評価の視点>
1)事業の必要性等(事業を巡る社会経済情勢等の変化、事業の投資効果(費用対効果分析の原則実施)、事業の進捗状況)
2)事業の進捗の見込み
3)コスト縮減や代替案立案等の可能性
<対応方針の考え方>
[継続] <再評価の視点>のうち1)、2)の各視点で継続が妥当
    <再評価の視点>のうち3)の視点に基づき事業を見直して1)、2)の各視点で継続が妥当
[中止] 1)、2)の各視点のいずれか又は両方で継続が妥当でないと判断
 ⇒評価結果、対応方針の決定理由、中止に伴う事後措置等を公表
<事業評価監視委員会>
 すべての再評価対象事業について、学識経験者等の第三者による委員会において審議

(ウ)入札・契約の適正化
 地方公共団体も含めた発注者全体を通じて、入札・契約の適正化を促進することにより、公共工事に対する国民の信頼の確保と建設業の健全な発達を促進することを目的とする「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(「入札契約適正化法」)が、平成13年4月より施行された。その前月には、各発注者が取り組むべきガイドラインである「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」(「適正化指針」、第II部第9章参照)も閣議決定されており、国全体の一般公共事業の約8割を占める国土交通省としては、適正化指針にしたがって、公正な競争の促進、不正行為の排除の徹底、不良・不適格業者の排除などの入札・契約の適正化を積極的に推進している。

図表I-3-12 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の概要
図表I-3-12 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の概要
(エ)競争性の向上のための新たな入札方式の試行
 これまでも多様な入札契約方式の試行など入札契約制度の改善に努めてきたが、13年11月より、さらなる競争性の向上のための実験的取組みの一環として、13年度の国土交通省地方整備局直轄工事の一部において、以下の新たな入札方式の試行を開始した。
 (a)詳細条件審査型一般競争入札の導入(注1)
 (b)公募型指名競争入札の対象範囲の拡大
 (c)工事希望型指名競争入札の対象範囲の拡大
 (d)指名業者数の多様化

図表I-3-13 新たな入札方式の試行
図表I-3-13 新たな入札方式の試行

2)民間投資の誘発・活用

(ア)民間投資の誘発
 土地の流動化と沿道の高容積率の実現につながるような都市計画道路の整備を促進する、あるいは、まちづくりと一体となった高規格堤防を整備するなど、民間投資をできるだけ誘発するという視点から社会資本整備を進める。また、例えば小型船舶の係留・保管施設の整備と港湾法による放置艇規制など、社会資本整備と規制改革等のソフト施策を組み合わせることによって、民間投資を誘発する効果を高める施策も考えられる。

(イ)PFIの推進
 また、社会資本の整備・管理等に民間の資金やノウハウ等を活用し、併せて民間の事業機会を創出するため、PFI(注2)の導入に積極的に取り組み、幅広い分野でのPFI事業の実現を推進している。
 13年6月に都市再生本部が決定した都市再生プロジェクト(第一次決定)では、中央官庁施設等の建設・維持管理等にPFIを積極的に導入することとされ、中央合同庁舎第7号館(文部科学省、会計検査院の建替え)について、PFI手法による整備と、街区全体の再開発について必要な調査を実施することになった。さらに同年8月の第二次決定では、国土交通省関係では以下の3項目についてPFI手法等を推進することとされた。14年度においてもPFIの積極的な活用を図る。
  ・中央官庁施設(九段第3合同庁舎(仮称))
  ・公営住宅(東京都南青山一丁目団地)
  ・港湾(北九州港における国際コンテナターミナル)
(a)国土交通省PFIセミナー
 全国9ブロックにおいて、「国土交通省PFIセミナー」を開催し、約2,100人の参加者を得た。PFI導入に向け検討を行ってきた国土交通省所管事業等について紹介するとともに、意見交換等を通じてPFIへの理解を深め、具体のPFI事業のプロジェクト形成を支援している。
(b)PFI相談窓口の設置等
 13年1月に、国土交通本省内関係各局等にPFI相談窓口を設置し、民間事業者、地方公共団体等からの相談、提案等に迅速かつ的確に対応できる体制を整えている。また、財政上の支援について、公共施設等の管理者等が受けることのできる事業費補助等をPFI事業者についても受けられるよう手当てを進めているほか、低利融資など金融上の支援制度、公共荷捌き施設の固定資産税に係る税制上の措置も整備したところである。

(ウ)住宅整備における市場機能の活用
 民間による供給が大宗を占め、社会的資産である住宅については、市場機能を大胆に活用して住宅ストックの質の向上・有効活用を図ることが重要である。従来から実施している建築確認事務の民間開放や住宅性能評価・表示制度の実施等に加え、中古住宅市場や住宅リフォーム市場の環境整備、市場機能を活用した住宅金融など、市場を重視しその機能を活用した施策を一層推進していく。

