(2)土砂災害対策

 我が国では、集中豪雨や地震等に伴う土石流、地すべり、がけ崩れ等の土砂災害が、過去10年(平成2〜12年)の年平均で約1,000件発生しており、国民の生活に多大な被害を与えている。さらに、都市化の進展に伴い宅地が都市域周辺の山麓部まで広がり、土砂災害危険箇所が増加傾向にある。そのため、土砂災害の防止対策として、砂防えん堤等の施設設備を実施しているが、全国に約18万ある土砂災害危険箇所に対する整備は約2割といまだ低い水準にあり、警戒避難等のソフト対策を含めた様々な施策に取り組んでいる。13年度は、災害弱者関連施設に係る総合的な土砂災害対策、重要交通網集中地域の保全対策、都市山麓グリーンベルト整備等を重点的に実施している。

図表II-6-5 最近の土砂災害の発生件数
図表II-6-5 最近の土砂災害の発生件数



1)新たな法制度による総合的な土砂災害対策
 土砂災害から国民の生命を守るため、土砂災害防止施設の整備によるハード対策と相まって、土砂災害のおそれのある区域を明らかにし、その区域において警戒避難措置、新規住宅地の開発抑制、既存住宅の移転促進等のソフト対策を講ずることを規定した土砂災害防止法(注)を13年4月から施行し、同年7月に土砂災害防止対策基本方針を定めた。また、法律に位置づけられている基礎調査を集中的に実施し、土砂災害警戒区域等の指定等を推進するため基礎調査費補助制度を創設した。

2)再度災害防止対策等の推進

(ア)災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業における特例措置
 風水害、震災等が発生した地域について、再度災害防止等を目的として災害関連緊急砂防等事業により土砂災害対策を実施している。また、13年3月に安芸灘を震源として発生した芸予地震では、急斜面上に密集住宅地が形成されている広島県呉市において、住宅擁壁崩壊災害が集中的に発生した。これらの被災箇所の多くがそのまま放置され、降雨等により周辺の人家や公共施設等に二次的被害を及ぼすおそれが高かったため、従来の事業対象となっていない住宅擁壁の崩壊対策を対象とする採択要件の特例措置により、地域の安全確保を強力に推進している。

(イ)危険住宅の移転の促進
 崩壊の危険があるがけ地に近接した危険住宅の移転については、「がけ地近接等危険住宅移転制度」の活用等により促進されてきている。12年度は、この制度により危険住宅164戸が除却され、危険住宅に代わる住宅151戸が建設された。



(注)土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律。

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む