(2)自動車旅客事業の動向と自動車運転代行業の適正化

1)自動車旅客事業の動向

(ア)貸切バス事業
 バス事業のうち、貸切バス事業については、先行して需給調整の廃止が行われ、12年2月に改正法が施行された。新規参入者数の推移を見ると、免許制から許可制への移行により、12年度における1年間の参入件数は過去数年間と比べほぼ倍増したことがわかる。

図表II-9-4 貸切バス新規参入者の推移
図表II-9-4 貸切バス新規参入者の推移



 これにより貸切バスの輸送人員は増加しているものの、平均輸送距離が低下していることにより、輸送人キロは減少している。これは、旅行者のいわゆる「安・近・短」志向の顕在化を背景として、貸切バス事業者が比較的距離の短いサービスを提供していることを示唆しているものと推測される。

図表II-9-5 貸切バス輸送の動向
図表II-9-5 貸切バス輸送の動向



 規制緩和の効果を評価するにはまだ時期尚早であるが、新規参入増加により一定の競争促進効果はあったと考えられる。

(イ)乗合バス事業
 乗合バス事業では、14年2月より需給調整を廃止した改正法が施行されたが、これに先立って割引運賃制度の導入が着実に進展する等事業者のサービス改善努力が行われている。

図表II-9-6 割引運賃の導入推移
図表II-9-6 割引運賃の導入推移



 しかし、輸送人員の長期的低落傾向に歯止めはかからず、12年度まで一貫して減少している。一方、平均輸送距離は増加傾向にあり、12年度には輸送人キロが増加に転じたが、これは高速バス輸送が好調で輸送量を伸ばしているためであると考えられる。

図表II-9-7 乗合バスの輸送量の推移
図表II-9-7 乗合バスの輸送量の推移



(ウ)タクシー事業
 タクシー事業についても14年2月から需給調整を廃止した改正法が施行されたが、これに先立って競争の激化を見据えた事業者の経営努力が行われている。
 タクシーの輸送量も長期的に低落傾向にあったが、近年では若干の改善を示す方向での動きもみられる。

図表II-9-8 ハイヤー・タクシーの輸送量推移
図表II-9-8 ハイヤー・タクシーの輸送量推移



 なお、貸切バス事業、乗合バス事業、ハイヤー・タクシー事業のいずれも営業収益経常利益率が赤字基調から脱却できない等経営は引き続き厳しい状況にある。

2)自動車運転代行業の適正化
 自動車運転代行業は、夜間の公共交通機関が発達しておらず、自家用自動車が移動手段として不可欠である地方都市を中心に昭和50年頃から発達してきた産業である。これまで特段の法的規制はなされていないが、交通事故の割合が高い、暴力団関係者が関与しやすい、違法なタクシー類似行為が行われやすい、不明瞭な料金や保険契約の未加入等利用者保護に欠けるという問題が指摘されていた。
 また、12年の第147回国会における道路運送法及びタクシー業務適正化臨時措置法の一部を改正する法律案の審議の際、衆参両院において、「運転代行について、違法行為排除、業務の適正運営及び安全確保等に関し、必要な法規制を早急に検討すること」という旨の全会一致の附帯決議が行われた。
 自動車運転代行業に関するこれらの問題に対処するため、附帯決議を踏まえて検討を行い、第151回通常国会に警察庁と共同で「自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律」案を提出した。同法案は、13年6月に成立し、同月公布された。
 同法案においては、自動車運転代行業を営む者について必要な要件を認定する制度、自動車運転代行業者の遵守事項の規定等を主な内容としている。これにより、自動車運転代行業の業務の適正な運営を確保し、交通の安全及び利用者の保護が図られることが期待される。

 

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