第II部 国土交通行政の動向 

第6節 産業の再生・活性化

1.交通産業の動きとその活性化策

(1)鉄道事業の動向及びJRの完全民営化

1)鉄道事業の動向
 平成13年度の鉄道旅客輸送については、長引く景気の低迷による雇用調整や少子化による通勤・通学者の減少傾向がみられるものの、全体としては若干の改善傾向がみられ、6年ぶりに増加している。JRについては、12年10月からの「のぞみ」の増発等により新幹線の旅客輸送が引き続き増加傾向にあったものの、JR全体としては、ほぼ横ばいとなった。またJRを除く民鉄については、東京圏において12年10月に導入されたパスネット等により定期外旅客に改善傾向がみられ、民鉄全体としても増加に転じている。

 
図表II-5-6-1 鉄道旅客輸送の動向

JRの合計は、平成9年度以降平成12年度まで減少していたが、平成13年度には増加に転じている。民鉄の合計は、平成8年度以降減少傾向にあったが、平成13年度には増加に転じている。
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 鉄道貨物輸送については営業用トラック輸送の増加や景気の低迷により長期的低落傾向にある。平成13年度はコンテナ輸送の増により輸送トンキロは増加に転じたものの、輸送トン数は車扱輸送による石油・セメントの輸送形態の変更や国内需要の低迷などにより減少した。景気の低迷等を反映して14年に入っても減少傾向が続いている。

 
図表II-5-6-2 鉄道貨物輸送の動向

鉄道貨物輸送量はトンキロベース、トン数ベースともに平成3年度以降減少傾向にあり、トンキロベースでは平成3年約270億トンキロから平成13年約220億トンキロまで、トン数ベースで約8,500万トンから約5,800万トンまで減少している。
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 一方、交通運輸分野における規制緩和が進む中、各鉄道事業者によるサービス改善への取組みが行われている。
 旅客鉄道輸送については、ICカード乗車券の導入が本格化しており、関東圏では、JR東日本が13年11月より「Suica」を導入し、14年7月には東京急行電鉄世田谷線で定期券と利用日・時間帯に応じてポイントを付与する企画乗車券にICカードの導入が図られるなどした。一方、関西圏においては、民鉄等が参加するスルッとKANSAI協議会とJR西日本が、それぞれ15年度よりICカード乗車券を導入するのにあわせ、利便性向上を図る観点から、相互に利用可能なものとすること等の、検討が進められている。さらに、視覚障害者誘導システムの試行や女性専用車両の導入を拡大するなど、障害者や女性に配慮した取組みも行われている(注1)
 また、鉄道貨物輸送においても、荷主ニーズに対応するための情報システムの整備や、コンテナ列車の速達化を図るため、効率的にコンテナの積降ろしができる貨物駅の整備等の取組みが行われている。

2)JRの完全民営化に向けた取組み
 昭和62年4月1日の国鉄の分割・民営化により誕生したJR各社については、累次の閣議決定により「できる限り早期に純民間会社とする」ことが求められていた。このうちJR東日本、JR東海及びJR西日本のJR本州三社については、発足後の安定的な経営状況や上場後の堅調な株価の推移等から、純民間会社とするための条件が整ったと言える状況に至ったことから、JR会社法(注2)の一部改正により、平成13年12月、JR会社法の適用対象から除外された。なお、適用対象からの除外にあたっては、JR各社が一般の民営鉄道会社とは異なり国鉄改革の中で誕生したという経緯を踏まえ、新たに指針制度を設け、当分の間、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営を確保するための措置がとられている。
 また、日本鉄道建設公団が保有するJR本州三社の株式については、5年10月にJR東日本株式が、8年10月にJR西日本株式が、9年10月にはJR東海株式がそれぞれ上場され、14年6月には、JR東日本株式について売却が完了した。JR西日本株式及びJR東海株式の未売却分についても、株式市場の動向等を踏まえ、順次売却する予定である。
 JR北海道、JR四国、JR九州及びJR貨物については、経営基盤の確立等完全民営化のための諸条件の達成に向け、増収努力や経費節減等の取組みが行われているところである。



(注)1
ICカード乗車券に関する国土交通省の取組みについては、第II部第4章第4節1.(1)1)を参照
2
旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律

 

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