第II部 国土交通行政の動向 

2.災害に備えた体制の充実

(1)情報防災の推進

 自然災害に伴う人命等の被害をできるだけ軽減するため、ハードの施設整備に加え、関係機関が連携して防災情報を収集・活用し、的確な危機管理活動を可能とするとともに、国民が迅速な避難など適切な行動をとれるように情報をわかりやすく提供するなど、情報により災害に対する安全性を高める総合的なソフト施策として「情報防災」を推進する。
1)防災情報の集約
 防災関係機関をはじめ広く一般の国民が、分かり易い気象・災害情報を手軽に入手し、活用することができるように、平成15年度に「防災情報提供センター(仮称)」を設け、国土交通省における気象や災害などに関する情報(注)を、光ファイバーネットワーク等を活用して集約し、インターネットを通じてわかりやすい形で総合的に提供を行う。

 
図表II-6-2-9 防災情報の集約

現状では、必要なデータ毎にソフトを立ち上げて取得したり、複数のデータを同時に見ることができなかったり、必要なデータを得るには各々の部局にアクセスするという状況から、防災関係機関をはじめ広く一般の国民が、分かり易い気象・災害情報を手軽に入手し、活用することができるように、平成15年度に「防災情報提供センター(仮称)(運営主体は気象庁)」を設け、国土交通省の各部局、NHK等が持っている気象や災害などに関する情報を、光ファイバーネットワーク等を活用して集約し、インターネットを通じてわかりやすい形で総合的に提供を行う。これにより、ワンストップで欲しいデータを全て取得できたり、GIS等から欲しい情報を検索して入手できたり、複数のデータを同時に表示して比較検討ができるようになる。

2)ハザードマップ等の整備
 災害発生時には、周辺住民が適切な行動がとれるよう、安全な避難方法や避難経路などを住民の人たちにあらかじめ周知することが重要である。洪水、高潮・津波、土砂災害、火山活動などによる災害危険区域や避難情報等を盛り込んだ地図(ハザードマップ)について、国としても技術的マニュアル及び基礎情報の整備等の支援を行うことなどにより、作成・配布の促進に取り組んでいる。
 洪水ハザードマップについては、平成14年12月現在213市町村において公表している。
 高潮・津波ハザードマップについては、東南海地震等大規模地震防災対策の一つとして、内閣府、海岸省庁が連携し、14年度より学識経験者からなる研究会にて浸水予測図作成マニュアルの作成に取り組むなど積極的に推進していくこととしている。
 土砂災害に関する危険区域図については、14年度までに全国約1,200市町村において、約58,000箇所の土砂災害危険箇所について公表している。
 火山ハザードマップについては、14年度までに火山活動による社会的影響の大きい29火山のうち、26火山について公表しており、富士山については、13年度より内閣府、総務省、国土交通省、関係地方公共団体からなる協議会を設置し、マップの作成・活用方法等について検討を行い、14年度末を目途にハザードマップを作成することとしている。また、14年度より、時々刻々と変化する火山現象に応じて影響範囲等をGIS上でリアルタイムに予測する「リアルタイムハザードマップ」作成について16年度を目処に浅間山等において検討を進めている。

 
図表II-6-2-10 ハザードマップの効果例

避難指示後の避難のピークがハザードマップを見ていない人は、ハザードマップを見た人よりも、約1時間遅れるという研究報告がされている。

 
図表II-6-2-11 津波・高潮ハザードマップのイメージ

津波・高潮ハザードマップには、避難場所としての小学校、公民館、公園や事前に避難が必要な区域、事前に避難が望ましい区域、2階以上の丈夫な家屋内で待機が必要な区域、主な避難経路が示されている。

 
図表II-6-2-12 火山ハザードマップの事例

岩手山火山防災マップ。西側で水蒸気噴火、東側でマグマ噴火が起きた場合。予想される火口位置、噴石が飛んでくる危険性のある範囲、火山灰が降り積もる厚さなどが示されている。

3)洪水予報対象河川の拡大
 平成13年6月の水防法改正を受けて、都道府県知事が指定する初めての洪水予報河川として、14年5月に愛知県の新川、6月に岐阜県の長良川、宮川が指定された。台風第6号、第7号をはじめとする14年6月から10月における風水害に対して、県知事指定の2河川を含む全国の61河川で洪水予報が発表されている。
 また、浸水想定区域の指定・公表が14年11月現在、国土交通大臣により92水系154河川(洪水予報河川は109水系193河川)、県知事により上述の3水系3河川で行なわれるとともに、市町村による洪水ハザードマップの作成を推進するなど、円滑で迅速な避難を行うことができるよう、洪水に関する情報提供の充実を図っている。

