第II部 国土交通行政の動向 

(2) 自動車安全対策

1)事業用自動車の安全対策
 事業用自動車の交通事故件数は、年間約6万7千件(平成13年)で、近年上昇傾向にあり、事業用自動車に係る交通事故防止は緊急の課題となっている。
 このため、貨物自動車運送事業輸送安全規則の改正(13年9月施行)及び旅客自動車運送事業運輸規則の改正(14年2月施行)を行った。これにより、
 (ア)旅客自動車運送事業に対する運行管理者試験の導入及び運行管理者配置基準の強化
 (イ)事故を惹起した運行管理者等に対する特別な研修の受講義務付け
 (ウ)事故を惹起した運転者等に対する特別な指導及び適性診断の受診の義務付け
 等を実施し、運行管理の充実、運転者に対する安全対策の強化等を図った。
 また、刑法の改正(13年12月施行)による危険運転致死傷罪の創設、道路交通法改正(14年6月施行)による酒気帯び運転に対する罰則の強化等を契機に酒気帯び運転等悪質・危険な運転行為による事故の防止について自動車運送事業者関係団体への指導の徹底を図ったほか、バスの運転者による酒気帯び運転が連続して発生したことを受け、(社)日本バス協会に対し、飲酒運転防止対策マニュアルを策定させ、周知徹底を図らせるとともに各事業者における対策の再点検を実施させた。
 さらに、貨物自動車運送事業については、15年4月の貨物自動車運送事業法の改正施行に伴う営業区域規制の廃止に対応し、運行管理体制の強化を図るため、貨物自動車運送事業輸送安全規則の改正を行い、運転者に対する点呼の強化、運行指示の徹底及び運行期間の制限等を実施した。

2)事業用自動車の事故調査体制の整備
 自動車運送事業者が重大な事故を引き起こした場合には、自動車事故報告規則に基づき事故の種類、原因等を届け出ることが義務付けられており、平成13年には約6万7千件の報告が行われた。この制度の活用による事故情報の収集に加え、事故の背景となった運行管理等に関する要因について全国の運輸支局を活用した事故情報の収集・分析を実施し、事故防止対策への反映を図っている。

3)不正改造車の排除
 不正改造車を撲滅するため、平成14年7月に道路運送車両法の一部を改正し、不正改造等の行為そのものを禁止する規定を新設するとともに、不正改造車の使用者に対し、必要な整備をした上で現車提示を義務付け、それに違反した場合には使用停止命令を発令する整備命令制度を強化した。現在、15年度からの施行に向けて具体的な取締り策等について検討を行っている。

4)車両安全基準の拡充・強化
 事故実態の分析をベースとした自動車安全対策のサイクル(「低減目標の設定」→「対策の実施」→「効果評価」)により、科学的に安全対策を推進することとし、産・学・官の多方面の専門家が参加する「安全基準検討会」・「事故分析部会」において事故分析を行い、その効果に基づいて車両の安全基準の強化等の安全対策を推進している。具体的には、現在、この検討会等の結果を受けて、歩行者の頭部の障害を防止するための基準、RV車等による死角事故を防止するための視界要件基準等について改正作業等を行っている。
 また、平成12年以降は、毎年、一般の方々を対象に「自動車安全シンポジウム」を開催し、国土交通省の進める車両安全対策の現状を紹介するとともに意見を聴取し、車両安全対策を検討する際の参考としている。

5)リコール制度
 近年、自動車製作者によるリコール業務の不正事案が相次いで発生したため、フリーダイヤルによる不具合情報受付窓口を設置する等欠陥車情報の収集・分析体制、メーカー等への指導監督等の充実強化を推進している。
 また、平成14年7月には道路運送車両法の一部を改正し、罰則の強化、リコール命令規定の導入を図るとともに、タイヤやチャイルドシートなどの後付装置に対するリコール制度を創設した。

6)自動車アセスメント
 自動車アセスメントとは、市販されている自動車等の安全性能について試験による評価を行い、公表するものである。衝突安全性能の総合評価を実施した車種は平成13年度までの2か年で47車種となり、国内新車販売台数の約7割をカバーしている。
 13年度からは、ユーザーからの要望を受け、チャイルドシートについても安全性能試験を行い、13年12月に評価結果を公表した。

 
図表II-6-3-2 自動車アセスメントによる効果

自動車アセスメントによる情報提供によって、エアバック、アンチロックブレーキシステムの装備率が上昇することで、自動車の衝突安全性能は確実に向上している。装備率は、例えば、運転席のエアバックについては平成7年には4割をきっていたのに対し、平成12年では9割を超えている。また、運転席及び助手席における、頭部傷害値の改善状況については、平成7年と12年を比較すると改善率は3割程度上昇し、胸部傷害値の改善状況については、改善値2割程度上昇している。
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