第I部 人口の減少、少子高齢化の進展など人口構造の変化に対応した国土交通行政の展開 

コラム・事例 アメリカにおける社会資本維持管理への取組み

 1980年代当初の米国では、1930年代のニューディール政策により大量に建設された社会資本の老朽化が進み、社会資本の荒廃がセンセ-ショナルに議論されました。
 当時の社会資本の状況を、例えば道路橋梁によりみてみると、機能的陳腐化・構造的欠陥のある橋梁の割合が全体で約45%を占めていました。悪路や欠陥橋梁の増加によって、経済的・社会的に大きな損失がもたらされ、特に橋梁では落橋等により人命が奪われることすらありました。このように米国で社会資本の荒廃が顕在化してきた理由は、1973年のオイルショック以降、緊縮財政やインフレにより社会資本整備の財源が不足し、維持管理・更新に対して十分な投資がされなかったためと考えられています。
 その後、米国連邦政府は悪化した財政収支の中、1982年に制定した陸上交通支援法で、1959年以降一定となっていたガソリン税率を23年ぶりに引き上げることにより財源を確保し道路投資を拡充しました。1991年に成立したISTEA(総合陸上輸送効率化法:1992〜1997年)では、橋梁の架け替え・修復に対する補助が大幅に増額されました。このISTEAと後継法のTEA-21(21世紀陸上交通最適化法:1998〜2003年)により、道路整備の財源が確保・強化され老朽化した道路施設の再生が進められており、欠陥橋梁数が減少しています。
 
欠陥橋比率(1983年)


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減少する欠陥橋梁


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 米国の議会予算局(CBO)によると連邦政府、州政府及び地方政府をあわせた公共投資総額は増加する傾向にありますが、その中でも非資本支出(Noncapital:維持管理投資)は資本支出(Capital:新設更新投資)以上に顕著な増加傾向を示しています。1976年までは資本支出の割合が非資本支出より高くなっていましたが、1977年に逆転し1994年には非資本支出割合は約56.7%となっています。
 
米国の公共投資の資本支出と非資本支出(連邦・州・地方政府計)


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