1.国際的な連携・協調メカニズムの構築

(1)交通に関する大臣会合

 交通に起因する環境問題には海難事故による海洋汚染や自動車の排出ガスによる大気汚染等様々なものがあり、我が国をはじめ世界の国々は、これまでもそれぞれの事情に応じた対策を鋭意講じてきた。しかしながら、こうした交通に起因する環境問題を解決するためには、交通が国境を越えて行われる活動であることから、国際的な協調による取組みが必要であり、国際連携により人類共通の財産である大気環境や海洋環境を守り、引き継いでいく必要がある。
 このような問題意識に基づき、我が国はこれらの世界の主要国に呼びかけ、平成14年1月15日、16日に東京において「交通に関する大臣会合〜環境にやさしい交通の実現に向けて」を開催した。この会合においては、交通に起因する環境問題のうち、以下の3つのテーマに焦点を当てて議論を行い、共同声明が取りまとめられた。また、主要国の交通担当大臣が一堂に会する機会であったことから、交通とテロ対策についてもあわせて議論を行い共同声明が発出された。

1)海洋汚染の防止
 海洋汚染の問題は近年多様化しているが、中でも1997年の日本海でのナホトカ号事件や1999年のフランス沖でのエリカ号事件のような大規模なタンカー事故による油の流出が国際的な問題となり、2000年7月の九州・沖縄サミットでもIMOの取組みにG8が協力していくなどその対策の必要性が確認されている。とりわけ、国際的な安全・環境基準を満たさない「サブ・スタンダード船」による事故・汚染は深刻であり、本会合ではいかにしてサブ・スタンダード船を排除するかを中心的な議題とした。これを踏まえ、船舶の登録国である旗国政府による安全・環境基準履行の徹底や船舶の寄港国による取締りの強化等の総合的な取組みを推進していくための共同行動計画を策定し、国際的な協調を行っていく方針である。

 <ナホトカ号事件>
ナホトカ号事件

2)都市における交通と環境
 自動車交通の集中、交通渋滞の慢性化など都市における交通に起因する環境問題については、各国・各都市による事情の違いはあるものの、多かれ少なかれ各国が抱える共通課題になっている。本会合では、交通に起因する様々な都市環境問題の中から大気環境問題に焦点をあて、情報の共有、今後の基本政策のあるべき姿に関する議論を行い、国際共同プロジェクト等を通じた国際的な協調を行っていく。

3)環境にやさしい自動車の開発と普及
 第4章で述べたように、自動車からの排出ガスによる道路交通環境問題等を解決するためには環境にやさしい自動車の開発・普及を促進することが必要である。とりわけ大気汚染に大きく寄与している大型トラック等について次世代低公害車の開発を促進することが重要であるが、その市場は乗用車に比べて小さく、その開発の方向性及び排出ガス性能目標についてはいまだ見通しが立っていない。このような環境にやさしい自動車の効果的な早期の開発を促進するため、大臣会合のテーマとして取り上げることとした。さらにこれを踏まえて環境にやさしい自動車の開発・普及を促進していくため、国際的な会合を開催し、国際的な協調を行っていく方針である。

 

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