第II部 国土交通行政の動向 

1.豊かな河川環境の形成

(1)良好な河川環境の保全・形成

 河川整備にあたっては多自然型川づくりを基本としており、必要とされる治水上の安全性を確保しつつ、生物の良好な生息・生育環境をできるだけ改変しないようにし、改変せざるを得ない場合においても最低限の改変にとどめることとして、良好な河川環境の復元が可能となるように努めている。また、堰、床止、ダム等の河川横断施設については、魚道の設置や改善などにより魚介類の河川上下流の遡上・降下環境の改善を積極的に行っている
 
<多自然型川づくり(八東川、鳥取県八頭郡若桜町)>



 さらに、多様な自然環境を有する本来の川の姿を戻すために、平成14年度に創設した自然再生事業により河川の蛇行復元や河畔林の整備、乾燥化傾向にある湿地の冠水頻度を増加させる等の湿地、干潟の再生等を釧路川、荒川等全国23箇所において科学的知見に基づき推進している。
 
<干潟再生の例(荒川下流、東京都)>



 一方、生物多様性を保全する上で大きな脅威の一つとなっている外来種は魚類、植物をはじめとして全国の河川での生息域が拡大しており、各地で生態系への影響等が問題となっている。平成13年度に「河川における外来種対策に向けて(案)」を取りまとめたが、平成14年度はさらに各地の取組みや対策事例の情報を集約し、河川管理における適切な外来種対策に取り組んでいる。

 
図表II-7-4-1 外来種の生息域の拡大状況

外来種が確認された河川数とダム数について、平成2年から7年までの第1回調査と平成8年から12年までの第2回調査とを比較。例えば、ブルーギルが、河川数で48から66に増加、ダム数で19から25に増加。以下同様に、オオクチバスが67から81、27から33。ブタクサが97から101、23から39。ミシシッピアカミミガメが37から56、5から11。
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 以上の施策を進めるにあたっては、河川工学や水質のみならず、生物学や生態学など様々な分野の専門家と連携して、河川の物理的環境と生物の生息・生育環境との相互関係などの未解明の部分を明らかにしていくことが重要である。そのため、河川水辺の国勢調査、河川生態学術研究及び世界最大級(延長約800m)の実験水路3本をもつ自然共生センターでの取組み等、様々な調査・研究が行われている。

 

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