第I部 人口の減少、少子高齢化の進展など人口構造の変化に対応した国土交通行政の展開 

(都市空間の再編と有効活用)

 既に述べたように、都市への人口の集中と都市地域の拡大は沈静化の傾向にあるとともに、今後、都市地域全体として人口が減少していくことが予測される。このような状況は、既存の都市空間の再編を進めることにより、職住が近接し、高齢者を含めたすべての人にとって暮らしやすく、また環境への負荷の小さい都市構造をつくり上げる絶好のチャンスであるとも考えられる。
 平成12年(2000年)の経済協力開発機構(OECD)の「対日都市政策勧告」も、「人口減少予測を考慮すれば、都市の拡張は非効率的である。環境保全や高齢者の生活の質向上の両方の見地からも、都市成長のマネジメントにより、コンパクトで機能的なまちづくりを行うのが望ましい。」と述べている。
 このため、都心地域において、民間活力を活用しながら優良な都市開発を促進し、土地の合理的な利用によるゆとりある居住空間の実現を図る一方、土地利用転換の機会をとらえて、緑豊かな都市環境を創出し、防災性の向上を図るためのオープンスペースの確保に積極的に取り組んでいくことが求められる。
 一方、市街地の周辺部においては、公共事業による新規の都市開発を抑制する方針が既にとられているところであるが、コンパクトな都市構造を実現するとともに、貴重な緑地等の自然的環境や美しい景観を保全・創出するため、民間主体による開発の適切なコントロールも含めた新たな政策的対応を検討していくことが望まれる。
 また、高齢化による活力の低下などの問題を抱える大規模ニュータウン等については、児童・生徒の減少によって生じた廃校舎を福祉や文化関係の施設に転用するなどの取組みも始められているところである。居住者やNPOを含めた関係主体の連携により就業の場の確保等による地域社会の活性化や建替え・大規模修繕等による地域環境の再生を図っていくことが求められるとともに、開発が停滞しているような地域では未開発地の自然環境資源としての活用・保全を含めた計画の適切な見直しを図ることも課題である。

「緑の回廊構想」の推進
 既存緑地の保全と併せ、公園・河川・道路の事業を一体的に実施し、圏域における緑の骨格軸の形成、都市内の水と緑のネットワーク構築を図る「緑の回廊構想」を推進する。
 


 

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