第I部 活き活きとした地域づくりと企業活動に向けた多彩な取組みと国土交通施策の展開 

(「参加と貢献」意識の共有とその広がり)

 地域づくりの事例においては、住民や企業、NPO等の幅広い参加が得られている。また、活き活きとした地域づくりに取り組んでいる市区町村に対して行ったアンケート調査結果においても、取組みに成果があったと評価する市区町村のうち75.2%が、「住民・企業の参加」を取組みを行うに当たって特に留意している事項として挙げており、最も多数の市区町村が留意している事項となっている(アンケート調査方法については、補注を参照)。

 
図表I-2-1-1 地域活性化の取組みを行うに当たって特に留意していること

活き活きとした地域づくりに取り組んでいる市区町村に対して行ったアンケート調査結果において、取組みに成果があったと評価する125市区町村のうち、75.2%が「住民・企業の参加」、71.2%が「地域固有の資源の活用」、29.6%が「独自性のある内容」などを、取組みを行うにあたって特に留意している事項として挙げている。
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 しかしながら、自然発生的に広範な参加が実現したわけではない。若手商店主有志が個々の商店主への働きかけを行っていく中で周囲の理解を得て協議会の発足に至った事例や、町主催の音楽祭が住民や町内外の民間団体が主導し、町も加わった実行委員会によって実施されるようになった事例に見られるように、初めは小さなグループによる活動であったが、それが継続されることによって次第に参加者が増加していったものや、取組みの当初は行政が中心となって行われていたが、次第に住民や企業など民間による取組みの比重が増していったものが多い。
 また、市が公募した住民による研究集会(ワークショップ)での検討等の中からやきそばによる活性化の取組み等が始まった事例など、住民が集まって地域の課題について考え、議論する場を行政が設定し、そこから地域づくりの取組みが生まれてくるという、行政が住民参加・住民中心の地域づくりの触媒としての役割を担っている場合もあった。
 このような意識の広がりにつながった原因は、その取組みが以下のような条件を満たしていたことにあると考えられる。

1)共感される目標と内容
 地域づくりへの参加は、参加者にとっては自らの職業とは別に行う社会参加活動である場合が多いことから、強い動機付けが必要となる。そのような動機は、地域を自ら良くしたい、また、そのために貢献したいとする参加者の強い意志や、地域づくりの取組みの内容が自己の欲求(ニーズ)と合致することによって高められる。多くの参加を得た地域づくりの取組みでは、その目標や内容が住民や企業等に広く共感を持たれるものであり、そのことによって住民や企業等の自発的な参加が促されている。
 具体的には、目指すべき目標と取組みの内容について、アンケート調査、度重なる話し合いや意見交換、他地域の取組みの学習などを実施することにより問題意識が共有され、共通の理解が得られている。

2)情報の共有
 住民や企業等の幅広い参加により進められた地域づくりの取組みでは、地域において情報の共有がなされている。情報は、地域づくりに現に参加している人だけでなく、地域全体に発信されることで、参加の広がりをもたらすこととなる。情報を共有化するための手段としては、地域の住民等に向けた情報紙の定期的な発行や行政の広報紙の活用、新聞やテレビ等への積極的な広報などがある。また、最近ではインターネットによる情報発信も、比較的少ない費用で多くの人に情報を発信する手段として活用されている。このほか、地域FMなど地域独自の媒体を活用している例もある。

 
<NPOの地域向け情報紙>


 
<地域FM>



3)自由な意見形成
 地域づくりの取組みの目標や内容が共感を持たれるものとなることや、情報が共有されるようになることの基礎には、行政対住民でも企業対住民でもなく、また、賛成と反対の双方の立場から自由に意見を交換することができる関係が必要である。
 協議会や研究会といった地域づくりを議論する機会を設けている事例は多いが、そうした機会についても、第三者的立場の専門家や実務経験者の出席、行政の陪席的立場での参加などの工夫がされている。地域の人々が気軽に参加しやすく、また、自由な意見交換を促すよう、誰を主催者とし、誰を進行役とするか、少人数の会合を重ねた上で全体会合とするか、議題をどのように設定するか、その地域の住民の生活を踏まえ出席しやすい時間に開催することや配席などについて配慮することも有効であると考えられる。

 
<研究集会(ワークショップ)>



 地域づくりにおいて女性や高齢者、子供の果たす役割について特に触れておきたい。現に地域で時間を過ごすことが多く、地域に密着した立場の女性や高齢者、また、将来の地域の担い手である子供の意見を反映させ、活躍してもらうことは地域づくりの成功への大きな要素の一つである。さらに、消費者の視点からの地域づくりや、地域の歴史・伝統を反映した地域づくりを進める観点からも、女性や高齢者、子供の参加は重要である。具体的には、地域の女性達の会が茶屋を開店し、地元の多彩な農産物を食材としてふるさとの味を提供している事例や、遊覧船を運航するに当たって、船頭として高齢者を採用し、地域色豊かな案内を行っている事例が見られる。

 
<遊覧船の船頭>



 企業においては、社会経済情勢の変化、環境問題、さらには顧客の欲求(ニーズ)の変化などを背景に、企業やその企業が属している産業への危機意識から生み出されるものが多い。また、その危機意識から創造的な変革意識へと進展することで新たな事業機会を生みだし、企業の改革・発展へとつながる。さらに、企業内部で共通の認識を持つことも重要な要素の一つである。

 

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