(2)大都市圏の国際拠点空港機能の強化

1)成田空港の整備
 新東京国際空港(成田空港)は、現在供用中の滑走路1本の運用による処理能力の限界から発着回数が頭打ちとなっており、強い増便要請や新規乗り入れ要請に対応できない状況にある。このため、空港容量の拡大のための平行滑走路等の整備が必要不可欠となっている。
 一方、成田空港の整備に当たっては、これまで成田空港問題シンポジウムや円卓会議の内容を踏まえ話し合いによる用地取得に努めてきたところであるが、残念ながらまだ一部の地権者の了解が得られていない。

図表II-2-15 成田空港における国際旅客数・国際貨物量予測(第7次空港整備7ヵ年計画に基づく需要予測値)
図表II-2-15 成田空港における国際旅客数・国際貨物量予測(第7次空港整備7ヵ年計画に基づく需要予測値)
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 このため、本来の2,500mの平行滑走路の早期完成を目指して、引き続き地権者との話し合いの努力を続けつつ、暫定的措置として平成14年初夏のサッカーワールドカップ開催に間に合うように2,180mの滑走路整備を進めている。
 暫定平行滑走路は、すでに13年10月末に工事が完成し、予定より1ヶ月早く、14年4月には供用を開始する予定である。

図表II-2-16 成田空港の施設計画
図表II-2-16 成田空港の施設計画

 この結果、空港の処理能力が発着回数13.5万回から20万回へと大幅に増大し、諸外国からの新規乗り入れや増便が可能となるなど、当面の国際航空旅客・貨物の需要に対応できることとなる。しかしながら成田空港における需要は引き続き増大傾向にあり、暫定平行滑走路のままでは19年(2007年)頃には需要への対応が限界となることが予想されるため、 (注)一刻も早い本来の2,500mの完成と地元との協議を踏まえ発着回数の増加を目指し、全力で取り組んでいく必要がある。

図表II-2-17 成田空港の発着回数の将来予測
図表II-2-17 成田空港の発着回数の将来予測
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2)羽田空港の深夜早朝時間帯の国際チャーター便の就航
 首都圏での国際航空旅客需給が逼迫している一方、羽田空港は沖合展開により24時間運用が可能となったものの深夜早朝の時間帯はほとんど活用されていない状況であった。そこで、「羽田空港は国内線の、成田空港は国際線のそれぞれ拠点空港である」ことを基本としつつ、羽田空港において深夜早朝時間帯での国際旅客チャーター便及び国際ビジネス機の運航を認めることとした。
 具体的には、13年2月16日より、23時から6時までの時間帯において運航が開始された。このような国際チャーター便は12月末までに101便運航されており、高い利用率で推移している。

3)首都圏における国際拠点空港機能のさらなる強化に向けて
 平行滑走路の整備等により成田空港の容量を拡大しても、27年(2015年)頃には増大する国際航空需要に対応できなくなることが考えられる。一方、羽田空港の再拡張後により空港容量が拡大された場合、国内線として必要と考えられる発着枠を確保した後に、27年(2015年)頃には約3万回(1日41便)、32年(2020年)頃には約1万回(1日14便)程度の余裕枠が生じる可能性が想定される。そこで、羽田再拡張計画の検討に当たっては、この余裕枠に国際線を導入することを視野に入れながら検討を進めていく。

4)関西国際空港2期事業の推進
 約2,410万人もの人口を抱え、域内総生産約97兆円の経済規模があり、外国ではスペインやカナダの経済規模を上回る関西圏においては、今後とも航空需要は伸びると考えられている。関西国際空港は、関西圏における国際交流のためになくてはならない諸外国との空の玄関口であり、1期施設の能力向上のための所要の整備が図られたとしても、近い将来、処理能力の限界に達すると予測される。また、国際空港として、大規模修繕及びメンテナンスを円滑に行い、24時間完全運用を行っていくためにも、2期事業における平行滑走路の整備は必要不可欠である。このため、19年(2007年)の平行滑走路供用開始を目指し、2期事業として、4,000mの平行滑走路と関連施設を整備している。

図表II-2-18 関西国際空港図
図表II-2-18 関西国際空港図

 また、12年末の大蔵大臣・運輸大臣間の合意文書を受け、13年12月、財務大臣・国土交通大臣において事業費の削減、事業の段階的整備及び従来計画通りの出資・無利子貸付を行うことを内容とする事業スキーム見直しを講じることが確認された。さらに、同合意文書において、2期工事について、需要の動向を見極めつつ、着実に進めるものとし、14年度においては、19年(2007年)の平行滑走路供用を目標として引き続き工事を推進することについても確認された。

5)中部国際空港の整備
 現名古屋空港は、
(ア)12年度の離着陸回数が11万9,000回で、処理能力の限界に達しつつあること、
(イ)夜間に航空機が二重駐機するなど、施設の狭隘化が進んでいるが、空港拡張の余地がないこと、
(ウ)周辺地域への騒音の影響から運航時間に制約があること、
から、航空需要の増大に対応できない状況である。したがって、24時間運用可能である新たな国際空港の緊急な整備が必要となっている。

図表II-2-19 名古屋空港の離着陸回数の実績
図表II-2-19 名古屋空港の離着陸回数の実績
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 このため、名古屋の南おおむね35kmの常滑沖海上に、長さ3,500mの滑走路を有する中部国際空港を整備することとし、17年(2005年)3月の開港を目指して建設工事等を進めている。

図表II-2-20 空港周辺図と空港位置図
図表II-2-20 空港周辺図と空港位置図

図表II-2-21 中部国際空港の事業スキーム
II-2-21 中部国際空港の事業スキーム

 事業実施に当たって、民間の資金や経営能力を活用し、効率的な空港の建設・運営を行うことを目指し、事業主体として、運輸大臣(当時)が中部国際空港株式会社を申請に基づき指定している。
 建設工事は着実に進められており、13年3月には護岸が概成して空港島の輪郭が浮かび上がってきた。13年度後半には旅客ターミナルビル等の工事に着手し、14年度には空港島ほぼ全体の埋立を完成させる計画である。

 <中部国際空港>
中部国際空港


(注)滑走路長が2,180mの暫定平行滑走路においては、ジャンボ機等が離発着できないため、19年頃(国際旅客3,400万人)には需要への対応が限界となる。

 

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