第II部 国土交通行政の動向 

(2)大都市圏の国際拠点空港機能の強化

1)新東京国際(成田)空港の整備
 新東京国際(成田)空港は、昭和53年の開港以来日本の表玄関として重要な役割を果たしてきたが、近年、滑走路1本の運用による処理能力の限界から発着回数が頭打ちとなっていた。このため、強い増便要請や新規乗り入れ要請に対応できない状況となり、平行滑走路を整備し空港容量を拡大することが国としての緊急の課題である。
 一方、当初計画の2,500m平行滑走路の整備にあたっては、一部の地権者の了解が得られていない状況であるため、暫定的措置として2,180mの平行滑走路を建設し、平成14年4月18日に供用を開始した。

 
図表II-5-3-1 成田空港の施設計画

本来の2500メートルの平行滑走路の早期完成を目指して、地権者との話し合いの努力を続けつつ、暫定的措置として2180メートルの滑走路整備を実施した。
 
<暫定平行滑走路>



 この結果、空港の処理能力が年間発着回数13.5万回から20万回へと大幅に拡充され、モンゴル、パプアニューギニア等諸外国からの新規乗り入れが実現するとともに、アジア方面を中心に成田からの国際的航空ネットワークが質・量ともに増強された。また、暫定平行滑走路の供用に伴い国内線が大幅に増便されたことにより、国際・国内線のスムーズな接続が実現され、成田空港の利便性が向上した。

 
図表II-5-3-2 新東京国際空港暫定滑走路整備の効果

暫定滑走路の整備により、年間発着可能回数は65000回の増加、国際線の乗り入れは1週間あたり864便の増加、国内線乗り入れは1週間あたり132便の増加があった。
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 しかしながら、成田空港における国際航空需要は今後とも引き続き増大が見込まれており、暫定平行滑走路のままでは、平成16年(2004年)頃には需給が逼迫する見込みであるため、引き続き本来の2,500mの平行滑走路の早期完成を目指して、全力で取り組んでゆく必要がある。さらに、平行滑走路の2,500m化が実現され、機材の大型化が可能となったとしても、現在地元と合意されている20万回の発着回数では平成20年(2008年)頃に処理能力の限界に達することが予測されるため、地元と協議しつつ発着回数の22万回への増加を図る必要がある。

 
図表II-5-3-3 成田空港における旅客数・発着回数予測

2002年の暫定平行滑走路の供用開始により、年間発着枠は13.5万回から20万回と、約1.5倍に増加し、年間発着回数は13.1万回から18.3万回と増加した。しかし、年間発着回数は2008年度頃には20万回、2010年度頃には22万回に達することが予想されており、空港容量の拡大に努めることが必要である。
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2)羽田空港の深夜早朝時間帯の国際チャーター便の拡充
 羽田空港の国際便については、「羽田空港は国内線の、成田空港は国際線のそれぞれ拠点空港である」ことを基本としつつ、深夜早朝時間帯での国際旅客チャーター便及び国際ビジネス機が運航されている。
 具体的には、平成13年2月16日より23時から6時までの時間帯において運航が開始された。運航開始時は、CIQの関係上最大週4便までとしていたが、14年4月以降、CIQ体制が整ったこと等から、最大週70便まで運航が可能となり、多様なチャーター便運航の可能性が広がった。このような国際チャーター便は14年4月から同年12月末までに570便運航されている。

3)首都圏における国際拠点空港機能のさらなる強化に向けて
 平行滑走路等の整備により成田空港の容量を拡大しても平成20年(2008年)頃、さらに、地元との協議により発着回数を22万回へ増加させても平成22年(2010年)頃には、増大する国際航空需要に対応できなくなることが考えられる。このような中、羽田空港再拡張事業により空港容量を大幅に増加させ、首都圏と全国各地を結ぶネットワークの拡充を図るとともに、再拡張後の余裕枠を活用して2000年代後半までに国際定期便の就航を図ることとしている。

4)関西国際空港2期事業の推進
 関西国際空港は、我が国初の24時間運用国際空港として平成6年9月に開港した。現在、国内・国際線が多数乗り入れ(世界30ヶ国・67都市、国内23都市)、我が国の国際拠点空港として重要な役割を担っており、今後の我が国の国際航空需要に適切に対応するため2期事業として平行滑走路と関連施設の整備を推進している。
 また、14年12月に行われた財務・国土交通大臣間の事前折衝において、関西国際空港株式会社の安定的な経営基盤を確立するため、経営改善を進め、有利子債務の確実な償還を期すとともに、当面の資金調達の円滑化を図ることとするため、関西国際空港株式会社の経営改善努力、地元自治体・民間と一体となった利用促進、2期事業の取扱い及び新たな補給金制度の創設と政府保証の拡充を内容とする合意がなされた。
 
<関西国際空港図>



5)中部国際空港の整備
現名古屋空港は、
(ア)離着陸回数が処理能力の限界に達しつつあること、
(イ)夜間に航空機が二重駐機するなど、施設の狭隘化が進んでいるが、空港拡張の余地がないこと、
(ウ)周辺地域への騒音の影響から運航時間に制約があること、
から、航空需要の増大に対応できない状況である。したがって、24時間運用可能である新たな国際空港の緊急な整備が必要となっている。

 
図表II-5-3-4 名古屋空港の離着陸回数の推移

1985年度には約7万回であったのが、増加を続け、2001年度には約12万回となった。
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 このため、名古屋の南概ね35kmの常滑沖海上に、平成17年(2005年)3月の開港を目指して、長さ3、500mの滑走路を有する中部国際空港の整備を進めている。

 
図表II-5-3-5 空港周辺図と空港位置図

中部国際空港は名古屋の南約35キロメートルの常滑沖海上に位置し、名古屋都心から鉄道、道路により30分程度でアクセスすることができる。総事業費は7680億円、空港面積は約470ヘクタール、滑走路は3500メートルである。

 
図表II-5-3-6 中部国際空港の事業スキーム

事業主体である中部国際空港株式会社が、国・地方公共団体・民間から、総事業費の40%の出資又は無利子貸し付けを受け、残り60%は有利子資金により、事業を行う。

 空港の整備にあたっては、民間の資金や経営能力を活用し、効率的な空港の建設・運営を行うことを目指し、事業主体として、運輸大臣(当時)が商法上の株式会社である中部国際空港株式会社を申請に基づき指定するとともに、当該会社に対する民間の出資比率を50%とするなど、民間活力をとりいれている。
 建設工事は着実に進められており、平成13年3月に護岸が概成して、14年1月に旅客ターミナルビル等の工事に着手、14年度中には空港島ほぼ全体の埋立を完成させる計画である。15年度においては、旅客ターミナルビル、滑走路・誘導路等の基本施設、航空保安施設等の整備を前年度に引き続き実施し、平成17年(2005年)3月の開港を目指すこととしている。
 
<中部国際空港の現況>



 

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