第I部 活き活きとした地域づくりと企業活動に向けた多彩な取組みと国土交通施策の展開 

(7)新たな賑わいの創出に取り組んでいる事例

北海道小樽市 〜自然と歴史を活かした観光振興〜

 小樽市は、昭和61年の小樽運河や散策路の整備を契機に、観光が基幹的産業となるまでの観光都市に成長した。しかし、日帰り観光が多く、観光客が一部の地域に集中するなどの課題や市民との交流が希薄であることから、小樽観光を市民自らが提案し参加できる組織体制を整備するとともに、冬季や夜間の観光客を増やすための市民中心の運営による新しいイベントの開催や、市民が発掘・提案した観光資源を利用した散策モデルコースづくりなど、住民・企業を巻き込んだ取組みが行われている。

 
<雪あかりの路>



北海道上川町 〜層雲峡花ものがたり〜

 上川町層雲峡地区市街地は、大雪山国立公園の玄関口、層雲峡温泉内にあるが、施設の老朽化や陳腐化が著しくなったため、再開発により統一した街並みの整備が行われた。また、ハード面の整備が先行したため、「花」を活用した地域の活性化を目指し、地区住民が中心となった実行委員会が設立され、ガーデニング手法による花のまちづくりへの取組みが行われている。これにより、地区全体として観光に対する意識の向上が図られるとともに、町内生産者からの花苗の供給による観光と農業の経済交流が実現している。

 
<層雲峡花ものがたり>



秋田県角館町 〜かくのだてフィルムコミッション〜

 角館町は、武家屋敷等の歴史的建造物が残る街並みや国の名勝に指定された桜並木の堤防などの観光資源があり、これまでに映画やテレビドラマ、旅番組の撮影にも使われてきた。映画やテレビを見て角館町を訪れる観光客も少なくないことから、町では、映画やテレビを通じた全国への発信による観光振興や撮影による経済活性化等を図るため、平成14年に「かくのだてフィルムコミッション」を設立し、映画やテレビの撮影の誘致活動を積極的に行っている。

 
<武家屋敷の街並み>



静岡県富士宮市 〜富士宮やきそばによる活性化〜

 富士宮市は、寂れつつあった中心市街地の活性化を図るために、公募した市民による研究集会(ワークショップ)での検討や市のホームページでの意見交換などを行ってきた。こうした中から、市民の中にまちづくりに積極的に関わっていこうという動きがおこり、「富士宮やきそば学会」や「富士宮ビオトープをつくろう会」など市民による様々な取組みが始まった。特に、富士宮やきそばは、他地域の麺料理との交流イベントなどを通じ、マスコミにも大きく取り上げられ、多大な経済効果をもたらすとともに、地域の自信につながった。

 
<富士宮やきそば>



奈良県明日香村 〜にぎわいの街活性化構想〜

 明日香村の岡、島庄、飛鳥地区は、落ち着いた趣を残す集落景観が残っており、様々な文化施設が設けられている。こうした景観を活かしつつ地区の活性化を図るために、地元住民主体で組織された「にぎわいの街まちづくり実行委員会」を中心として、集落景観と調和した「もてなし産業」の実現を検討している。また、新たな魅力を創出するため、明日香村の地域資源である万葉歌を書いた行燈を用いて地区を照らし出す「万葉のあかり」などにも取り組んでいる。

 
<万葉のあかり>



福岡県久留米市 〜久留米六角堂広場の整備〜

 久留米市は、火災により生じ、再開発事業計画も断念された中心市街地の空地を買収し、様々な市民の参画による検討を経て、憩いと交流の場「久留米六角堂広場」として整備した。広場の運営はまちづくり会社とNPOとの協働を基調に行われ、多くの市民団体等によるイベントが開催されているほか、NPOによる歩行弱者の来街支援(タウンモビリティ)や地域FMによる情報発信が行われるなど、新しい街の顔として親しまれ、周辺商店街の活性化にもつながっている。

 
<六角堂広場>



 

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