3)融合・連携事業による総合性の発揮とハード・ソフト施策の戦略的組合せ
 国土交通省の幅広い守備範囲を活かし、他府省との連携・調整を含め施策の総合的な展開を図ることが重要である。すでに平成13年度から、旧4省庁間での連携施策を推進しているが、さらに施策の本格的な融合・連携を進め、社会資本の整合的・効果的な整備、総合的な交通体系の構築等を推進している。

図表I-3-14 地下鉄トンネル空間を利用した綾瀬川・芝川等導水事業概要図
図表I-3-14 地下鉄トンネル空間を利用した綾瀬川・芝川等導水事業概要図
<地下鉄道トンネル断面を有効利用した日本初の河川浄化導水路>
 綾瀬川や芝川は水質汚濁が著しく、特に綾瀬川は昭和55年から15年連続で水質ワースト1であった。この2つの川の水環境改善対策の1つとして、荒川の河川水を浄化用水として綾瀬川・芝川へ送水する事業を行い、導水菅を敷設した。このうち、12km区間について、埼玉高速鉄道線の地下鉄道トンネル内(川口元郷駅付近〜浦和美園駅付近)に導水菅を敷設し、平成13年3月に完成した。地下鉄道トンネル内に浄化導水菅を敷設したのは全国で初めてである。
 埼玉高速鉄道株式会社、日本鉄道建設公団、帝都高速度交通営団及び国土交通省関東地方整備局の共同事業である本事業は、河川の水環境改善、地下空間の有効活用、建設コストの低減等に効果を上げたため、「環境の保全・創造に貢献した画期的なプロジェクト」として、2000年度の土木学会環境賞を受賞した。


 また、施設整備などのハード施策だけでなく、ソフト施策をこれに戦略的に組み合わせることによって、新たな施設の整備による効果・効用を補完・代替し、又は、施設整備のみによっては実現困難な施策効果を達成するとの視点も重要である。

4)既存ストックの有効活用と21世紀型課題に沿った「質」の重視
 新たな施設の整備による効果・効用の補完・代替、事業効果の早期発現、既存施設の機能向上を図る観点から、既存ストックを有効に活用する施策を推進する。例えば、既設ダムの貯水池容量を再配分することによる治水・利水機能等の向上、ETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)やTDM(交通需要マネジメント)施策の推進、官庁施設の保全の適正化等は、既存ストックの有効活用施策と位置づけられる。

図表I-3-15 既存ダムの徹底活用による治水・利水機能の向上
図表I-3-15 既存ダムの徹底活用による治水・利水機能の向上

 また、使いやすさの向上、環境負荷の低減、長寿命化といった観点から、質の高い社会資本や交通体系の整備を推進する。「質」の重視により、都市問題の克服、地球環境問題への対応、自然との共生、少子・高齢社会への対応等、21世紀型課題に対応した社会資本整備に役立つ。
 例えば、スケルトン・インフィル住宅等の耐久性の高い社会資本の整備促進、中古住宅流通の促進、自然再生事業の推進、ユニバーサルデザインの導入等が、質を重視した施策と位置づけられる。

5)公共事業におけるコスト改革

(ア)公共工事の総合的なコスト縮減
 公共工事コスト縮減対策については、「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」(9年4月)に基づき、9〜11年度の3年間、各省庁が一致協力して施策を推進し、一定の成果を得てきた。
 しかしながら、厳しい財政事情の下で引き続き社会資本整備を着実に進めることが要請されており、また、これまでのコスト縮減施策の定着や新たなコスト縮減施策の推進が重要な課題となっている。このため、これまでの取組みにおける課題も踏まえ、12年9月に、公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議において、政府の新たな「公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針」(「新行動指針」)が策定された。国土交通省においては、13年1月の省庁再編に伴い、旧北海道開発庁、旧運輸省及び旧建設省において策定した新行動計画を統合し、13年3月に国土交通省におけるコスト縮減のための具体的施策を盛り込んだ「公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」を策定した。
 新行動計画は、政府新行動指針の内容を包含し、より具体的な形で作成しており、(i)工事コストの低減に加え、(ii)工事の時間的コストの低減、(iii)ライフサイクルコストの低減(施設の品質の向上)、(iv)工事における社会的コストの低減、(v)工事の効率性向上による長期的コストの低減を基本的視点として、総合的なコスト縮減に取り組むこととしている。

