第I部 人口の減少、少子高齢化の進展など人口構造の変化に対応した国土交通行政の展開 

3.地域や都市の生活を支える交通の確保

(地域の生活交通の確保)

 都市部から離れた地域における住民の足としては、自家用車による移動が一般的となっており、日常生活を支える道路の整備を進めている。
 一方、自家用車を利用できない高齢者や学童等については、日常生活に不可欠ないわゆる生活交通を確保する必要があるが、これらの地域では、過疎化の進展により公共交通機関の利用者は減少が続いており、民間企業が事業として公共交通を維持することは極めて難しい状況にある。
 このため、国土交通省では、地域の生活交通である地方バス路線、離島航路、離島航空路等に対し必要な支援や基盤の整備等を行うとともに、事業者の不採算路線からの退出が基本的に自由になったことを踏まえ、関係者が地域協議会等において路線の維持方策や廃止対策等について協議する仕組みを設けている。地方公共団体においては、自主運営バスの運行やバス運行の民間委託、福祉バスやスクールバスとの一体運行等により、生活交通の確保に努めているところである。また、地域の実情に応じた効率的な運行を目指してデマンド交通システム導入の動きが進んでいるほか、乗合タクシーの活用等も各地で行われている。
 今後の全国的な人口減少や高齢化の急速な進展の中で、過疎地域における輸送需要は一層減少し、市町村営バスの運行も難しい地域が増加することも予想されるが、このような地域においては、住民相互の協力やボランティアによる、より自家用輸送に近い輸送システムが必要になると考えられる。このため、地域で予め登録した住民ボランティアが、移動手段を持たない高齢者等の希望に応じ、輸送サービスを実施する「交通空白の過疎地における住民輸送の実証実験」を行うなど、過疎地域等の公共交通空白地域における新たな輸送形態を模索する取組みも進めている。
 地域の生活交通対策については、これらの実証実験の成果等も踏まえつつ、地方公共団体を含む幅広い関係者の連携による、地域をあげた取組みを支援していくことが必要である。

 
図表I-3-3-13 交通空白地における住民の足の確保のための実験

交通空白地における住民の足の確保のための実験は、例えば「明後日、病院の送り迎えをして欲しい」と希望するお年寄りや、「明後日、隣町の本屋まで行きたい」と希望するマイカーを持たない人が、それぞれ、予約センターに電話をすれば、予約センターで時間の調整などを行い、予め登録したボランティアの中から都合のいい人へ連絡し、当日、ボランティアがこれらの人をマイカーなどで送り迎えするという仕組みを実験するものである。

 

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