【水防法改正のポイント】(平成13年6月改正)
○洪水予報河川の拡充
 ・国土交通大臣に加え、新たに都道府県知事が、洪水により相当な損害を生ずるおそれがある河川を洪水予報を行う河川に指定する。
 ・都道府県知事は、洪水のおそれがある場合は、気象庁長官と共同して、その状況を水位又は流量を示して予報及び警報を行い、関係各機関へ通知し、必要に応じて報道機関等の協力を求めて一般に周知させる。
○洪水予報河川について、国土交通大臣又は都道府県知事が浸水想定区域を指定・公表する。
○浸水想定区域における円滑かつ迅速な避難を確保するための措置を講ずる。  等

4)災害リスク情報の整備・提供
 災害に対するリスクがどの程度あるのか場所ごとに評価を行い、その結果をインターネット等を通じて誰でも使用できるようにする。例えば、洪水ハザードマップの情報提供や場所ごとのリスク情報を評価したシミュレーション実施などを行う。さらに、様々な災害リスク情報をインターネット等から参照できるシステムの開発に取り組んでいる。

5)IT、マスメディア等を活用したリアルタイム情報の提供
 (ア)インターネットや携帯電話を活用した防災情報の提供
 平成13年6月1日より、インターネットや携帯電話を活用し、リアルタイムのレーダ雨量、テレメータ水位・雨量、洪水予報、水防警報などの河川情報を提供している。これにより、防災上有用な情報をより早く入手でき、被害軽減のための迅速な行動が可能となる。14年6月の台風第6号接近時には、約100万アクセス画面数/日のアクセスがあるなど、ニーズの高いリアルタイムの河川情報の提供に役立っている。

 
図表II-6-2-13 インターネット「川の防災情報」アクセス状況

平成13年6月1日より、インターネットや携帯電話を活用し、リアルタイムのレーダ雨量、テレメータ水位・雨量、洪水予報、水防警報などの河川情報を提供している。平成13年9月台風第15号接近時には、70万アクセス画面数/日以上のアクセスがあり、平成14年6月の台風第6号接近時には、約100万アクセス画面数/日のアクセスがあった。
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 (イ)マスメディアと連携した防災情報の提供
 大雨等による河川の増水、洪水等の警戒情報は、これまで気象情報や洪水予警報といった情報文による広報・周知が一般的であったが、よりわかりやすい警戒情報の提供を行うため、河川の水位等のデータと併せて河川の状況などのライブ映像について、災害対策基本法上の指定公共機関である日本放送協会に提供を行い、災害時の情報がTV報道を通じて広く提供されるようにしている。

6)土砂災害に関する情報伝達の推進
 土砂災害による被害の軽減を図るため、地方自治体の防災活動や住民の警戒避難行動等を支援することを目的として、河川局砂防部と気象庁が連携して、土砂災害に関する情報伝達の推進に取り組んでいる。平成14年度は、鹿児島県等において土砂災害に関する情報伝達の試行を実施した。

 
図表II-6-2-14 土砂災害警戒情報の作成・伝達に向けて

河川局砂防部と気象庁が連携して、土砂災害防止法の警戒区域などの国土情報と精密な降雨予測などの気象情報をもとにした新たな土砂災害警戒情報(仮称)を提供するため、都道府県砂防部局と地方気象台で適切な情報提供のルールを作成し、市町村などを通じて地区住民に新たな情報を提供する。これにより、早期避難を実現し土砂災害による被害の軽減を図ることができる。

7)気象情報等の充実
 気象庁では、数値予報用スーパーコンピュータシステムを更新整備し、集中豪雨等に対する防災気象情報の作成にあたり重要となる局地予報のほか、週間天気予報、季節予報等の精度向上と情報の高度化を図っている。季節予報については、平成15年3月から3か月予報に力学的手法を導入する。
 また、気象研究所では、集中豪雨等を的確に予測するためのモデル開発や、大規模地震、火山噴火の予知技術を早期に確立するための研究を実施している。

 
図表II-6-2-15 気象情報の高度化

解析雨量の高解像度化や週間天気予報の高精度化などを行うことによって、わかりやすく、きめ細かい防災気象情報の提供や精度良く、使いやすい天気予報の発表を行う。

 さらに、静止気象衛星と、航空管制等の機能を有するMTSAT(Multi-functional Transport Satellite:運輸多目的衛星)を平成15年に打ち上げ、衛星からの気象観測の精度向上を図る。
 
<MTSAT>



 平成14年8月8日より気象庁ホームページを通じて気象警報・注意報、気象情報、津波予報、地震情報、火山情報を提供している。また、防災活動に資するための気象衛星画像、アメダス、レーダー等の各種データも提供している。14年10月の台風第21号接近時には、約180万アクセス画面数/日のアクセスがあるなど、非常に多くの利活用があった。



(注)過去の長期にわたる気象観測データ及び災害事例、土砂災害発生に関する情報、気象警報等の防災気象情報、水文水質データ、河川・ダム等のリアルタイム画像、浸水想定区域図、道路管理用雨量データ、潮汐・波浪データ、地殻活動の観測データ

 

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