第I部 活き活きとした地域づくりと企業活動に向けた多彩な取組みと国土交通施策の展開 

第1節 行政と民間の役割

1.役割分担の様々なあり様(よう)

(意識の醸成・取組みの契機づくり)

 地域づくりにおいては、より良い地域を目指す変革意識が醸成され、それが何らかの具体的な行動へとつながっていく出発点が必要である。紹介した地域づくりの一連の取組みの端緒を見ると、住民の有志のグループや商工団体など、地域づくりに関心の高い人々による自発的な意識の発生から始まっている事例や、地域の行政が主体となって地域づくりの取組みを始めた事例、また、行政の誘導により組織化された地域づくり協議会などにより取組みが始められた事例もある。
 民間の行動が端緒となった場合にも、地域の行政が、地域づくりの芽が育つよう、支援を行っている。特に、民間による取組みでは、苦労している点として、初期段階を中心として資金の獲得を挙げている地域もあり、小学校を中心とした地区単位の振興組織による取組みに対して市が交付金を交付するなど行政において資金援助の制度を設けている事例も見られる。また、地域の行政による景観に配慮した道路や河川などの整備と民間への助成の開始が住宅や店舗の修景への取組みを促すなど、地域の行政による方針・方向性や支援策の提示が取組みの呼び水となった事例や、高速道路、新幹線、空港といった高速交通網の整備がまちのあり方を見直すきっかけとなった事例もある。

 
<河川と街並みの一体的整備>



 一方、行政が主体となって取組みを始めた場合や地域づくりの気運を醸成し、誘導していく場合にも、民間を巻き込み、可能な限り民間による取組みの比重を増していくような努力がなされている。
 このように、地域づくりの取組みの端緒となるべき主体については、地域の状況や取組みの内容、活用する資源の種類などによって異なり、一概に言うことはできないが、端緒の主体の如何にかかわらず、民間と行政のいずれもが参加するに至るとともに、取組みの進展に応じて、次第に民間の活動の比重が増していくことが重要であると考えられる。
 なお、こうした民間、地域の行政による取組みの端緒については、水質浄化への総合的な取組みが川を活かした展開につながった事例など国による基本的な方針・方向性の提示や支援策の策定等が背景となった場合も見られる。また、地域づくりの具体的な内容を検討する段階では、他の地域から始まっていた菜の花を活用して循環型社会を目指す取組みを支援しつつ進めている事例にも見られるように、他地域の取組みを参考として、自らの地域の特性を活かした内容を考案していくこともある。

 企業においても、経済的規制の改革や、環境の重視など行政による施策や規制、調達に関する方針・方向性の提示に対応することが契機となって、新技術や新商品の開発が行われている事例が見られる。今後はさらに環境制約が厳しくなることや、少子・高齢社会が到来することから、これらに対応するための行政による施策が講じられていくこととなる。これらの施策について、企業においては制約ではなく事業機会ととらえ、新たな市場の開拓を進めていくことが重要である。また、行政が企業間の連携や産学の連携を推進する際に必要な情報の提供や、連携の橋渡しに取り組んでいる場合もある。

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む