第I部 活き活きとした地域づくりと企業活動に向けた多彩な取組みと国土交通施策の展開 

2.基本的な役割分担の考え方

(行政と民間)

 企業活動においてはもとより、地域づくりにおいても、最終的には民間の主体的な取組みを実現していくことが、成功への重要な要素となる。
 このため、地域づくりにおいては、その過程全般にわたり、住民、企業、NPO等が主体的に参加するとともに、自らの住宅や商店等ハード面での協働や地域活動、事業活動等のソフト事業に積極的な取組みを展開していくことが必要である。特に、地域を事業活動の場とする企業は、地域の経済と雇用を担い、また、資金や人材など地域づくりに貢献する潜在的な能力を有するとともに、地域づくりが成果を上げることによって自らの事業環境が向上する結果を得ることができる。このため、企業においても、地域の重要な主体として、地域づくりに参加し、取組みを実施していくことが期待される。行政においては、民間による取組みが行われるような環境を整備し、契機づくりを行うとともに、そのような取組みが効果を上げていくことができるよう、民間による取組みと協働し、あるいは支援していくことが求められる。なお、行政の役割とされた取組みを行っていく場合であっても、その実施に当たっては、可能な限り民間の資金や能力を活用する必要がある。

 また、企業活動においては、利用者の潜在的需要(ニーズ)を積極的に発掘し、当該潜在的需要にきめ細かく対応してその事業を拡大することや、新たな市場を開拓し、利用者に新たな価値を創造することが期待されている。特に後者の活動は、将来的に大きな市場となる場合もあることから、積極的な取組みが期待される。行政においては、企業と消費者の情報格差(ギャップ)の解消や規制緩和・参入条件の明確化などにより民間が活動しやすい市場環境を整備し、その機能が最大限発揮されるよう努めるとともに、市場では供給されない社会資本やサービスの提供、安全、環境、利便性などに関する基本的ルールの設定と監査等を行う必要がある。さらには、先導的な技術開発やリサイクルなど今後必要な分野における市場形成の支援に取り組む必要がある。あわせて、地域や企業が国際的な取組みを行う場合に、必要な支援を国が中心となって進めていく必要がある。
 さらに、近年、NPO等が建物の改装からまちづくりまで幅広く住民の相談に応じたり、まちづくりの中間支援組織として行政と住民の橋渡し役を担ったり、また、行政が設置したイベント広場の運営や歩行弱者の来街支援に関わるなど、行政と民間の中間領域が拡大しつつあり、その一層の充実を図ることが重要であり、NPO等には行政と民間の媒介としての役割が期待される。

 
図表I-3-1-1 NPO法人数の推移

NPO法人数は、平成12年には3,156であったが、年々増加し、平成15年には14,657となっている。また、このうち、まちづくりの推進を図る活動を行うものも、平成12年には1,027であったが、平成15年には5,742に増加している。

 また、活き活きとした地域づくりと企業活動に向けた取組みが促進されるためには、横並び志向から脱却し、自らが主体的、積極的に参加する気風の醸成や、いわゆるマルチハビテーション(複数地域居住)など国民が自らの住所のみならず、いくつかの地域に生活領域を築きやすい社会の形成なども有効であり、こうした社会の形成に向けた環境整備に、行政と民間が一体となって取り組んでいく必要がある。


 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む