第II部 国土交通行政の動向 

第2節 広域的な交通ネットワークの構築

1.幹線道路の整備

(1)幹線道路をめぐる現状

 幹線道路の整備は、昭和29年に策定された「第1次道路整備五箇年計画」以来、現在に至るまで着実に進められてきた。これにより、例えば、高速道路の整備の結果、輸送時間が大幅に短縮されることによる新たな産地の誕生や、重厚長大型から加工組立型への産業構造の変化に対応して、必要な材料の調達、製品の輸送が容易な高速道路のインターチェンジ周辺に多くの工場が立地するなど、地域の経済活性化に大きく寄与している。また、幹線道路ネットワークの整備により、地方部での広域的な医療サービスの享受が可能になったり、宅配便の一日配達圏が拡大するなど、国民生活の質の向上にも大きく貢献してきた。

 
図表II-6-2-1 新規工場立地のインターチェンジからの距離別件数(平成14年)

平成14年における新規工場立地のインターチェンジからの距離別の件数は、インターチェンジから10km以内が73.0%、10kmから20km以内が13.2%、20kmから30km以内が3.9%、30kmから50km以内が5.3km、50km以上が4.6%という内訳になっている。
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 また、高規格幹線道路・地域高規格道路をはじめとする幹線道路ネットワークについては、南北に細長く、山脈や海峡により地域間の交流が阻害されている我が国の国土を有効に利用するための有効な社会資本である。しかし、例えば、日本と同程度の面積を有するドイツと比較すると、人口50万人以上の都市間の平均距離では、我が国はドイツの約2倍となっているにもかかわらず、高規格幹線道路の供用延長については、ドイツの11,515kmに対し、我が国は8,344kmと約3分の2にとどまっている。中国と比較すると、中国では、我が国より26年遅れの1988年に初めて高速道路が開通したにもかかわらず、既に25,130kmが開通しており、実に我が国の9倍のペースで整備が進められている。また、大都市の環状道路整備の遅れについては、第3章でみたとおりである。このように、我が国の幹線道路の整備水準は、欧米諸国の水準と比較しても遅れている状況であり、引き続き我が国の国土を効率的かつ有効に利用するための高規格幹線道路等の着実な整備が必要である。
 なお、公共事業改革の流れの中で、今後の着実な整備のあり方に関して整備効果と必要性、整備手法等について検討を進めており、特に高速自動車国道については、学識経験者からなる「道路事業評価手法検討委員会」の検討結果を踏まえ、厳格な事業評価を実施したところである。この評価結果を踏まえて、「有料道路方式」と「直轄方式」の二本立てにより、真に必要な道路の着実な整備を進めていく。

 
図表II-6-2-2 高速道路を利用して都市の食卓に安価で新鮮な食材を提供

中国横断自動車道の広島浜田線・岡山米子線が全線開通したことにより、山陰地方から大都市圏へのアクセス性が向上した。これにより、山陰地方から東京都中央卸売市場に出荷されるアジの取扱量が平成2年から12年で1.5倍に増加し、また、アジの価格についても大量かつ安定供給が可能になったことから2割程度安くなるなど、東京のアジ消費の増加に大きな影響を及ぼした。

 
図表II-6-2-3 日本とドイツの高速道路の整備状況に関する比較

日本の人口、面積、GDPはそれぞれ1億2,693万人、37万7,873km2、500兆円なのに対し、ドイツの人口、面積、GDPは、それぞれ8,244万人、35万6,970 km2、258兆円となっている。しかし、日本の高規格幹線道路網とドイツの連邦高速道路網を比較すると、日本の高規格幹線道路網の供用延長は2002年度末で8,344kmであるのに対し、ドイツの連邦高速道路網の供用延長は、1999年末で11,515kmとなっている。人口60万人以上の都市の、平均都市間移動距離は、日本は491kmであるのに対し、ドイツは261kmとなっている。

 
図表II-6-2-4 高速道路整備水準の国際比較

高規格幹線道路の整備延長は、1982年時点で、アメリカ80,000km、ドイツ7,919km、フランス5,700km、日本3,232km、中国0kmであったが、直近のデータでは、アメリカが1999年時点で89,232km、ドイツが1999年時点で11,515km、フランスが2000年時点で11,500km、日本が2002年度末時点で7,197km、中国が2002年時点で25,130kmとなっており、中国が急速な伸びを示している。
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