(3)公共事業コスト構造改革の推進
公共工事のコスト縮減については、平成9年度から政府全体で取り組み、12年度からは、直接的な工事コストの低減だけでなく、ライフサイクルコスト(生涯費用)の低減、社会的コストの低減などの観点も加えて、総合的なコスト縮減に取り組んでいる。
これらの取組みの結果、国土交通省、関係公団等の平成14年度の工事コストの縮減率は、8年度と比較して、13.6%となっており、卸売物価、労務費等の下落を考慮すると21.3%となっている。
さらに、国土交通省においては、厳しい財政事情の下で必要な社会資本整備を着実に進めるとともに、これまでのコスト縮減施策の定着や一層のコスト縮減を推進するため、平成15年3月に「国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム」を策定し、15年度からは、これまでの取組みを継続実施することに加え、1)事業のスピードアップ、2)計画・設計から管理までの各段階における最適化、3)調達の最適化を見直しの要点として、コストの観点から公共事業の全ての過程を見直す「公共事業コスト構造改革」に取り組んでいる。
公共事業コスト構造改革の取組みを適切に評価するため、従来からの工事コストの縮減に加え、1)規格の見直しによる工事コストの縮減、2)事業のスピードアップによる事業便益の早期発現、3)将来の維持管理費の縮減をも評価する「総合コスト縮減率」を設定し、平成15年度から5年間で、14年度と比較して、15%の総合コスト縮減率を達成することを目標としている。
平成15年9月には、公共工事コスト縮減対策関係省庁連絡会議において、政府における「公共事業コスト構造改革プログラム」が策定され、引き続き、政府一丸となって、公共事業コスト構造改革の推進に取り組むこととしている。
1)事業のスピードアップ
合意形成・協議・手続の改善、事業の重点化・集中化、用地・補償の円滑化等を図ることにより、事業のスピードアップを推進する。
特に時間管理概念を導入し、道路や港湾の整備に当たって供用目標を公表した上で事業を実施するとともに、新たに河川事業等において改修効果が際だって高い重点区間について、概ね10年間で完了させるプロジェクト等に重点的に投資することとしている。
また、用地取得の円滑化のため、地籍調査の促進、土地収用手続の積極的活用、生活再建対策の推進等を図る。
2)計画・設計から管理までの各段階における最適化
基準類の性能規定化や地域の実情にあった規格(ローカルルール)の設定の促進等の計画・設計の見直し、新技術の活用、管理の効率化等を図ることにより、工事コストと将来の維持管理コストの低減を推進する。
平成15年度には、直轄事業の予備設計から施工段階までの全ての設計の点検を行う「設計の総点検」等を実施している。
3)調達の最適化
入札・契約の見直し、積算の見直し等を図ることにより、調達の最適化を推進する。
歩掛を用いない「ユニットプライス型積算方式」への積算体系の転換・導入を検討するほか、国庫債務負担行為の活用、発注者責任の明確化(品質確保責任等)、民間の技術力を結集する調達方式の推進、電子調達の推進等に取り組む。
図表II-1-2-3 公共事業コスト構造改革のイメージ