第II部 国土交通行政の動向 

(2)地震・火山活動等の監視体制の充実

1)気象庁における取組み
(ア)地震・津波対策
 気象庁は、地震、津波による災害の防止・軽減を図るため、全国に地震計や震度計を整備して地震活動を24時間監視し、地震・津波に関する情報等を提供している。さらに最新のIT技術を活用した地震津波監視システムを導入し、より的確な地震活動の監視と地震情報、津波予報・警報を高度化するとともに、各関係機関とより一層の連携を図っている。
 また、地震発生時には、地震動による被害が発生する前に防災対策を実施できるよう、地震発生直後から大きな地震動が到達する前に揺れの大きさ等を予測して伝える「ナウキャスト地震情報(地震発生後の即時的情報)」の実用化に向け、調査・検討を行っている。
(イ)火山対策
 平成14年3月から運用を開始した全国4箇所の「火山監視・情報センター」では、火山活動が活発な20火山を常時監視するとともに、火山機動観測班がその他の火山についても調査観測を実施して、関係機関のデータを含めた各種観測データの集中的な監視結果に基づき、総合的な火山に関する情報を提供している。
 また同センターでは、火山活動に異常が見られた場合、火山機動観測班を緊急に派遣し監視体制の強化を図るほか、関係機関とのデータの共有化や航空機による上空からの火山活動状況を把握するなどにより情報の収集を進め、総合的な判断を行い、火山情報を迅速に発表し、火山災害の防止・軽減を図ることとしている。

2)海上保安庁における取組み
(ア)海底地殻変動等の監視
 海上保安庁では、巨大地震の震源となる可能性のある海底プレート境界付近の地殻変動観測を推進している。これまで、日本海溝及び相模トラフ周辺に海底基準局を設置し、プレート境界周辺の地殻の動きを観測しているが、今後は東南海・南海地震への対応として、南海トラフ周辺の地殻の動きについても観測を強化するべく、海底基準局をさらに増設していくこととしている。また、南関東の離島にGPS受信機を設置し、地震及び火山噴火の前兆現象として発生する地殻の動きについても併せて観測している。

(イ)海底火山噴火に係る観測等
 海底火山の噴火の前兆として周辺海域に変色水や音の発生が認められる。これらの現象を事前に把握し、海底火山噴火予知の基礎資料とするため、海域火山基礎情報の整備及び総合的な調査を行っている。

 
図表II-6-2-16 海域火山基礎情報調査概念図

マルチビーム音響測深機を備えた大型測量船「昭洋」や投下式自動水深水温装置を備えた特殊搭載艇「マンボウII」等で海域火山基礎情報調査を行っている。

3)国土地理院における取組み
(ア)地殻変動観測・監視体制の強化
 国土地理院では、全国に設置している電子基準点を1,200点に増強し、その情報把握のリアルタイム化を図るとともに、GPS連続観測・監視に努めた。
 平成13年春頃から東海地域西部において、これまでと傾向の異なる地殻変動を検出した。また、房総半島において、13年10月上旬頃から千葉県大原を中心とした地域が南東方向へ1cmから2cm程度変動する地殻変動を検出した。これらは、地震動を伴わないゆっくりとした滑りが地下で起きたものと考えられている。

 
図表II-6-2-17 GPS連続観測が捉えた日本列島の動き

新潟県大潟町の電子基準点を固定した、2001年4月から2002年4月までの1年間の地殻変動量です。ベクトルは各点の変動量と方向を表しています。日本列島は4つのプレート(北米プレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレート、太平洋プレート)がぶつかり合う場所にあるため、複雑な地殻変動が見られます。

(イ)地震、火山噴火等災害をもたらす現象に関する研究及び会議の運営
 GPS(注1)、SAR(注2)などによる観測成果から、地震の発生メカニズム及び火山噴火の発生メカニズムを明らかにするとともに、コンピュータでそれを再現し、地震や火山活動の予測を行う。さらに、GIS(注3)を活用し、地形と土砂災害等との関係を解析する。
 また、地震予知研究に役立てるため、関係行政機関及び大学等と連携し、総合的な検討を行う地震予知連絡会や、各省庁、公共機関等が設置している潮位観測施設の潮位記録から検出した地殻活動を公表する海岸昇降検知センターの運営を行っている。



(注)1
全地球測位システム。上空約2万kmを周回する24個のGPS衛星(6軌道面に4個ずつ配置)、GPS衛星の追跡と管制を行う管制局、測位を行うための利用者の受信機で構成されている。航空機・船舶等では、4個以上のGPS衛星からの距離を同時に知ることにより、自分の位置等を決定することができる。
2
合成開口レーダー。地表の画像を観測するためのリモートセンシングセンサーの1種で、航空機や人工衛星に搭載して用いられる。
3
地理的位置を手がかりに位置に関する情報をもったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む