第II部 国土交通行政の動向 

2.不審船・工作船事案・テロ事案対処のための海上保安体制の強化

 平成13年12月の九州南西海域における工作船事件の発生により、我が国周辺海域に武器を有する工作船が徘徊していることが明らかとなり、我が国の安全を脅かす不審船・工作船の存在が、国民に大きな不安を与えている。
 不審船・工作船は、我が国領域内における重大凶悪な犯罪に関与している疑いがあり、その目的や活動内容を明らかにするためには、確実に不審船を停船させて立入検査を実施し、犯罪がある場合の犯人逮捕等適切な犯罪捜査を行う必要がある。このため、不審船・工作船への対応は、関係省庁と連携しつつ、警察機関である海上保安庁が第一に対処することとなっている。
 海上保安庁では、これまでの不審船・工作船事案を踏まえ、海上保安官の安全を確保しつつ、より一層的確な不審船対策がとれるよう、法的枠組みの強化として、平成13年11月に、立入検査を目的として不審船を停船させるために行う射撃について、人に危害を与えたとしても違法性が阻却されるよう海上保安庁法の改正を行うとともに、装備面の取組みとして、巡視船艇の防弾化や、より遠距離から確実に不審船に対応できる武器の整備、荒天下でも迅速に展開できる高速大型巡視船の整備等の充実強化を図っている。また、運用面についても、防衛庁との間で共同対処マニュアルを作成し、早い段階からの情報共有や、自衛隊との間で不審船対処に係る共同訓練を実施している。
 海上におけるテロの未然防止措置として、臨海部の米軍施設、原子力発電所、石油備蓄基地、LNG・LPG基地等の重要施設に対する巡視船艇・航空機による警備を強化している。また、特に原子力発電所においては、警察と現場において毎日情報交換を行うとともに事案発生時に的確に対応できるよう合同訓練を実施している。あわせて海賊対策のため東南アジア周辺海域に派遣している巡視船による、テロにも備えたしょう戒を実施し、我が国関係船舶の安全確保を図っている。
 さらに、海事・漁業関係者等からの密航等海上犯罪に係る情報収集強化、警察・入管等関係機関と連携した立入検査の徹底を行うとともに、生物剤・化学剤テロ対策等強化のため、テロ対処部隊の体制強化を図っている。また、不審物・不審者発見のための船舶・港湾施設における巡回、不審物発見に係る旅客への協力要請放送、旅客船乗船者の出入りチェック、緊急情報伝達体制の確保等の海事関係者による自主警備策を点検・強化している。

 

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