第I部 活き活きとした地域づくりと企業活動に向けた多彩な取組みと国土交通施策の展開 

第3章 国土交通施策の役割と今後の展開

 我が国においては、戦後の高度成長期以降、欧米諸国や国内の他地域への「追いつき」を目標に、相対的に負となる部分の底上げに努めてきた結果、経済・生活水準の向上が実現したものの、この間に形成され、定着してきた横並び志向等を通じて、それぞれの地域の個性が埋没してきたことは否めないところである。
 その一方では、近年、自主・自立の地域社会を目指した地方分権改革や国庫補助負担金・地方交付税・税源配分のあり方に係る「三位一体改革」が進められるとともに、市町村合併の動きが広まっている。
 企業においても、生活の基礎となる財やサービスが国民に広く普及するよう、大量生産した商品や大衆を対象としたサービスを提供してきた結果、多くの国民が物質的な豊かさを享受できることとなった。しかしながら、今日では、価値観が多様化し、画一的な商品やサービスでは消費者の精神的な満足を得られない状況となっており、消費者の要求(ニーズ)へのきめ細かな対応や新たな価値の創造など企業による一層の創意工夫が求められている。
 今後、我が国の地域・企業が活き活きとした地域と企業であるためには、それぞれの強み・弱みを踏まえつつ、発掘・選択した資源を活用して、自ら進むべき方向と目標像を設定し、その実現に向けて資源を集中するとともに、このような地域づくりと企業活動を支える国土交通施策を展開していく必要がある。
 前章までにおいて見た活き活きとした地域づくりの事例においては、行政と住民、企業、NPO等の民間がそれぞれの立場で行う様々な取組みが複合して行われており、取組みの背景や契機、状況や内容等に応じて、時には段階的に変化しながら、主体の組合せと役割分担が行われている。企業においても、地域づくりに比べるとより民間の主導性が強いものの、行政の施策に対応し、あるいは利用しながら取組みが行われている事例が見られる。
 国土交通行政においては、個別の取組みに応じて主体の最適な組合せと役割分担を追求しつつ、本白書第II部において報告しているような様々な施策を推進するとともに、地域・企業の自主的・主体的な取組みを前提に、それぞれの個性を尊重し、多様性を重視した施策を展開していく。このため、地域や住民、企業、NPO等と協働(パートナーシップ)関係を構築するとともに、創意工夫を活かす柔軟かつ総合的な推進手法を導入していくことが必要である。

 

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