<平成12年度における総合的なコスト縮減の取組み>
 
 (a)工事コストの低減(平成8年→平成12年に約11%低減)
 (例) ・同じ機能を確保して低コスト化
   防波堤堆積砂を海岸保全に利用、新しい構造の樋門や橋梁の採用、民間の技術提案を採用
  ・同じものをより低コスト化
   施工の効率化(能率向上)、物価の低減(卸売物価分、労務費等を除く)
 (b)工事の時間的コストの低減
 (例) ・新工法による工期短縮(効果:供用の早期化)
   斜め控え護岸(TRD工法)により約6ヶ月の工期を4ヶ月に短縮
 (c)ライフサイクルコストの低減(施設の品質の向上)
 (例) ・無塗装耐候性鋼材の採用(効果:維持管理費の低減)
  ・低騒音舗装の実施(効果:環境負荷の低減)
 (d)工事における社会的コストの低減
 (例) ・リサイクルの推進(効果:環境負荷の低減)
   植物発生材を約7割有効利用
  ・交通渋滞緩和(効果:渋滞時間の短縮)
   460日の1車線規制を8日の全面通行止めに短縮
 (e)工事の効率性向上による長期的コストの低減
 (例) ・新技術の活用(効果:産業の効率化) 平成12年度までの新技術活用件数 約1,800件

(イ)公共事業コスト改革の推進
 しかしながら、これまでのコスト縮減施策では限界があるため、13年9月4日の経済財政諮問会議に示された「改革先取り施策パッケージ(扇試案)」に「公共事業コスト改革の推進」として以下の4項目を盛り込み、これまで実施してきた公共工事のコスト縮減対策を一層推進することとした。

(a)工事の平準化の推進
 技術者、現場労働者、資機材の手配や調達の合理化を図るため、国庫債務負担行為の活用及び受注者に効率的な施工時期の選択を可能とするフレックス工期の設定を行い、工事の平準化を推進する。

(b)新技術活用の推進
 技術指定システム、工事選定技術募集システム、テーマ設定技術募集システムからなる技術活用システムによって、新技術の活用を図る。また、技術活用システムを採用する工事件数を直轄工事全体の一定割合とする新技術活用枠を創設する。
 また、民間技術を活用する多様な入札契約方式として、総合評価落札方式、設計・施工一括発注方式、VE方式、性能規定発注方式の導入・拡大に努める。

(c)電子入札の前倒し実施
 13年10月より、一部の直轄事業(工事及び建設コンサルタント業務)の入札を、電子入札システムにより行うこととした。13年8月には、電子入札の対象案件と必要な準備(電子認証書、機器等)を発表した。13年度は、電子入札を約100件実施し、14年度には2,000件程度に拡大、15年度からは当初の計画を1年前倒しし、完全実施する予定である。

(d)その他
 詳細条件審査型一般競争入札の導入、公募型指名競争入札の対象範囲の拡大等により、入札時における競争性の向上に努める。また、中小企業の受注機会の確保に配慮しつつ適正な発注ロットを設定する。


<電子入札>

 電子入札は、インターネットを用いて、競争参加資格の確認申請、確認結果の受理、応札、応札結果の受理、再入札までの一連の作業を行うことができるシステムである。
 参加条件を満たす者が誰でも容易に入札に参加することができる。また、入札に参加するための移動コストを大幅に縮減するとともに、書類作成などの業務の効率化が期待される。

図表I-3-16 電子入札
図表I-3-16 電子入札


6)公共工事の品質確保・向上
 公共事業のコスト改革を進める一方で、事業により整備される社会資本の品質は確保・向上させなければならない。旧運輸省、旧建設省及び農林水産省では、「発注者責任研究懇談会」を開催し、発注者責任を果たすための取組みについて検討を進めてきた。同懇談会では、12年4月の「第一次とりまとめ」に続き、13年3月に、工事発注段階以降の調達プロセスにおける以下の4つの点について「第二次とりまとめ」を行った。
(ア)発注者支援制度などを検討する前提となる発注者・受注者の役割分担と発注者の体制評価
(イ)発注者支援制度などの具体化に必要な事項
(ウ)企業評価の結果を反映した的確な企業選定の具体的方策
(エ)特許工法などの知的財産権の活用方策
 すでに、これまでの懇談会での検討結果を踏まえ、総合評価方式、VE方式、性能規定発注方式、新・工事成績要領の試行等の様々な取組みが行われている。今後は、「第一次とりまとめ」・「第二次とりまとめ」に基づく具体的施策についても試行を重ね、併せてこれらの結果を評価し、よりよい方向に入札契約方式を改善することにより、発注者責任を果たしていくこととしている。

