第II部 国土交通行政の動向 

(1)九州南西海域不審船事案

 平成13年12月22日、海上保安庁は防衛庁から九州南西海域における不審船情報を入手し、直ちに巡視船・航空機を急行させ同船を捕捉すべく追尾を開始したが、同船は停船命令を無視し、ジグザグ航行をするなどして逃走を続けたため、射撃警告の後、20ミリ機関砲による威嚇射撃を行った。しかし、同船は引き続き逃走し、追跡中の巡視船が自動小銃・ロケットランチャー等の武器による攻撃を受け、3名の海上保安官が負傷した。このため、同船に対し巡視船による正当防衛射撃を行い、その後同船は自爆によるものと思われる爆発を起こし沈没するに至った。
 海上保安庁では、事案発生以降、海上保安官に対する殺人未遂罪及び漁業法の立入検査忌避罪の容疑で捜査を進めているが、事案の全容解明のためには船内を詳細に調査することが必要であると判断し、14年9月11日に船体の引き揚げを行った。これまでに、引き揚げた船体のほか、武器類、小型舟艇、水中スクーター、ゴムボート、無線機類、携帯電話等、数多くの重要証拠物を回収しており、これを手がかりに、鋭意、全容解明に向けた捜査を進めている。なお、これまでの捜査の結果判明した事実から、現時点では、この工作船が覚せい剤等の薬物密輸や工作員の不法出入国といった犯罪の用に供されていた可能性も否定できないと考えている。
 政府は14年10月4日、それまでの捜査過程で判明した事実等から総合的に判断した結果、この船が北朝鮮の工作船であったと特定した。また、14年9月17日の日朝首脳会談においては、金正日(キム・ジョンイル)国防委員長が今回の事案について北朝鮮の特殊部隊の関与を認める発言をしており、政府としては、この問題を日朝国交正常化交渉第12回本会談の場でも取り上げており、今後とも、北朝鮮に対して事実関係の解明と再発防止を強く求めていくこととしている。

 

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