7)地方の発案、創意の尊重
 社会資本整備の展開に当たっては、地域のニーズに応じ、地方の自主性と創意工夫を尊重していくことが重要である。
 旧港湾建設局と旧地方建設局を統合して新たに発足した地方整備局等は、国土交通本省から、法律等67本にのぼる許認可等の事務の委譲、4兆1,000億円余(13年度事業費ベース)の予算の一括配分を受けており、地域における社会資本整備の核となる存在である。
 国土交通行政全般について、地方整備局、北海道開発局、地方運輸局等が、地方公共団体や地元経済界等との間にオープンで透明な新たな協調・協力関係を築くため、地方ブロック単位での会議を設置する等により、相互に密接に連携しつつ地域密着型の国土交通行政を進めていくよう努力しているが、なかでも社会資本整備については、地方の主体性が活かされるよう、統合補助金や公共事業予算の一括配分制度が創設・拡充されている。

(ア)公共事業予算の一括配分制度
 国土交通省の発足に伴い、事業の決定及び執行に関する大臣の権限をできるだけ地方整備局長等へ委任し、各地域単位での直轄事業の実施、補助事業の調整等を総合的に行う仕組みを導入した。また、地方公共団体が行う補助金等の申請窓口については、一括配分事業とともに本省配分事業についても、原則として地方整備局等に一元化した。これにより、地域の社会資本整備については地域で完結するシステムが整備されている。

(イ)統合補助金の創設・拡充など補助金制度の見直し
 地域のニーズをより的確に反映するため、12年度から統合補助金を創設し、13年度にもその創設・拡充を行った。
(a)一定の政策目的を実現するために複数の事業を一体的かつ主体的に実施することができるような類型の統合補助金:13年度現在、4件(注3) 。このうち、まちづくり総合支援事業を13年度に拡充(13年度国費600億円。防災機能や交通連結機能の充実を図るため、補助メニューを拡充。予算額を増額。)。
(b)個々の事業について地方公共団体が具体の事業箇所・内容を主体的に定めることができる統合補助金:13年度現在、11件(注4) 。このうち、公営住宅ストック総合改善事業費統合補助など、6件を13年度に創設。
 このほか、13年度に、補助金の廃止、補助採択基準の引上げ等の見直しを行った。

<まちづくり総合支援事業>

1)市町村が、地域の抱えるまちづくりの課題解決のため、各種市町村事業及び関連事業を記載した「まちづくり事業計画」を策定する。目指す方向や事業手法の組合せは市町村の自由な発意による。
2)国は、個々の事業ではなく、まちづくり事業計画に基づき一括して採択し、毎年度、総額で補助金を交付する。具体的配分等は市町村の裁量に委ねる。
3)調査、施設整備、面整備など、ハード事業からソフト事業まで多彩なメニューで支援。
4)国土交通省の関係課に配置したまちづくり相談員制度を活用し、全省体制で市町村の相談に応じる。

8)土地収用制度の見直し
 住民の理解の促進、円滑かつ効率的な事業実施の確保といった近年の公共事業を取り巻く課題に対応するため、土地収用制度の見直しが検討されていたが、平成13年の第151回国会において、土地収用法の一部を改正する法律が成立した。
 今回の抜本的な見直しにより、事前説明会、公聴会の開催の義務付けや、第三者機関の意見聴取、収用委員会審理の合理化、補償金払渡方法の合理化、補償基準の法令化、生活再建措置の充実等が規定されることとなった。これにより、土地収用に係る事業認定手続きの透明性・公正性の向上が図られるほか、収用手続に要する時間の短縮等が図られることとなり、21世紀型公共事業の実現に寄与し、国民から信頼される土地収用制度が確立されることが期待される。

図表I-3-17 土地収用法改正の概要、改正の効果
図表I-3-17 土地収用法改正の概要、改正の効果



(注1)公募型指名競争入札の一部において、施工実績に加え他の適切な条件を付して公募することにより、条件を満足する企業はすべて入札に参加させる方式の導入。
(注2)Private Finance Initiativeの略。公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う新しい手法。
(注3)まちづくり総合支援事業、住宅宅地関連公共施設整備促進事業、住宅市街地整備総合支援事業(関連公共施設整備部分)、都市再開発関連公共施設整備促進事業。
(注4)統合河川整備事業費補助(一級河川に係る統合補助金)、統合河川整備事業費補助(二級河川に係る統合補助金)、海岸保全施設整備事業費補助(補修費統合補助)、港湾施設改良費統合補助、公営住宅建設費等統合補助、公営住宅ストック総合改善事業費統合補助、住宅市街地整備総合支援事業、密集住宅市街地整備促進事業、公共下水道等統合補助事業、都市公園等統合補助事業、緑地保全統合補助事業。

 

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